第2回前編 クラウドでインフラ基盤を設計・開発! 確かな技術力を身につけ、幅広い視野を。|Tech Book Zone Manatee

マナティ

エンジニアコンビに聞く! 技術のお仕事

第2回前編 クラウドでインフラ基盤を設計・開発! 確かな技術力を身につけ、幅広い視野を。

ITが社会にとって重要なインフラとなって20年。おかげで、最近では、元々ITに興味を持っていた人ばかりでなく、はじめてITの世界に飛び込むような方にも、就職先として選んで貰えるようになりました。しかし、一方で、「ITの仕事」が多様化し、「どんな仕事をするのか」見えづらくなっています。 本連載は、様々な若手エンジニアと、その周りの人に取材することで、「ITには、いろんな仕事があるよ!」ということを知ってもらう企画です。

第二回目は、日立製作所で、生命保険会社の基盤運用・保守にてクラウド基盤の設計や開発を担当されている鈴木航さんと、その先輩である村松さん、末次さんにお話を伺いました。 直接、間接にかかわらず、「技術の楽しさ」「憧れるエンジニア像」を伝える先輩達と、それをしっかりと見て学ぶ鈴木さんの関係が、日立製作所らしい感じがします。知識はもちろんのこと、技術との向き合い方を身につけられる現場であることが感じられます。
インタビュイーのプロフィール
●鈴木 航(すずき わたる)さん
株式会社日立製作所 金融第二システム事業部所属。
2017年4月日立製作所入社。入社後から現在まで生命保険会社のプロジェクトに参加。
新型商品開発プロジェクトにてミドルウェア構築、アプリケーションの負荷試験を担当したのち、支払業務高度化プロジェクトにてイメージ関連システムのミドルウェア設計・構築や、ジョブ設計・構築などを担当。その後チームリーダーとして活躍。基盤更改プロジェクトにおけるクラウド領域の設計・構築・テストや、基盤運用・保守における開発案件の推進、クラウド/OS領域の設計を担当。

●末次 亮(すえつぐ あきら)さん
チーフシステムアーキテクト(部長)。 株式会社日立製作所 金融第二システム事業部 金融システム第四本部 保険・共済ITイノベーション推進センタ所属。
1999年4月日立ソフトウェア入社。日立ソリューションズ合併を経て、2015年に日立製作所に転籍。
入社より生損保各社を中心に金融業界のシステム開発プロジェクトに複数従事。現在は生損保共済領域へのクラウドビジネスの推進と新技術を採用したシステム開発の支援する部署を管掌。

●村松 翔(むらまつ しょう)さん
主任技師(部長代理相当職)。
株式会社日立製作所 金融第二システム事業部 金融システム第四本部 第一部 第1G所属。
2011年4月日立製作所入社。入社より生保業界を中心に金融業界のシステム開発プロジェクトに複数従事。最近では基幹系システムのクラウド移行PJで基盤領域の統括を担当。他にもOA環境のゼロトラ化等、クラウド関連技術を活用したPJに多数参画。

職務と仕事の内容について

ニャゴロウ:現在、どのような職務で、どのような仕事をしているか教えてください

(以下鈴木さん)
現在の職務は、インフラエンジニアとして、基盤領域の設計、開発、およびテストをしています。中でも、お客様と連携し、システムの要件定義や設計を担当することが多いです。

具体的には、お客様のシステム基盤の保守作業に加えて、商品開発やサービスの拡大に必要な基盤の設計も行っています。最近では、クラウドシフト(オンプレミス環境からクラウドへの移行)への注目が高まっているものの、完全にクラウドへの移行が完了しているわけではないため、お客様の基盤はクラウド環境とオンプレミス環境の両方が存在していることが多いです。私は特にクラウド側の領域を担当しています。

株式会社日立製作所 金融第二システム事業部所属 鈴木さん

ニャゴロウ:「基盤の設計」 というと、ネットワークやサーバーなどの設計をされているということでしょうか。いつ頃からクラウドを担当されていますか。

入社してから4年目の頃、新しいプロジェクトがスタートしたのですが、そのプロジェクトではお客様のクラウドシフトを扱いました。そのプロジェクト以降、現在までずっとクラウドを担当しています。 クラウドベンダーは、Microsoft Azureを使用することが多く、資格も5つ※保有しています。資格の受験は、会社での支援制度があり、個人で受験すると受験料が嵩んでしまうのですが、会社が応援してくれるので、安心して複数の資格を取得できました。
※編集部注:
鈴木さんの保有資格は以下のとおりです。

・Microsoft Certified: Azure Administrator Associate
・Microsoft Certified: Azure Security Engineer Associate
・Microsoft Certified: Azure Data Fundamentals
・Microsoft Certified: Security, Compliance, and Identity Fundamentals
・Microsoft Certified: Azure Fundamentals
ニャゴロウ:私は、AWSの本を書いているので、ちょっと気になってしまうのですが、やはりクラウドは便利だなと感じますか?個人的な主観で良いので、クラウドを便利に感じたところを教えてください。

プロジェクトを進める中で、システムの多くをクラウドに移行しました。この変化により、開発スピードが非常に向上したと感じています。以前はサーバーの調達やラックへの搬入など物理的な作業が必要でしたが、今では画面上の操作だけで、標準のOSが搭載されたサーバーが簡単に立ち上がります。

現代では、新しい商品の開発と迅速なリリースが重要になってきています。お客様にとって、商品開発の速さが売り上げを伸ばす条件の一つです。そのため、お客様を支えるシステムにおいても、開発、テスト、リリースまでのサイクルを迅速化することが求められています。物理的な基盤では、調達が追いつかない課題や、テスト環境を用意する煩雑さがありますが、クラウドを利用することで、これらの問題を迅速に解決できるのが魅力ですね。
村松さんコメント:
鈴木さんは、はじめこそクラウド領域が中心でしたが、徐々に担当領域を広げており、現在はオンプレミス領域の一部も統括しています。そのため、オンプレミスとクラウドの良い点・悪い点を理解しながら両者の特性を活かしながら推進できていると思います。

株式会社日立製作所 金融第二システム事業部
金融システム第四本部 第一部 第1G所属。
主任技師 村松さん

やりがいや、楽しいこと、苦労すること

ニャゴロウ:仕事をするうえで、やりがいや楽しいこと、逆に大変なことがあれば教えてください。

自分が行った仕事が直接お客様に届き、感謝の言葉や信頼をいただける機会が多いことは、仕事の楽しさとやりがいの一つだと思います。

苦労したことと言えば、技術力がまだ自身に不足している状態で、お客様と打ち合わせしなければならないことがあって、「すいません持ち帰って回答します」という返事が多くなってしまった時期もありました。しかし、現在は技術力も追いつき、自分のことよりは、新しいメンバーや自分のチームのメンバーのスキル向上と育成に注力し、チームとしての価値を高め、効率的な動きを実現することに取り組むことが課題になってきたと感じています。
ニャゴロウ:さきほどからお話していて、資格の取得も含めて、しっかり技術を身につけておられる印象なのですが、そうした苦労の時代もあったのですね。
末次さんコメント:
鈴木さんはお客さまのシステムをより良いものにするためにエンジニアとして貪欲に技術を得て提案していこうという姿勢が見えます。エンジニアとしての技術力だけではなくお客さまと積極的にコミュニケーションを取っていることでとても良い関係を築けていると思います。
 

株式会社日立製作所 金融第二システム事業部 金融システム第四本部 保険・共済ITイノベーション推進センタ所属。
チーフシステムアーキテクト(部長) 末次さん

村松さんコメント:
鈴木さんは自身のチームメンバーを含めたステークホルダーとのコミュニケーションを重視しており、常に周囲と協調しながら仕事を進めています。そのため、顧客やメンバーからの信頼も厚く、それがさらによい循環を生み出していると思います。また、上司や先輩の仕事の仕方をよく観察しており、取捨選択しながら自身の仕事の仕方に取り込むことで、自分らしいリーダシップ・マネジメントができていると思います。
※編集部より:

記事は後編に続きます。後編はこちら

著者プロフィール

小笠原種高(著者)
小笠原種高(ニャゴロウ)
テクニカルライター、イラストレーター。
システム開発のかたわら、雑誌や書籍などで、データベースやサーバ、マネジメントについて執筆。図を多く用いた易しい説明に定評がある。綿入れ半纏愛好家。最近気になる動物は黒豹とホウボウ。

主な著書に、『仕組みと使い方がわかる Docker&Kubernetesのきほんのきほん』(マイナビ出版)、『図解即戦力AWSのしくみと技術がこれ1冊でわかる教科書』(技術評論社)など。