2017.12.19
フリーライター・牧野武文氏が消費者目線でApple周りの事象を独自の視点で考察。
iOS 11になって、標準のカメラアプリがQRコードの自動読み取りに対応した。「なぜ、今頃QRコード対応?」と不思議な気持ちになった読者もいるのではないだろうか。しかし、世界ではQRコードが再びブレイクしている最中なのだ。アップルを始め、世界がなぜ今QRコードに注目するのか? これが今回の疑問だ。
どの店でも使える現金並みの利便性
QRコードが再ブレイクしたのは、中国でこの5年で急成長したQRコード方式のスマートフォン決済によるものが大きい。すでに年間の決済利用額は247兆円、日本のクレジットカードを含む電子決済額が5.6兆円なので、約44倍の規模に成長している。実際、中国に行くと、現金を使っているのは地方や海外から来た旅行者くらいで、市民はほとんどの決済をスマホで済ませている。
スマホ決済は、アリババが採用したQRコード方式の「アリペイ」と、テンセントの「ウィーチャット(WeChat)」ペイが普及していて、NFC方式の「アップルペイ(ApplePay)」は、この2強の牙城を切り崩そうとしているが、現在のところ、焼け石に水状態になっている。
なぜQRコード決済が中国では急激に普及をしたのか。それは、中国人が「スタバ以外、すべての店で利用できる」と言うように、ほぼすべての店で利用できる環境を構築することに成功したからだ。
電子決済普及の最大の障害は「この店で使えるかどうかを事前に確認しなければならない」というユーザ体験の悪さだ。日本のアップルペイもこの壁をまだ乗り越えることができずにいる。「お店にロゴシールが貼ってあるからすぐにわかるじゃないか」と言う人もいるだろうが、決済方式でお店を選ぶ人はいない。自分が立ち寄る店で使えたり使えなかったりすれば、面倒になって別の決済方式を選んでしまうものだ。
この点、今の日本でもっとも利便性の高い決済ツールは現金なのだ。現金であれば、「使える、使えない」を考えることなく利用できる。つまり、電子決済を普及させようと思ったら、現金に近い利便性の実現が必要で、アリペイとウィーチャットペイは、それに成功したことにほかならない。