藤井聡太三冠が角換わりの新構想を披露! 大熱戦の末、郷田真隆九段を破り6勝1敗に 第80期順位戦B級1組|将棋情報局

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藤井聡太三冠が角換わりの新構想を披露! 大熱戦の末、郷田真隆九段を破り6勝1敗に 第80期順位戦B級1組

相手の盤上の角に対する的確な対応が光った一局

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第80期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社、毎日新聞社)の7回戦、▲郷田真隆九段(4位、3勝3敗)-△藤井聡太三冠(11位、5勝1敗)戦が10月19日に東京・将棋会館で行われました。結果は106手で藤井三冠が勝利。6勝目を挙げ、また一歩A級昇級に前進です。


第80期順位戦B級1組リーグ表

角換わり相腰掛け銀の将棋となった本局は、定跡型ということもあり、前例が複数ある進行に。その中には藤井三冠自身の将棋もありました。

40手目、藤井三冠は△6五桂と跳ねて仕掛けていきます。過去に経験していた同一局面2局では、いずれも△4一飛を選択していた藤井三冠。ここで手を変えたのは、やってみたい進行があったからと局後に明かしました。

△6五桂自体はプロの公式戦で何局か指されている進行です。郷田九段はその前例を踏襲し、後手が飛車先の歩を切ってきたタイミングで▲9七角と端角を打って反撃に出ます。

少し進んで先手が▲8二歩と打ち、後手の8一飛の縦の利きを止めた局面。ここでは△7一飛が前例でしたが、藤井三冠は△4一飛とかわしました。これが新手です。

△4一飛は、将来△4五歩から反撃する順を見せた手。さらに4筋を争点にすれば、相手の盤上の角が働かないというのも見逃せないメリットです。

「△4一飛車と回って、どこかで△4五歩を含みにというのはやってみたい指し方ではあったんですけど、こちらの玉も薄いですし、攻めも手厚くはないので、常にギリギリなのかなと思っていました」と藤井三冠は語りました。

一方の郷田九段は、「(序盤から中盤は)ちょっとよく分からなくて。もちろん前例があるのは知っていたんですけど、自分ではこんなもんかなと思って指していたんですけれど、△4一飛から△6四歩と辛抱された後の指し方がよく分からなかったですね。本譜も自然な流れかなと思っていたんですけれども、△4五歩と突く形が想像以上に厳しかったですね。ただちょっとどういう対応をすればよかったかはすぐには分からないんで、準備段階でもうちょっと考えておかなければいけなかったかもしれません」とコメント。

続けて、「歩得を生かせるような(ゆったりとした)展開になるかどうかというところですけど、△4五歩から来る手がやっぱり、かなりの手だったんで。夕食休憩の時には自信がなかったんで、その手前をどうすればよかったのかなぁという感じはしました」と郷田九段は語りました。

郷田九段が自信がなかったという夕食休憩の局面は、先手が▲2四歩と突き捨てたところでした。この歩を△2四同歩と取るか、それとも△2四同銀と取るか。「どちらで取っても玉が薄くなってしまうので、どういう対応がいいか分からなかったです」と言う藤井三冠は、95分の長考で銀で取ることを選択。郷田九段は桂を打ってから、継ぎ歩攻めで藤井玉の上部に攻めの拠点を作りました。

歩をたくさん入手した藤井三冠は、△6七歩と王手で打って反撃を開始します。さらに銀取りに桂を打ち、郷田九段が受けに回った後の86手目。次の手が本局の決め手と言ってもいい一着でした。

それが相手の角の利きを止める△7五歩。直接相手玉に迫っていくのではなく、相手の角に狙いを付けるのが落ち着いた好手でした。

この△7五歩に対し、郷田九段は31分考えて▲8一歩成とと金を作ります。この手は次に▲9一とで香を入手する狙い。忙しい終盤において2手かけて駒を取りに行くのは通常あり得ない手順ですが、なんとこの場面でのAIが示す最善手でした。

この▲8一歩成~▲9一とという手順は郷田九段の実力を示すもの。またそれと同時に、この手順が先手の最速と見抜き、それなら△7五歩と打って角を取りに行く手が間に合うと判断した藤井三冠の読みも超一流であることを表しました。

その後郷田九段は手にした香を王手で打ち込み、桂を入手して飛車取りに▲3七桂と打ちました。次に▲4五桂で飛車を取れれば一気に混戦ですが、藤井三冠はその余裕を与えません。

「△5八角から△4九銀が詰めろになるので、そのあたりは一手いけそうかなと思っていました」と藤井三冠。角打ち(△5八角)、銀打ち(△4九銀)、角打ち(△5九角)の3連打であっという間に郷田玉を受けなしに追い込み、106手で勝利を収めました。

本局を振り返って、藤井三冠は「なかなか先手陣の急所がつかめなくて、一局を通して判断の難しい将棋だったかなと思います」、郷田九段は「打った角が8六にいたままで使いにくくて負担になってしまいました。腰の入っていない攻めになってしまったんで、途中から自信のある局面はなかったです」とコメント。

郷田九段が語ったように、本局は相手の盤上の角に対する藤井三冠の対応が的確な一局でした。打たせた角を金と桂で封じ、角の利きの及ばない4筋から飛車を活用。そして最後はその角を取りに行く落ち着いた手順で勝負を決めました。敗れた郷田九段側にも目立った悪手はなく、非常にハイレベルな大熱戦でした。

この勝利で藤井三冠は6勝1敗の成績になりました。A級への昇級枠は2つで、目下のところ競争相手は6勝0敗の佐々木勇気七段と5勝1敗の千田翔太七段です。「3番手ですけど、自力の目があるので、残りも昇級を目指して頑張りたいと思います」と昇級に向けた意気込みを語りました。

一方本局に敗れ、3勝4敗で負けが先行してしまった郷田九段。「まだ先はたくさんありますので、一局ずつ頑張っていきたいです」と前を向きました。


対局開始時の藤井三冠(提供:日本将棋連盟)

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