2009年に発行した「地図から消えた東京物語」が文庫になりました。
1986年(いわゆるバブル景気直前期)と現在の地図の比較で東京の変貌を知るというコンセプトで作られた本です。
新旧の地図の見比べの本は、江戸時代と現代、戦前と現代などは結構出版されていますが、1986年対2009年、その差23年、この一見中途半端に思える年数の比較本は本書が初めてでした。
(今回文庫化に際して2009年地図は2013年のものに差し替えました。)
これは1986年の水道橋、後楽園付近の地図です。
「後楽園球場」の北側に「雨天野球場建設中」の文字があります。
2年後にオープンする東京ドームですが、まだ名前も決まっていなくて仕方なくの「雨天野球場」表記、今見ると変な言葉ですね。
「雨でも野球の試合ができる屋根つき球場」といったニュアンスなのでしょうが、
今でこそ珍しくなくなった屋根つき球場がまだなかったこの頃の地図編集者の感覚がうかがえます。
この20数年という一見中途半端に思える年数の比較本が江戸時代の地図、戦前の地図との比較本と違う点は、多くの人にとって旧地図の時代の記憶がまだある、という点です。(一定年代より上の人ですが・・・。20代前半の方には1986年の記憶はないでしょう)
「近未来」ならぬ「近過去」。記憶にはあるけど今はもうない風景、 「ああ、こんな建物あったよな」「え、もうこのビルないの?」的な感慨にふける地図の楽しみ。 40~50代の方には特におススメです。 もちろん過去の東京と思ってしまえる若い方にも見ていただければうれしいです。