「将棋無双」を堪能しよう 第29番編 ~斧で叩き折るような竜の押し売り~|将棋情報局

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「将棋無双」を堪能しよう 第29番編 ~斧で叩き折るような竜の押し売り~

『図式全集 将棋無双』の第29番を紹介します。

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 こんにちは。「桂損まではかすり傷」でおなじみの編集部島田です。

前回の第30番編に続いて、今日も「将棋無双」のすごさについて徒然なるままに語ってみたいと思います。



今日紹介するのは第29番です。



これは「将棋無双」全体に言えることなのですが、派手な捨て駒が多いです。それが効果音をつけるとすると、鋭い「ピシッ」という感じじゃなくて「ドーン!」とか「ズガーン!」という印象です。

日本刀で斬るというより、斧とか鉈で叩き折るイメージです。

この第29番はその象徴的な作品といえると思います。

では、まいりましょう。

初手から▲8二銀不成といきなり捨てます。
以下、△同玉▲9二香成△7三玉。



さっそく9一の銀を失いました。どういうことやねん!と思うじゃないですか。意味は後でわかります。

さらに▲6四銀△8四玉▲7三銀不成△同玉と平然と5五の銀も捨てに行きます。



早くも2枚の銀を失いました。しかしここで驚いてはいけません。
次の手は▲6二竜!!



どーーん!!
なんと銀2枚に飽き足らず竜も捨てにいきます。

これに対して△同玉には▲5三馬として、そこで(1)△5一玉なら▲3三角成!で詰みます。



この▲3三角成を実現するために5五の銀を捨てる必要があったんですね。

また、▲5三馬に(2)△7三玉なら▲6三と△8四玉▲6二馬!!とします。



△同飛でも△同金でも以下▲9五角△9四玉▲6二角成で開き王手しながら6二の飛車か金を取って、△9六銀引成に9三に取った飛車か金を打って詰みます。



最初に9一の銀を捨てて▲9二香成としておいたのはこの最後の▲9三飛(または金)を実現するためだったんですね(深謀遠慮!)。

さて、ここまで来てみなさんお分かりかと思いますが、この問題は9五~5一のラインに飛車か金を呼び込んでおいて、▲9五角からの開き王手でその飛車か金を奪って、それを9三に打つ。という構造になっています。

で、戻って▲6二竜の場面です。



さっきの話から、ここで△同飛や△同金としても▲6四馬△8四玉▲9五角から6二の飛車か金を取って詰む、ということがわかると思います。

と、いうわけで、▲6二竜は取れない。
よって玉方の最善手は△8四玉!と逃げる手です。



タダで取れる竜を取らない手が最善とは驚きますが、攻め方はさらに追撃します。
▲7三竜!!



7三の地点にめり込ませるような竜の押し売り。しびれます。
力強さが半端じゃないです。

これは取るしかありませんが△同飛はやはり▲9五角から飛車を取って詰み。よって△同玉と取るよりありません。



これで初形から2枚の銀と竜を失った状態になりました。

さて、ここから収束に入ります。
▲6四と△8四玉に▲5一馬!!!



この▲5一馬が最後の決め手となる馬捨て。これを実現させることが真の狙いでした。つまり元々5一にいた竜は攻めの主力に見えて、なんとビックリ邪魔駒だったんです。まさに宗看マジック。

▲5一馬によって、玉方はどう頑張っても9五~5一のラインに金か飛車を移動せざるを得ないことを確認してください。

正解手順としては▲5一馬以下△同金▲9五角△9四玉▲5一角成△9六銀引成▲9三金まで21手詰です。


詰上がり図


竜の押し売り2連発のインパクトがたまらないですが、何がすごいって、初形から銀2枚と竜、さらに馬まで捨てる、この順しか詰みがないってことですよね。

21手の中に余詰なしでこの仕組を凝縮させた伊藤宗看先生の力に感服あるのみです。

すげぇ。宗看まじすげぇ。


・・・と、いうわけで第29番の紹介は以上です。
いかがでしたでしょうか?

本当はハチワンダイバーの最終話にも出てくる第100番「大迷路」も紹介したいんですが、私の力では難しそうです。いや、無理です(苦笑)。



こちらは書籍でご堪能いただければ幸いです。

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以下、棋士の先生たちのコメントです。


渡辺明三冠「私これ、やってないんですよ。せっかくいただいたのでこの機会に挑戦してみます」
(※渡辺先生のこのサバサバ感が好きです)


羽生善治九段「『無双』と『図巧』は20歳前後の頃に解きました。無双のほうが難しかったですね。(解くのに要した時間は)7年くらいでしょうか。(藤井聡太七段は2年と聞いて)いや~すごいですね」
(※『無双』と『図巧』を同時進行でやっていたとのことです)



斎藤慎太郎七段「宗看は自身の思い描いた構想を表現する、美的感覚を持たれていたと思います」
(※詰将棋LOVE!)


藤井聡太七段「『無双』は奨励会に入る少し前くらいから解きはじめました。(解き終えるまでの期間は)2年くらいですかね」
(※小学生で「将棋無双」完走は異次元すぎです)
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