2021.07.09
木村一基九段が石井健太郎六段を破って王座戦挑戦者決定戦に進出! 鮮やかなカウンターで一気に勝負を決めた
木村九段は永瀬拓矢王座への挑戦権をかけて、佐藤康光九段と対戦する
永瀬拓矢王座への挑戦権を争う、第69期王座戦(主催:日本経済新聞社)挑戦者決定トーナメントの準決勝、▲木村一基九段-△石井健太郎六段戦が7月8日に東京・将棋会館で行われました。結果は87手で木村九段が勝利。挑戦まであと1勝としています。
第69期王座戦挑戦者決定トーナメント表
相掛かりの将棋となった本局で、先に動いていったのは石井六段でした。序盤早々に△1三桂と跳ね、先手の2五の歩を狙っていきます。木村九段が銀で歩を守ると、今度は9筋の歩を突き捨てて戦線を拡大。持ち駒の歩を使った攻めの準備を進めました。
対する木村九段は棋風通りの丁寧な受けで対応します。端攻めを緩和するために▲8六歩と打ち、後手からの一気の攻めを封じると、▲6六歩~▲7七金として相手の飛車・角の働きを弱めます。戦いを長引かせれば、相手の突き捨てによる歩得が生きてくるという構想です。
押さえ込まれてしまうわけにはいかない石井六段。さらに6筋の歩を突き捨てて飛車の横利きを通し、2筋へと転回させます。2筋を突破できれば序盤に跳ねた1三桂の顔も立ちますが、ここでも木村九段は▲2七歩と打って丁寧に応対。後手に付け入る隙を与えません。後手の飛車・角を完全に封じ込めた木村九段が優位を築きました。
大駒が働かない石井六段は、本来なら守り駒である金を攻めに活用します。今までは守りに徹してきた木村九段ですが、ここからのカウンターが鮮やかでした。
まずは銀を相手の金にぶつけていきます。交換を避けた後手に対し、▲6八飛と玉の隣に飛車を転回させたのが好着想でした。相手の2二角と2四飛を相手にせず、盤上左辺に勢力を結集して7一の相手玉を寄せてしまおうという狙いです。
石井六段は△2六歩と突いて飛車を働かせようとしますが、先手と後手とでは攻めている場所が違いすぎます。木村九段は▲6六金と上がって、後手の金にガツンとぶつけていきました。飛車・角・金・銀の攻めはあまりにも強烈です。さらには▲9四歩と突いて後手の突き捨てを逆用。6~9筋を広く使った攻めが止まることはありませんでした。
何とか攻めを受け止めようとする石井六段でしたが、木村九段の銀捨ての好手、▲7三銀成が決め手となりました。銀2枚を捨てることによって、▲6一飛成と金を取りながら敵陣に竜を作ることに成功。以下数手で石井六段を投了に追い込みました。
本局は、後手の無理気味な攻めを丁寧に受け止めてから、チャンスと見るや否や、戦力を左辺に集中させて素早く反撃に転じた木村九段の会心譜となりました。
この勝利で木村九段は挑戦者決定戦に進出。永瀬王座への挑戦権を懸けて対決する相手は佐藤康光九段です。48歳の木村九段と51歳の佐藤九段による「オジサン対決」。両者共にファンが多い棋士のため、盛り上がること必至です。運命の一戦は7月19日に行われます。
2008年度の第56期以来の挑戦権獲得を目指す木村九段