藤井聡太三冠が気づきづらい攻めを決めて3連勝 第34期竜王戦第3局|将棋情報局

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藤井聡太三冠が気づきづらい攻めを決めて3連勝 第34期竜王戦第3局

藤井三冠は史上最年少四冠に王手を掛けた

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豊島将之竜王に藤井聡太三冠が挑戦する将棋界最高峰のタイトル戦、第34期竜王戦(主催:読売新聞社)七番勝負第3局が10月30、31日に福島県いわき市の「雨情の宿 新つた」で行われました。結果は93手で藤井三冠が勝利、七番勝負のスコアを3連勝としてタイトル奪取に王手をかけました。



ともに居飛車党の両対局者。今期の竜王戦では第1局、第2局で相掛かりが続きましたが、本局は角換わりとなりました。豊島―藤井戦で角換わりが指されたのは8月9日に指された叡王戦第3局以来です。それ以降は6局連続で相掛かりが続いていました。ただ、それ以前の角換わりも両者の対戦では7月13、14日の王位戦第2局から叡王戦第3局まで5局連続で続いているので、両者の中で波長があるのかもしれません。なお6月29、30日に行われた王位戦第1局から数えると、本局で両者の対戦は13局目となりますが、この間の対局は全てタイトル戦です。同一の連続カードが全てタイトル戦だったのは、羽生善治九段と佐藤康光九段が19局連続(05年6月11日の第76期棋聖戦第1局~06年1月26、27日の第55期王将戦第3局)でタイトル戦を指した例があります。

さて本局の角換わりは相早繰り銀となりました。先手の藤井三冠が午前中の早い段階で動き、対して豊島竜王も△8六歩として反撃を見せます。この局面でプロ公式戦における前例は1局しかなくなっています。その実戦例が本局の立会人を務めた屋敷伸之九段の実戦例でした。本譜はこの直後に前例から完全に離れますが、時間の使い方からしても両者の研究範囲と見るべきでしょう。

初めて藤井三冠が1時間を超える長考をしたのは、1日目の昼食休憩直前に指された▲6八玉という一着。直前に右辺からかけられた圧力を避けつつ、居玉を解消する一着です。対して豊島竜王も1時間41分の長考。さらに藤井三冠はその次の一手に1時間45分と両者ともに長考の応酬です。戦型は異なりますが、両者が激突した王位戦第5局でも1日目の午前中はハイペースで飛ばし、午後になると共に長考を繰り返していました。

1日目が終わり封じ手となりますが、この局面を将棋連盟モバイル中継で使用されているAIは両者の期待勝率を50%対50%と示します。豊島竜王が64分の考慮で封じた△3三金という着手をAIも本線に挙げていました。対する▲3五飛という手がトリッキー。封じ手は3四の飛車に働きかけた手なので、飛車を逃げるのは当然なのですが、3六の歩を手順に払う▲3六飛をつい指したくなります。これには△2七角と打たれると先手が厳しくなるので、▲3五飛がまさるというのはわかるのですが、実際に指されるまでは気づきにくい順と言えます。このような柔軟な発想が藤井三冠の持ち味と言えるでしょう。

2日目の午前中も五分五分のまま進んでいきます。ですが局面は緊迫感を増していき、どこかでほころびが生じると一気に潰れかねない、両者にとって精神的負担がかかる時間帯とも言えます。

あるいはそのほころびが生じたのが昼食休憩再開後の局面だったのかもしれません。豊島竜王は△3七歩成と攻め合いに出る順を選びましたが、代えて△3四金と先手の歩を払う順が有力だったようです。直後の▲3一銀~▲2二角が厳しい攻めでした。持ち駒の角と銀を投資して、飛車の成り込みを狙う順ですが、これが意外と受けにくい。豊島竜王はこの局面について「本譜じゃダメだと思っていましたが、ほかの手でも苦しそうだったので。▲2二角と打たれて厳しかったですね」と振り返っています。

ただAIの勝率はこの時点でも五分五分で、次の△2四桂に辛い点をつけます。この手は▲2三飛成という成り込みを防ぐものですが、先手には▲8五飛という転回があり、次に8筋から飛車を成り込む順が受かりません。実戦も▲8一飛成が実現して、後手玉を左右挟撃する形になった藤井三冠が勝勢となりました。AIは△2四桂に代えて△8八歩という順を示します。対して▲同金と取るのは先手玉の左辺が壁になるのが大きく、状況が全く異なってきます。△8八歩には▲2三飛成△3四飛▲1一角成△3一飛が一例で、難解なようです。

以下は後手も先手陣に竜を作り、最後の攻め合いに出ますが、お互いの玉の危険度を計る見切りに関しては藤井三冠が最も得意とする分野。一手違いとは言えきっちりと自らの勝ちを見切って、豊島竜王を投了に追い込みました。

本局の勝利で藤井三冠は竜王奪取及び、四冠獲得にあと一勝と迫りました。次戦の第4局は11月12・13日に山口県宇部市の「ANAクラウンプラザホテル宇部」で行われますが、仮に藤井三冠が勝利して四冠を達成すると19歳3ヵ月での四冠達成となり、羽生善治九段が1993年に22歳9ヵ月で達成した年少記録を大幅に更新します。そして両者は11月5日の王将リーグでも対局します。藤井三冠が一気に頂点へ駆けあがるか、豊島竜王が土俵際からの大反撃を見せるか、目が離せません。


一気の3連勝で竜王奪取まであと1勝とした藤井三冠(提供:日本将棋連盟)

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