豊島将之叡王が藤井聡太二冠に完勝! カド番をしのいで決着は最終局へ 第6期叡王戦五番勝負第4局|将棋情報局

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豊島将之叡王が藤井聡太二冠に完勝! カド番をしのいで決着は最終局へ 第6期叡王戦五番勝負第4局

戦いの中、じっと自陣を引き締めた▲7九金が好手でペースをつかむ

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豊島将之叡王に藤井聡太二冠が挑戦する将棋のタイトル戦、第6期叡王戦(主催:株式会社不二家)五番勝負第4局、▲豊島叡王(1勝2敗)-△藤井二冠(2勝1敗)戦が8月22日に愛知県「名古屋東急ホテル」で行われました。結果は91手で豊島叡王の勝利。カド番をしのいで、本シリーズはフルセットに持ち込まれました。


第6期叡王戦五番勝負の勝敗表

18、19日に行われた王位戦七番勝負第4局と同じく、本局も豊島叡王が先手番で相掛かりを採用しました。叡王戦では第1局から3局まですべて角換わりの将棋となっていたので、相掛かりは初登場です。

先手は▲7七角といったん上がってから、△3三角を見て▲3三同角成と時間差で角交換をしました。▲7七角に代えて▲2二角成とすれば、すぐに角交換できたところ。後手に△3三同桂と跳ねさせた方が得と豊島叡王はみているのでしょう。実際、後手の左銀(3一銀)の活用が難しくなっています。

先手が角の動きで手損した一方、後手も飛車の動きで手損をしました。8四から△7四飛と寄ってから、△8四飛と元の位置に戻ったのです。この手損にはもちろん意味があります。△7四飛は7六の歩に狙いを付けて、相手の駒組みを牽制する狙い。△8四飛は▲8二角と打ち込まれる手を防ぐために必要な手です。

両者手損をしたため、手の損得はなくなりました。そして36手目、藤井二冠が△5二玉と上がったことによって、先後同型の局面が出現しました。手番は先手番。豊島叡王は▲7五歩と歩を伸ばし、飛車を横に大きく使えるようにします。

ここで藤井二冠は△9三桂と跳ねて、8筋から戦いを起こす構えを見せましたが、結果的にはこの構想がまずかったようです。というのも、本譜はここから豊島叡王の指し回しが冴えわたり、藤井二冠にチャンスが訪れなかったからです。

△9三桂に対し、豊島叡王は▲8六歩と突いて△8五桂跳ねを防ぎます。藤井二冠が△8五歩と打ってこじ開けに来たところで、じっと▲7九金と引いたのが好手でした。金銀を連結させつつ金を最下段に配置するこの手によって、先手陣は見違えるほど隙のない強固な構えになりました。

予め戦いに備えてから、豊島叡王は▲9五歩と端攻めを開始します。後手は桂を跳ねているため、ここを狙われると弱い形です。両者角を打ち合って飛車を取り合いますが、局面が落ち着くと、後手だけが端に爆弾を抱えている形になりました。形勢の針は、はっきり豊島叡王側に傾きました。

豊島叡王は歩で桂を取った後、飛車を敵陣に打ち下ろして香を入手します。この間、後手は桂香どちらも取ることができず、先手の桂香得となりました。

遅ればせながら藤井二冠も△9九飛と飛車を敵陣に打ち込みます。ここで豊島叡王は8筋で歩の成り捨てを入れてから、▲2四歩と逆サイドに手をつけました。この手はすぐには厳しい狙いはないものの、後から利いてくる手。焦って直接攻めるのではなく、相手に取るか取らないかの判断をゆだねたのです。成り捨てに21分、▲2四歩に51分の考慮を入れて、慎重に進めていきます。

この歩に対して相手をしている余裕はないと判断した藤井二冠は、△7七角成と攻め込んでいきます。ここで攻め合いに打って出るのではなく、受けに回ったのが豊島叡王の好判断。先ほどの▲2四歩と同様、ここでも焦りは見せません。

藤井二冠は角交換から△7六桂と打ち、攻めを継続。ここで豊島叡王が桂の利きに▲8八角!と角を打ったのが決め手でした。後手の9九の飛車を何が何でも取ろうという狙いです。飛車さえ取ってしまえば、自玉への脅威はなくなるという的確な判断でした。

藤井二冠は角を取らずに桂で銀を取り、飛車も切って豊島玉に迫ります。しかし攻めが細いのは明らか。最後は豊島叡王が▲6一飛と手にした飛車を王手で打った手を見て、攻防共に見込みのなくなった藤井二冠が投了を告げました。

遡って△9三桂に代えて、△3五歩と伸ばすのが感想戦で検討された順。なおも先後同型を継続するのが良かったようです。

本局は中盤で優位に立ってから、その優位をどんどん拡大して勝利するという、豊島叡王の快勝譜となりました。このような勝ち方は藤井二冠が得意とするところ。そのお株を奪うかのような内容でした。

局後、豊島叡王は「序盤は考えていた形の一つでした。中盤は難しかったと思うんですけど、駒得する展開になったので少し指せそうな気がしていました。最後▲2四歩と合わせたところで明快な順が分からなかったので、本譜はおかしかったかもしれないですけど、という感じでした」と振り返りました。豊島叡王自身は▲2四歩に対してあまり手ごたえを感じていなかったようです。

珍しく完敗を喫してしまった藤井二冠は「早い段階でミスが出てしまって、勝負所を作れなかったのは残念です。(▲7九金以降)進んでみるとかなり悪い局面になってしまっているのかなという気がしました」と語りました。

これで叡王戦五番勝負は両者2勝2敗のフルセットとなりました。白熱している本シリーズはこれまですべて先手番が勝利を収めています。まずは対局開始前の振り駒に注目です。

第5局は9月13日に東京・将棋会館で行われます。豊島叡王は「何とか追い付いたという感じですけど、次は最終局なので悔いのないように指せたらと思います」、藤井二冠は「本局は完敗だったので、最終局は精一杯戦って、勝負所を作れるように指せたらと思います」と抱負を語りました。


会心の勝利でタイトル防衛に王手をかけた豊島叡王(提供:日本将棋連盟)

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