2018.03.22
アップルデバイスに搭載される、さまざまなテクノロジーを超ディープに解説!
読む前に覚えておきたい用語
10Gイーサネット(10Gbps Ethernet)
現在主流のギガビットイーサネットの10倍の伝送速度を持つネットワーク通信規格。光ファイバを伝送路に用いる10GBASE-R、同-W、同-X、同軸ケーブルを用いる10GBASE-CX、ツイストペアケーブルを用いる10GBASE-Tの3種類が規格化されている。ついにコンシューマーでも使える時代が来た。
10GBASE-T
10Gイーサネットのうち、1000BASE-Tなどと同じくツイストペア(UTP/STP)ケーブルおよびRJ-45(GG-45)コネクタを用いる方式を10GBASE-Tと呼び、IEEE802.3an規格として2006年に規格策定が完了した。1000BASE-Tに対して下位互換を持ち、オートネゴシエーションにより自動識別される。
マルチギガビット・イーサネット(NBASE-T)
10GBASE-Tの高速伝送技術をベースに信号の周波数を下げることで、従来のCAT-5eやCAT-6などの1000BASE-T環境のケーブルを用いて2.5Gbpsまたは5Gbpsの伝送を可能とする規格で、2016年9月にIEEE802.3bzとして標準化された。10Gイーサネットの普及の足がかりになるだろう。
iMacプロに採用された10Gイーサネットとは
2017年12月に販売が開始されたiMacプロには、ネットワークポートとしてMacでは初の10Gイーサネットが採用された。規格は2006年に策定された10GBASE-Tであり、従来のMacの1000BASE-Tの上位規格である。
Macには早くからイーサネットが採用されてきた。1986年に登場したMacintosh IIシリーズや同SEなどでは、すでに純正のイーサネットアダプタが用意されていた。本体にRJ-45のイーサネットポートが標準搭載されたのは、1995年に登場したPower Macintosh 8500/9500からで、10BASE-Tへの対応のみだった。1998年に登場した初代iMacで初めて100BASE-TXがサポートされ、2000年に登場したPower Mac G4(Gigabit Ethernet)で1000BASE-Tへと順次増速していった。それから約17年の間、Macはギガビットが標準であったが、ここに来てようやく10Gイーサネットへの対応を果たしたことになる。
実用化が遅れたのには、いくつかの理由がある。同規格の策定自体は、10年以上前に終わっていたが、実際のハードウェアの技術がその仕様に追いつくのに時間を要したことがその大きな理由の1つだ。
10GBASE-Tを実用化するうえで欠かせないのが、1000BASE-Tと同じ4対8芯のツイストペアケーブルでどのように従来の10倍の伝送速度を実現するか、という点だ。この問題を解決するため、10GBASE-Tには複数の技術が導入されている。まず、信号レベルには「PAM 16(Pulse Amplitude Modulation16)」が採用され、各信号の電圧レベルを16段階に階層化することで、1回の転送で4ビット分の送受信を可能とした。また、信号の変調方式には「128DSQ(Double Square QAM)」を採用し、1回2シンボルの転送で7ビット分の送受信を可能とした。そのうえで信号周波数を200MHzに引き上げて伝送速度を向上させた。これら3つの技術の組み合わせによって、4対のツイストペア信号線を用いた場合の伝送速度は11・2Gbpsとなる。しかしこのままではエラーレートが非常に高いため、エラー補正に強力な「LDPC(Low Density Parity Check Code)」を採用し、1723ビットのデータに325ビットのLDPC補正コードを加えて2048ビットとして伝送することで、最大100メートルの伝送距離を実用化している。しかし、皮肉なことにこのLDPCの採用が、10GBASE-Tの実用化を遅らせる原因の1つとなったとされている。
LDPCは極めて複雑な演算を必要とする処理であり、しかも10Gbpsの転送速度に見合うだけの演算速度を求められる。このため、10GBASE-Tのコントローラに求められる性能指標は非常に高く、そのチップコストや発熱量(消費電力)が実用化の壁となっていた。近年になって半導体プロセスの微細化が進み、発熱量が数Wレベルまで抑えられるようになり、チップ単価も下がったことでポート単価(1ポートあたりのコスト)を1万円以下に抑えることが可能になった。過去の例を見ても、100BASE-TXや1000BASE-Tが本格的に普及し始めたのは、やはりポート単価が1万円を切ってからのことだった。