『石田流は終わらない』レビュー|将棋情報局

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『石田流は終わらない』レビュー

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はじめに

今回は、2026年5月に発売されたばかりの新刊『石田流は終わらない』のレビューをお届けします。本書は、後手石田流をテーマにした専門性の高い一冊です。

※表記に関する注意点
本書では、後手石田流を解説するにあたり、局面図や符号はすべて先後逆で記述されています。本レビューもそれに合わせ、振り飛車側を先手(▲)、居飛車側を後手(△)として記述します。また、混乱を避けるため、レビュー文中では「振り飛車側」「居飛車側」という表現を用いています。

後手石田流といえば、居飛車側から△4五角と打たれて乱戦模様になるリスクがあります。そのため、振り飛車側は一度6筋に飛車を回って、△4五角と打たれる筋を防いでから、7筋に飛車を振る、「4→3戦法」という指し方が安全な指し方とされてきました。

しかし本書では、居飛車側の対策が進んだことにより、「4→3戦法」は厳しくなっていることが記されています。そこで本書が深掘りしているのは、初手から△8四歩▲7六歩△3四歩▲7五歩△4二玉▲7八飛と、一直線に石田流を目指す強気な指し方です。

本書の概要

まずは、各章の構成と見どころをご紹介します。

第1章、第2章では、これまで後手で安全に石田流に組むための指し方とされていた、「3・4・3戦法」や「4→3戦法」について取り上げています。居飛車側の工夫により、これらの指し方がなぜ難しくなってきたのか解説されています。

第3章は、初手から△8四歩▲7六歩△3四歩▲7五歩△4二玉▲7八飛と石田流を目指した場合に△8八角成~△4五角(図)と打たれた場合の対処法について詳説されています。居飛車側のこの角打ちが成立してしまうと、後手で一直線に石田流を目指すこの指し方はできません。居飛車側のこまかな形の違いも含めて、振り飛車側が対処する方法が述べられています。

第4章は、△4五角への対処が互角以上にできることを前提(第3章)に、居飛車側が△4五角を打たずに、無事に石田流に組めた場合のその後の指し方が解説されています。主題は、▲8六歩からの飛車交換の筋が成立するか否かです。居飛車側の少しの形の違いに合わせて、指し方を柔軟に変えていく必要があります。特に飛車交換後の居飛車側からの△6九飛や△6九角への対処について詳説されています。

第5章は、振り飛車側が角道を止めて本組みにした場合について解説されています。△6五歩早仕掛けへの対策や、じっくり組み合ったあとの戦い方が説明されています。

第6章は、▲7六飛に対して、居飛車側が△8八角成と角交換をしてこなかった場合の指し方について解説されています。対棒金と対穴熊の戦い方について記されています。

対象となる読者

後手で石田流を指している(または指したい)方が対象となるのはもちろんですが、まずはこの戦法を指してみて、困ったことがあれば本書をあたるのがいいかと思います。

特に、石田流側を持って△4五角への対処に困っている方は第3章を是非読んでみていただければと思います。△4五角について解説されている棋書は他にもありますが、ここまで深掘りされているものはないと思います。

居飛車側が△4五角を打たなかった場合の指し方は、第4章以降に記述されています。ただし、石田流の基本の狙いや指し方についてはある程度知っていることが前提になっているので、基本を知りたい人は、先手石田流の棋書や、4→3戦法の棋書をあたるといいと思います。

石田流の一冊目に読む本というよりは、他書を読んである程度指せるようになって、何か困ったことが出てきたときに深掘りできる棋書といったイメージです。かなり専門性が高い棋書だと思います。手元に置いておくと辞書的にも使えると思います。

さらに、振り飛車党だけでなく居飛車党にも強くおすすめできます。私自身、居飛車を持って「4→3戦法」と戦うことがよくありますが、本書の第2章の内容は目から鱗でした。9筋の端を絡めて、振り飛車陣を攻略する方法については参考になりました。第3章の△4五角からの攻防も大変勉強になりました。本書全体を通して、結果図の形勢判断を、振り飛車・居飛車双方の視点から平等に記しているので、居飛車党としても、この局面まで持ち込めばまずまずやれるという判断材料になります。

おわりに

今回は、『石田流は終わらない』のレビューを書かせていただきました。

本書の魅力は、そのストーリー仕立ての構成にもあります。

「後手石田流に組みたいけど、3・4・3戦法や4→3戦法は振り飛車側がつらくなってきている」
「では、初手から一直線に後手石田流に組んでみては?」
「でも、そうすると△4五角が怖い」
「では、そこを深掘りして研究しましょう」
「どうやら大丈夫そう。では、△4五角を打たれなかった場合は?」
「そこも研究しましょう」
のような展開で進んでいくので、惹き込まれやすい内容になっています。

専門性が高いからこそ、ある程度この戦法を実戦で試し、経験値を積んでから読むと、内容がよりクリアに入ってくるはずです。

なお、巻末に収録されている、著者の菅野さんの実戦譜3局も面白い内容でした。

ぜひ本書を手にとって、楽しく奥深い「石田流ライフ」を送ってみてはいかがでしょうか。

 

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著者

たろいも(著者)