藤井聡太二冠が第34期竜王戦の挑戦権獲得 永瀬拓矢王座の読みを上回る大局観を披露しての快勝!|将棋情報局

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藤井聡太二冠が第34期竜王戦の挑戦権獲得 永瀬拓矢王座の読みを上回る大局観を披露しての快勝!

豊島竜王とは王位戦、叡王戦、そして竜王戦を合わせて19番勝負を戦うことになった

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豊島将之竜王への挑戦権を懸けた第34期竜王戦(主催:読売新聞社)挑戦者決定三番勝負第2局、▲藤井聡太二冠-△永瀬拓矢王座戦が8月30日に東京・将棋会館で行われました。藤井二冠が先勝して迎えた本局は、77手で藤井二冠が勝利。2連勝で豊島将之竜王への挑戦権を獲得しました。


第34期竜王戦決勝トーナメント表

第1局は永瀬王座の三間飛車から相穴熊の将棋となり、184手の長手数の末、藤井二冠が勝利を収めています。第2局は対照的に短手数での決着となりました。

相掛かりの戦型になった本局は、両者が最も強い手の応戦を繰り広げた結果、序盤から激しい展開になりました。

△8六歩▲同歩△同飛と永瀬王座が飛車先の歩を交換したタイミングで、藤井二冠は▲7六歩と角道を開けました。事前に▲9六歩と突いているため、角道を開けなくても△8七歩には▲9七角があり、角を取られる心配はありません。しかし角を大きく盤上中央で使うためには▲7六歩は突いておきたいところです。

ところが六段目には相手の飛車がやってきたばかり。すぐに△7六同飛と取られてしまいます。「取れるものなら取ってみろ!」と藤井二冠は思ってはいないでしょうが、▲7六歩はそういった意味合いのある手です。

藤井二冠に強気の手を指された永瀬王座。7六の歩を取るのには、後手にもリスクが伴います。飛車が8筋からそれると、先手に▲8二歩と打ち込まれる筋が生じるのです。相手の主張を通して穏やかな順に進めるのか、それとも真っ向から踏み込んでいくのか。永瀬王座は17分の考慮で、△7六同飛を選択。最強の手段で応戦することを選びました。

当然、藤井二冠は▲8二歩と敵陣に打っていきます。桂を端に跳ねさせてから、▲9五歩と追撃。局面は一気に激しくなりました。

35手目、藤井二冠は長考に入ります。ここは方針の岐路。これまで通り攻めていくのか、それとも自玉の守りを固めるかという局面です。藤井二冠は▲4八玉と着手。自玉の守りを優先しました。

「乱戦模様で判断の難しい将棋だったかなと思います。△7四飛と引かれた局面で長考して、何か攻めていく手も考えたんですけど少し成算が持てなかったので。▲4八玉では全くうまくいっていないのかなと思っていました」と藤井二冠は振り返ります。確かに藤井二冠の感想の通り、▲4八玉と指してABEMAのAIの評価値は下がってしまいましたが、これが人間同士の戦いでは好判断でした。

▲4八玉に対し、永瀬王座も54分の考慮で△8八歩と打ち込んでいきました。▲8八同金と取らせることで、金銀の連結を分断し、馬を作る手をより厳しいものにしようという狙いです。ところがこの手を局後に永瀬王座は真っ先に悔やみました。

ここから藤井二冠は、永瀬王座の読みを上回る大局観を披露します。馬で金取りをかけられた局面で、その金取りを放置して▲8三角と攻め合ったのが好手でした。相手に△7五角と詰めろ飛車取りで角を打たれてしまいますが、ズバッと▲6一飛成で飛車を切り、その後▲5八金でじっと受けに回ったのが絶妙な手順。相手に飛車・角を渡した上に依然金取りが残されている局面ですが、これでなんと先手が優勢です。

「▲6五飛から▲8三角と打って、こちらの玉が早逃げしたのが生きるのかなと思いました」と藤井二冠。巧みな構想で▲4八玉が生きる展開に持っていってしまいました。

一方の永瀬王座は「△8八歩に代えて△8六歩しかなかった……。本譜の(▲8三角△6四歩)▲7四角成△同歩▲6四飛△7五角で(その先の)▲5八金の局面を眺めていて、確かに悪いのは分かったんですけど、それを理解できていなかったので△8八歩としてしまいました。ただその局面の形勢の良し悪しをその(△8八歩と打つ前の)段階から判断することがちょっとできなかったので、判断できていれば△8六歩という手になったのかなと思います」と振り返ります。

感想戦では永瀬王座指摘の△8六歩が調べられました。藤井二冠は「(▲4八玉と)玉を上がったときに後手がどう指すのかが難しいのかなと思って、最終的に上がったんですけど、△8六歩と垂らされるとここの傷(6九の地点を指さしながら)もできているから、かえって損したかもしれない。新しい傷(△6九角の打ち込みなど)ができているので……」と△8六歩の優位性を認めていました。

本譜は▲5八金のあと、永瀬王座は△8八馬で金を入手しました。この金は取ったと言うよりも取らされたと表現する方がいいでしょう。直後に▲8三飛と馬銀取りで飛車を自陣に打ち下ろされるのが激痛です。

ただし、▲8三飛の真の狙いは駒を取ることではありませんでした。両取りを受ける△8二飛に対し、▲同飛成として銀を8二に呼び寄せるのが本当の狙い。それから▲6三金と打てば、永瀬玉は一気に受けが難しくなりました。

藤井二冠の攻めはその後も止まらず、▲6五桂と自陣の桂をも働かせて全軍躍動。「▲6五桂から手順に攻めが続く形になったので、そのあたりで指しやすくなったかと思いました」と藤井二冠もここで優勢を意識したとのことです。

その後、永瀬玉を追い詰めるだけ追い詰めてから、手堅く▲6六銀と角取りに投入したのが決め手。これで藤井玉には一切の憂いがなくなり、あとは着実に相手玉を寄せていくだけになりました。最後は藤井二冠が永瀬玉を即詰みに打ち取って、勝利を収めました。

本局は藤井二冠が永瀬王座の読みを上回る大局観でリードを奪い、そのまま押し切った会心譜となりました。あまりいい手ではなかったかもしれないと本人が語った▲4八玉をも好手に代えてしまう、その構想力に脱帽です。

本局に敗れた永瀬王座は「1組優勝でいい位置からスタートはできたんですけど、結局藤井二冠を抜かないとというところがありますので、あまりアドバンテージがあるという状態ではないという感じはしていました。本局も含めて、最後の▲6四飛の局面などの、深い局面での読みの部分で差を付けられてしまった印象がありますので、それを補っていきたいなと思います」と今期の竜王戦を総括しました。

一方、叡王戦に続いてタイトル挑戦権を獲得した藤井二冠は「竜王戦という最高峰のタイトル戦で挑戦できるのは光栄だなと思います。2日制の8時間ということで、王位戦と同じ条件になるので、王位戦でうまくいかなかったところを修正して臨めればと思います」と終局直後に語りました。

藤井二冠の挑戦を受けて立つのは豊島竜王です。両者は王位戦、叡王戦に続いて竜王戦でも激突。すべて合わせて19番勝負となりました。王位戦は4勝1敗で藤井王位が防衛。叡王戦は2勝2敗のフルセットとなっており、決着局は9月13日に行われます。

そして、第34期竜王戦七番勝負でも、まさに頂上決戦と言えるカードが実現しました。終局後に行われた記者会見で、藤井二冠は「最高峰の舞台なので、それにふさわしい将棋を指したいという気持ちはあります。また、相手が豊島竜王ということで、またこうして番勝負で対戦できるということはとてもうれしいことなので、その機会を自分にとって生かしていければなと思っています。開幕までにまだしばらく時間があるので、その間にしっかり準備をしていって、七番勝負を盛り上げていければと思います」と抱負を述べました。

熱戦が繰り広げられること間違いなしの竜王戦七番勝負。その日程は以下の通りです。

第1局: 10月8日・9日 東京都「セルリアンタワー能楽堂」
第2局: 10月22日・23日 京都府「総本山仁和寺」
第3局: 10月30日・31日 福島県「新つた」
第4局: 11月12日・13日 山口県「ANAクラウンプラザ」
第5局: 11月26日・27日 岡山県「円通寺」
第6局: 12月4日・5日 鹿児島県「指宿白水館」
第7局: 12月17日・18日 山梨県「常磐ホテル」


永瀬王座を圧倒して挑戦権を獲得した藤井二冠(提供:日本将棋連盟)

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