2026.03.19
『振り飛車Tips 少しの工夫で勝ちにつながる105の裏ワザ』レビュー
はじめに
今回は、2026年1月に出版された棋書『振り飛車Tips 少しの工夫で勝ちにつながる105の裏ワザ』のレビュー記事を書かせていただきます。
本書の著者は、元奨励会三段で、将棋講師としてもご活躍されている、アマチュア強豪の鈴木肇さんです。
YouTubeの「棋士中村太地将棋はじめch」で中村太地八段とタッグを組み、面白い企画の動画を我々に届けてくださっているので、ご存じの方が多いでしょう。
本書は、タイトルの通り、振り飛車のTips(知っていたら得するコツ)が紹介されている、次の一手問題集形式の棋書となります。
鈴木肇さん自身の熱い振り飛車への想いがまえがきで語られています。コラムも2本入っています。
本書の内容
目次を見ていただくと、どの戦型ついて解説されているのか、すぐに把握できます。
四間飛車編、中飛車編、三間飛車編の3章立てになっていて、各章はさらに居飛車側の対策ごとにテーマ分けされています。

どれも実戦でよく現れる戦型なので、本書を読めば実戦で役立つこと間違いありません。テーマごとに絞って読むこともできますので、苦手な戦型があれば、そこを重点的に読んでいくのもいいと思います。
テーマごとに局面を進めながら、問題が進行していきます。次の一手問題集ですが、脈絡のない局面が次々に出てくるタイプの問題集ではありません。
一問一問がつながっていますので、流れで覚えていくことができます。
特徴的なのが、四間飛車編の対天守閣美濃と中飛車編の角交換型について、かなりのページを割いて問題と解説があることです。
この戦型について詳しく書かれている書籍は少ないので、苦手意識がある方は本書を読むことをオススメします。
※記事の都合上、実際のページよりレイアウトを変更しております
「振り飛車Tips」というタイトルから、小技が羅列されている棋書をイメージする方もいるかもしれません。
しかし本書を読んでみると、実戦できちんと読みを入れて放つ本筋の一手が紹介されているという印象でした。
次の一手問題集は、ともすれば数時間でこなせるような書籍もありますが(よく言えばサクサク解ける)、本書はしっかり時間をかけて解き進めるタイプの問題集になるかと思います。
本書のすべての問題を解説を読みながらしっかり解いていくと、かなりの時間を要するでしょう(それだけ力がつくと思います)。
本書の難易度と対象読者
問題の難易度は高め(レビュワーの棋力はアマ三段程度)だと感じました。パッと問題を見て、すぐ答えが思いつく人は、かなり熟練の振り飛車党なのではないでしょうか。3手、5手読ませる問題も多いです。正解しようと思い詰めすぎずに、自分なりに読みを入れて解いてみて、解答と見比べるのがいいと思います。逆にいうと、難しいからこそしっかりこなせば力がつくと思います。
解説は変化も含め、詳しく記述されています。とても丁寧に書かれている一方で、きちんと盤に並べて勉強しないと道に迷うことになりそうです。ぜひ、盤駒を用意して並べながら勉強してください。
対象読者は、解説されている戦法である四間飛車党、中飛車党、三間飛車党の方になります。(中飛車の角交換型は触れられていますが、一般的な角交換振り飛車については触れられていません。)
対象棋力帯は、上級から有段の方向けといった印象です。初級、中級の方は、まずは基本的な戦法書を手に取って、振り飛車の基本的な戦い方を身につけるのが先かと思います。ある程度基本が身についてから、もうワンランクレベルアップするときに本書が役立つと思います。
印象に残った問題
面白い問題がたくさんあるのですが、1問だけ、本書の中から問題を紹介します。最初の方の問題ですが、四間飛車vs金無双急戦の局面から。
「後手が素直に応じると考えて」と注釈がありますが、5手先まで読んでみてください。あえて解答は載せないでおきますので、こういう問題を解いていくのが面白いなと感じましたら、本書を購入してみてください。
なお、素直に応じない場合についても次の問題で取り上げられています。
おわりに
今回は、『振り飛車Tips 少しの工夫で勝ちにつながる105の裏ワザ』のレビューを書かせていただきました。
振り飛車の基本ができていて、さらにワンランクレベルアップしたい方に、本書は特にオススメできるかと思います。
サクサク解ける問題集ではありませんが、その分、解いていくと、一手一手の奥深さに面白さを覚えるでしょう。振り飛車の魅力に取りつかれるであろう一冊になっていますので、振り飛車党の方はぜひ非手に取ってみてください。


