細かすぎて伝わらない!将棋年鑑藤井聡太インタビューの微妙なニュアンスの補足2|将棋情報局

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細かすぎて伝わらない!将棋年鑑藤井聡太インタビューの微妙なニュアンスの補足2

将棋年鑑、藤井聡太インタビューを深堀り!

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 皆さんこんにちは。「万物の根源は水である」でおなじみの編集部島田です。

先日アップさせていただいた「細かすぎて伝わらない!将棋年鑑藤井聡太インタビューの微妙なニュアンスの補足」が好評いただきましたので、2匹目のどじょうをすくいに第2弾行きます。

この記事は、現在予約受付中の『令和2年版 将棋年鑑 2020』の巻頭特集3「激闘の王将リーグと順位戦全勝昇級 藤井聡太の1年」という藤井二冠のインタビューにおいて、文字だけでは伝わらない行間の微妙なニュアンスをテキストの限界を超えて伝えんとするものです。



全部で12個あるポイントのうち、今回は5~8個目の4つを紹介したいと思います。本日のMENUは以下の通りです。
 
1、「つもり」はあるけど「予定」はない
2、コンマ1mmの怒気
3、おいてかないで
4、複雑な(笑)

さて、順に行きましょう。


1、「つもり」はあるけど「予定」はない

まずは「つもり」はあるけど「予定」はない、から行きましょう。どういうことやねんって感じですが、以下のやり取りで出た発言です。

島田「『初手お茶』がファンの間で有名ですが、ルーティーンというか、意図的なものですか」

藤井「はい。意味はないんですけど」

島田「これからも続けていくつもりですか」

藤井「そうですね。続けていく予定があるというほどではないんですが(笑)」



・・・どうですか、このやり取り。わかりにくいと思いませんか(笑)?

「続けていくつもりですか?」
「はい。続けていく予定があるというほどではないんですが」

うーん。

わかりやすく言えば「続けていくとはっきり決めているというほどではないんですが」ということだと思いますが、そうは言ってくれないんですね。いけずです。
頭がいい人特有のギリギリのラインを攻めて来る感じが、インタビュアーとしての理解力を試されているようで逆に快感ですらあります(笑)

藤井二冠には何回かインタビューさせていただいているので「島田さんならこれくらいでわかりますよね?」と思って言ってくれてるならうれしいなぁ。・・・違うんだろうなぁ(苦笑)。



2、コンマ1mmの怒気

はい。続いてはコンマ1mmの怒気です。これは、以下のような流れの中で現れたものです。

島田「この1年は豊島将之竜王名人と渡辺明三冠の対決が大きなトピックだったと思います。名人戦の大舞台での激突となりますが、この2人の対決をどうみますか?」

藤井「トップで活躍されてきたお二人なので名人戦で対決するのも自然な流れだと思います」

島田「先生から見てもこの2人は抜けている印象でしょうか。」

藤井「豊島竜王名人、渡辺三冠、永瀬二冠の3強というイメージです」



これだけ読むと普通の応酬に見えると思います。今回の将棋年鑑は表紙からして豊島VS渡辺を前面に出しておりまして、巻頭特集その1も、まさにこのテーマを扱っています。

頭のいい藤井二冠には、私がその方向に持っていこうとしているのが瞬時にわかったはずです。そしてその意図通りの回答をすることももちろんできたでしょう。

それを踏まえてこの「豊島竜王名人、渡辺三冠、永瀬二冠の3強というイメージです」という発言に注目してください。これ、テキストにすると淡々と言っているようにしか読めないんですが、直接言葉を聞いていた私には、ここにコンマ1mmの怒気が含まれていた、ような気がしました。

つまり、「島田さん、永瀬二冠をお忘れじゃないですか?」ということですね。

藤井二冠が永瀬二冠と研究会を行っていることは有名ですが、ここに永瀬先生への深いリスペクトが、肉眼ではとらえ切れない怒気となって現れた、と思うのは考えすぎでしょうか。

おそらく考えすぎでしょう(笑)


3、おいてかないで

これは、藤井二冠の発言というより、完全に私の心情でしかないんですが(笑)

詰将棋の話をする藤井二冠と弊社インタビュアー會場のやり取りを見てください。


會場「例えば短大の初入選作で言うと、どの辺から創り始めているんでしょうか」

藤井「角を打って、中合のところですね」

會場「部分的と言っても盤面全体を使っているわけですよね(笑)、あの手だけでも」

藤井「あ、まぁ(笑)。でもそこからまぁ収束と前後をつけて、という感じで、はい」

會場「逆算ともちょっと違うというか」

藤井「逆算も多いんですけど。デパートに出したやつとかは逆算です。15手の」

會場「あ、あの銀捨て合の」

藤井「はい」

會場「あれは完全に詰め上がりから逆算で」

藤井「そうですね、はい」

會場「あと高校のやつも逆算でしょうか」

藤井「あ、あれも逆算です、はい」



・・・・・・。ええ、もう、完全に何言ってるかわかりませんよね。古代ヘブライ語かな?っていうくらいですよ。この時私は強く感じましたね。「寂しい」と(笑)。

僕はここにいるよと。おいてかないでと。

マニアはこれだから怖いですよ。でも何が悔しかったって、これをしゃべっていたときの藤井二冠が本当に楽しそうだったんですよね(笑)。

私のインタビューの時には見せない饒舌さがそこにはありましたよ、ええ。なんか完全に一人で三角関係演じてますけど、あの時の私の気持ちは誰にも言わずにそっと自分の心に留めておきます(言ってますけど)。


4、複雑な(笑)

さて、最後は複雑な(笑)です。インタビュー記事の(笑)って使い方が非常に難しくて、ニュアンスが多岐にわたるんですけど、ここで紹介する(笑)はその中でも最上級にニュアンスを伝えるのが難しい。

以下の文章を読んでください。これは、藤井二冠が先輩の先生方に詰将棋は控えるように言われているという有名な話を前提にしてます。

會場「よく言われることに『これからタイトルを目指していくなら創作は控えたほうがいいかも』というようなお話があったりすると思うのですが」

藤井「まぁそれは自分で判断することかと思いますので(笑)」

會場「ご自身の判断では、いまどう考えられていますか」

藤井「そうですね。なにかまぁ思いついたときに並べてしまうというのは習慣なので、それはとめられない(笑)」


どうですか、この2回の(笑)。これはニュアンスが非常に難しい。一見するといたずら小僧がこっそり悪さをするときの笑いにも読めます。それでいて、もう自分は大人なのだからそろそろ一人で判断できますよ、何言ってるんですか、みたいな感じにもとれる。

そしてそれらの感情がないまぜになって、全部含めた照れ隠しのようにも思える。

おそらく、これらには全部ある程度の正しさが含まれているんじゃないかと思っています。

いずれにせよ、この2回の(笑)は藤井二冠が高校生の今にしか出なかった(笑)であり、これをこのタイミングで引き出した會場にはやはり心から拍手を送りたい、ということですね。



・・・さて、ということで今回の補足は以上となります。12個あるポイントのうち、5~8番目の4つをお送りしました。

だいぶ行間に迫ったような、全然的外れなような気もするんですが、いかがでしたでしょうか?(笑)

好評なら次回がある、かもしれません。


そして、『令和2年版 将棋年鑑 2020』は現在好評予約受付中です!

ぜひ皆さんの目でこのインタビューの全文を読んでいただいて、いろいろな思考を巡らせてみていただければ幸いです。

宜しくお願いいたします。


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