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王位失冠から1年、48歳木村一基九段がタイトル戦の舞台に再度立つ! 王座戦挑戦者決定戦で佐藤康光九段を破る

永瀬拓矢王座との五番勝負は9月1日に開幕

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永瀬拓矢王座への挑戦者を決める、第69期王座戦(主催:日本経済新聞社)挑戦者決定戦の▲佐藤康光九段-△木村一基九段が7月19日に東京・将棋会館で行われました。結果は132手で木村九段が勝利。第61期王位戦七番勝負以来となるタイトルの舞台に登場します。

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第69期王座戦挑戦者決定トーナメント表

藤井聡太二冠を筆頭に、若手の活躍が目立つ現在の将棋界において、48歳の木村九段と51歳の佐藤九段の対決ということで注目された王座戦挑決。振り駒で先手番になったのは佐藤九段でした。

戦型は矢倉となり、後手の木村九段は急戦模様の駒組み。対する佐藤九段は▲6六歩~▲4六歩と突いて、急戦を警戒します。

この▲4六歩を見て、急戦を断念して△4四歩と突いて持久戦に切り替えたのが木村九段の好判断でした。▲6六歩と▲4六歩を両方突いている先手からは早い仕掛けがなく、後手はのびのびと陣形を発展させることができるのです。

木村九段は雁木に組んだ後、5筋の位を取って銀でそれを支えます。この中央の位が重しとなり、先手は陣形をふくらますことができません。佐藤九段は右玉に組み、玉側の桂を跳ねて交換を挑みました。守りが薄くなるだけに決断の一手ですが、ゆっくりしていては陣形差で勝負所がなくなるという判断でしょう。

桂交換に応じた後の木村九段の指し回しは、まさに「千駄ヶ谷の受け師」の異名通りのものでした。歩を金銀で支えつつ、どんどんディフェンスラインを押し上げていきます。やがて木村陣の金銀は、全て自陣三段目以上に配備されました。

ひとたび防衛線を突破されると、堰を切ったように攻め込まれてしまうギリギリの陣形。これをまとめきる受けの力が木村将棋の真骨頂です。佐藤九段は猛攻を仕掛けますが、木村玉自らも前線の守りに加わる力強い受けで崩れません。そして手にした駒で鋭く反撃に転じます。

右玉は、飛車の下段の利きで自陣を守る戦型です。逆に言えば、飛車の利きを通すために下段はスカスカということです。その右玉の弱点に着目した木村九段は、桂と角で強引に佐藤九段の飛車を入手し、佐藤陣下段に飛車を打ち込みました。これがとても厳しい攻めで、優位を盤石のものとします。

佐藤九段が最後の反撃に出たところで、木村九段が△4五桂と相手の歩の利きに桂を捨てたのが絶妙手でした。これで佐藤玉は寄っています。佐藤玉には詰みがあったようですが、木村九段は自玉の不詰みを読み切って必至をかけました。そして、佐藤九段の王手ラッシュをかわしきり、勝利を収めました。

対局終了後には記者会見が行われました。佐藤玉に詰みがあったことについて、「感想戦で佐藤さんが詰んでるって言っていて。どうやって詰むか教えてくれなかったんですけど(笑)」と記者の笑いを取る一面もあった、木村九段の人柄が出た会見でした。

今回、木村九段が五番勝負で対戦するのは永瀬王座。対戦成績は3勝3敗2千日手と全くの五分です。永瀬王座との対戦について問われると、「あんまりやってないんですよね。昨年の藤井聡太さんもそうでしたけど、対戦数が少ないのはちょっと気になるところではあります。謎の相手といった感じのところがあります。ただ、あれほど勝ってますし、将棋指すのに熱心だなと感じる方ですので、熱意だけでも負けないようにと思います」と意気込みを語りました。

王位戦以来1年ぶりのタイトル挑戦については、「王位戦で4連敗した実力からすれば、よく挑戦できたなという感じもします。王位を取ったことは事実ですけど、その後、王位を取った1年というのはA級からも落ちましたし、成績が良くありませんでした。他の(タイトル保持者の)方がすべて、1つ持っている人は2つ目というように狙っている中では、私はそういうことにからめませんでしたので、実力が劣っていると思っていました。実際、(王位を)その星のまま取られてしまいましたので。なんで挑戦できたのかは分からないですけど、運が良かったです。この一言に尽きます」と謙虚な姿勢で振り返りました。

最後にファンに向けて「充実している方で厳しい番勝負になりますけど、自分なりに精一杯指したいと思います」と抱負のコメントを残して、会見は終了しました。

共に受け将棋が持ち味の永瀬王座と木村九段。ですが、「受け」と言ってもタイプが異なると木村九段は過去に語っています。『令和2年版 将棋年鑑 2020』(発行:日本将棋連盟)の巻頭インタビューより抜粋します。

「私の場合は攻め駒を責める、という感じのことが多いので。それなりの結論は求めてるんですけど、永瀬さんの場合はそういったところにはこだわらず、長引いて長引いて最後は自分が勝つんだという信念に近いものがあるんじゃないでしょうか。『長引けば、最後は自分が勝つ』というような考え方があるのかなと。そこがだいぶ違うということですね」

将棋はどちらかが攻めなければ、勝負がつかないゲームです。どちらが攻め、どちらが受けるのか。また、本当に両者の受けに違いはあるのか。そのようなところに注目して五番勝負を観戦すると面白いかもしれません。

注目の五番勝負第1局は9月1日に宮城県「ホテルメトロポリタン仙台」で行われます。

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失意のタイトル失冠から1年、大舞台に帰ってくる木村九段(提供:日本将棋連盟)

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