藤井聡太七段も太鼓判! ここがすごいぞ「エルモ囲い」!!|将棋情報局

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藤井聡太七段も太鼓判! ここがすごいぞ「エルモ囲い」!!

将棋ソフト「elmo」が升田幸三賞を受賞した、「エルモ囲い」のストロングポイントを解説!

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4月1日に第47回将棋大賞の選考委員会が行われました。新たな戦法や定跡を開発したり、その進歩に大きな役割を果たした者に与えられる、升田幸三賞を受賞したのは、なんと将棋ソフトの「elmo」。同賞がソフトに与えられるのは史上初めてです。

「elmo」が受賞したのは、自身が多用する「エルモ囲い」を流行させたため。この「エルモ囲い」とは何なのか、どこが優れているのかを本稿では紹介していきます。

まず、「エルモ囲い」の代表的な形は画像上のようなものです。居飛車の急戦で用いられる囲いで、金銀の連結が非常によく、仮にどれか一つの金銀を取られたとしても、取り返せる形をしています。特徴的なのが玉の下にいる7九金で、これがこの囲いの要となる駒です。

ここからは居飛車急戦で従来からよく用いられている、「舟囲い」(画像下)と比較する形で「エルモ囲い」の3大メリットを紹介します。

【メリットその1:横からの攻めに強い】

居飛車急戦では飛車交換になったり、飛車を成り込まれたりして、下段飛車で攻められることが往々にしてあります。「舟囲い」のウィークポイントは6九金で、この金には玉のひもしかついていません。つまり、この金を取られたときに、その駒を取り返せるのは玉しかいないということです。相手の駒の利きに玉が入ってしまうため、玉で取り返せない! という事態に皆さんも実戦で遭遇したことがあるかと思います。

しかし、エルモ囲いならその心配はありません。金を一つ左の7九に移動しただけで、銀のひもがつきました。これなら一回は▲同銀と取ることができ、「舟囲い」の場合とは段違いです(5九の金はすでに取られてしまっている想定です)。

ここまでは右から攻められた場合の話でしたが、左から攻められた場合にも真価を発揮します。振り飛車側から△4五歩~△9九角成とされ、香を取られつつ馬を作られた経験は誰もが持っているでしょう。その際、「エルモ囲い」の7九金型には2つの強みがあります。

1つは8八・8九の地点に利きがあるということ。馬との連携で、△8八金(飛)と打ち込まれることがありません。また、桂にひもがついているため、すぐに取られてしまうこともありません。
もう1つは玉の退路があるということ。「舟囲い」だと9九に馬がいる形で、△9八飛と打たれるといきなり詰んでしまいます! しかし、「エルモ囲い」なら▲6九玉の脱出経路があるので安心です。

【メリットその2:縦からの攻めに強い】

「エルモ囲い」は縦からの攻めにも強いです。これはメリットその1の最後に書いたように、6九から玉が逃げ出せるから。例えば「舟囲い」と「エルモ囲い」の画像に△8四香・△8五香を追加してみてください。「舟囲い」の場合は、次に△8七香成▲7九玉△8八成香までの詰めろとなっています。しかし、エルモ囲いなら△8七香成に▲6九玉と逃げることができるのです。

【メリットその3:相居飛車にも対応可能】

盤面がなくて恐縮ですが、少し初手から手を進めさせていただきます。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二銀と進んだとき、後手はまだ居飛車か振り飛車か態度を表明していません。▲2五歩と伸ばすのは向かい飛車にされるかもしれないし……▲5八金右と上がるのは形を限定しすぎだし……と悩ましい場面です。

しかし、もしあなたが「エルモ囲い」の使い手ならこんな心配はありません! 堂々と▲6八銀!とすればいいのです。相手が飛車を振ってきたら「エルモ囲い」の出番。▲7九金~▲6九玉~▲7八玉という面白い組み方で「エルモ囲い」を実現できます。また、もし相手が△8四歩と突いて居飛車を表明してきたら、雁木にも矢倉にも組むことが可能です。

以上、「エルモ囲い」の優秀さを紹介させていただきました。この囲いは様々な戦法と組み合わせが可能で、右銀急戦、▲4五歩早仕掛けのような一般的な急戦策はもちろん、右四間飛車や、はたまた相振り飛車の中飛車側でも使うことができます。使い勝手のよさも優秀さの証です。

「エルモ囲い」の優秀性がプロ棋士の目につき、実戦例が増加していきます。ついには藤井聡太七段も平成30年11月の順位戦C級1組で増田康宏六段相手に採用しました。のちに行われたインタビューにおいて「エルモ囲い」について問われた藤井七段は、「形としていいというのはわかります。駒の配置として優れているというのは間違いないところかと思います」『平成31年・令和元年版将棋年鑑2019』(日本将棋連盟、2019年)と回答。藤井七段お墨付きの囲いです。

さらに、「エルモ囲い」はタイトル戦の大舞台でも登場。第68期王将戦第2局、▲久保利明王将-△渡辺明棋王戦で渡辺棋王が採用し、勝利を収めています。

プロアマ問わず、流行している「エルモ囲い」。升田幸三賞受賞も納得です。まだ使ったことがないよ、という方は是非一度採用してみてください。見た目以上の耐久力であなたの王様を守ってくれること請け合いです。


上:エルモ囲いのバリエーションの1つ。骨子は6八銀・7九金。下:従来から用いられる舟囲いの代表的な形

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