「将棋無双」を堪能しよう 第30番編 ~非の打ちどころがない傑作~|将棋情報局

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「将棋無双」を堪能しよう 第30番編 ~非の打ちどころがない傑作~

『図式全集 将棋無双』の第30番を紹介します。

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こんにちは。「カップラーメンが最強のソリューションである」でおなじみの編集部島田です。

本日は現在絶賛予約受付中の書籍『図式全集 将棋無双』をご紹介します。




江戸時代に歴代の名人が詰将棋100題を将軍に献上したのが献上図式。
本書はその献上図式を谷川浩司九段が解説する「図式全集シリーズ」の第1弾を飾る一冊です。

7手詰以上は長手数だと思っているほど詰将棋が解けない私ですが、本書の編集のために改めて「将棋無双」100番を並べてみて・・・、いや、感動しましたね。本当に。すごすぎていっぺんに宗看のファンになりました。

江戸時代の作品集の中で、「将棋無双」と「将棋図巧」が抜きん出ているとよく言われますが、そうであれば先に出た「将棋無双」のほうが、それまでのレベルとの差は大きい、ということになります。

詰将棋のレベルを高めたという誉れは「無双」のほうに与えられるべきものでしょう。(と、すっかり宗看ファンになった私は言ってしまう)


・・・前置きが長くなりました。「お前の感想はどうでもいいから早く無双の紹介をしろ」という声が聞こえてきましたので、行きます。

今日は無双の中でも最も有名といわれる第30番を紹介したいと思います。

これです。




119手詰ですが、まず初手がすごいです。まさかの▲2三金!!





大事そうに見えた2二の金をいきなり捨てにいく暴挙。こういう「どーん!」というインパクトのある手が多いのが無双の特徴の一つです。

△2三同玉は▲3四飛成△同玉▲3三飛△4五玉▲3五飛成以下、作意手順より2手短い(!)117手で詰みます。

△2五玉と逃げるのが最善ですが、そこで▲2四金!!



「食したまえ、その肉を」と言わんばかりの押し売り。△2四同玉で初形から純粋に金を失った形になりました。



厳然たる戦力ダウン。・・・に、見えますが、宗看の仕掛けたミステリは後編で見事に伏線が回収されます。

さて、「視点」は飛んで25手目。ここが第2の見せ場。



▲6六馬と王手したところで玉方は△8九玉の一手です。そこで▲6七馬(下図)とするとまた△9九玉と逃げられます。



この調子で▲6六馬~▲6七馬を繰り返していると連続王手の千日手になってしまいます。

そこで▲6六馬△8九玉に▲5六馬!△9九玉▲5五馬!と馬で王手をしながらどんどん遠ざかっていきます。馬ノコといわれる詰将棋の技法ですね。



こうすることで、あら不思議、王手をしながら1二の歩を取ることができます。

と、ここで思い出してください。もし最初に2二の金を捨てていなかったらどうなっていたでしょうか?

こうです。



なんと!自分の金が邪魔して2二に行けないじゃありませんか!この「馬の行軍を邪魔しない」ために最初の無鉄砲な金捨てが必要だったんですね(Q・E・D)。


さて、まだ終わらない第30番。1二の歩を取った馬はまたジグザグに戻ってきて、▲7八馬(下図)でお役御免となります。



△7八同玉に▲7七竜△6九玉▲7九竜以下玉を盤面右側に追い詰めます。



だいぶ追い込みました。ここで先ほどかすめ取ってきた一歩を使います。
▲1九歩!



この一歩を取るための馬ノコだったんですね。△同玉▲1七竜に△1八銀成。



なんかさっき盤面左側であったのと同じような位置関係です。ここで馬があればさっきみたいな馬ノコになるんですけどね・・・。

・・・と、思ったらあるじゃないですか!!これまで全くメインストーリー参加してこなかった登場人物、盤上に忘れさられた一人ぼっちのあいつが。「我、ここにあり!」とばかりに▲8二角成!



以下、△2九玉▲8三馬△1九玉▲7三馬・・・と、ノコノコ馬がやってきます。
そして▲3八馬でお役御免。



さぁ宗看先生の長編ミステリもいよいよクライマックス。最後の最後に大花火をぶち上げます。

この辺りで気づいてくるんです。

「あれ?なんか左の形と右の形似てるな・・・」と。

△3八同玉 ▲3七竜



「え?・・・ウソでしょ?」

△4九玉 ▲3九竜



「ええーー!来るの!?来ちゃうの!?」

△5八玉 ▲5九竜


まで、119手詰。

「来たーーーー!!!!」

初形で重要と思われた金のただ捨て。それを伏線にした馬ノコ。
忘れられたアイツによるたすき掛けの馬ノコ。そして最後のシンメトリー。
一編の物語が最後に美しい白鳥となって羽ばたいていきました。

・・・神。まじ宗看神。
偉大なる創造主にただただ平伏あるのみです。

宗看先生、素晴らしい作品をありがとうございました。

この第30番については、谷川先生も激賞しています。

「この作品は初めて見たとき、大変驚いたので印象に残っています。最初から最後まで、どこを取っても全く非の打ちどころがありません」

書籍では他の細かい変化も含めて丁寧に解説されていますのでぜひご参照ください。

と、いうわけで第30番、いかがでしたでしょうか?

私的にはこれと同じくらいの衝撃を受けたものが他にもいくつかありましたので、随時紹介できればと思っております。

さて、『図式全集 将棋無双』は現在予約受付中です。

しかも予約特典として抽選で谷川先生のサイン本が当たります。さらにゴールドメンバー(月額480円)になれば、抽選で谷川先生の「為書き付き」サイン本が当たります。

詰将棋の歴史に燦然と輝く神品。
ぜひご購入いただいて、その深淵に触れてみてください。
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