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iPad+「カメレオンコード」の相乗効果で物流システムが変わる

文●牧野武文

シフトが2005年に開発した「カメレオンコード」というカラーバーコードが注目を集めている。iPhoneやiPadといったiOSデバイスと結びつくことで、これまでにない物流管理や資産管理、入退室管理などのシステムが可能となる。物流の現場での活用事例を元に、iPadとカメレオンコードがもたらす革新に迫ってみよう。

無限に使えるカラーバーコード




「カメレオンコード」は、シフトが開発した次世代カラーバーコードだ。商品に貼られているJANコード(1次元バーコード)、お馴染みのQRコード(2次元コード)、そしてRFID(ICタグ)に代わるコード認識技術として注目されている。「カメレオン」という名のとおり、カメレオンコードは4色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)に塗り分けられた四角が目印。1行に9個の四角(四角以外の場合もある)が並び、これが3行並んだものが基本パターンで、色の順列の組み合わせでコードを表す。
基本パターンでは、約7兆6255億コードを表すことができる。さらに行を追加する、追加色を使うとコード数を増やすことができ、現在提供されている「5行×5色」のパターンでは1237抒9400垓のコードを作成可能だ。これは地球の人全員に配っても、1人あたり約17京6848兆のコードを使えることになる(1人1日、1万個のコードを消費しても使い切るのに484億年かかる)。つまり、ほぼ無限に使えるカラーコードと考えていい。
カメレオンコードの特徴は、低コストで導入できる点にもある。コードは一般的なカラープリンタで印刷でき、読み取りにはWEBカメラやデジタルカメラ、スマートフォンのカメラが使える。リーダやライタに高額な専用機器が必要となるRFIDに比べて導入の敷居が低いうえ、30万画素カメラの場合、認識スピードはコード1個ならば0・05秒以内、複数一括認識(20個)でも0・07秒以内と高速。接写することなくカメラにコードをかざすだけで一瞬で読み取れる。
また、30万画素カメラで同じ距離から認識を行おうとした場合、一般的な2次元コードと比較すると266分の1の大きさで認識が可能であり、同じ大きさであればより遠くから認識が可能だ。斜めに傾いていても、遠く離れていても(カメラの性能によるが最長50メートル以上)、1ミリ四方のコードでも、薄暗い場所であっても…、カメラに一瞬でもコードが映れば認識される実用性の高さが魅力だ。
 

「個別コード」により物流の仕組みが変わる



カメレオンコードはさまざまな分野で利用されているが、中でも物流の現場における活用メリットが高い。ほぼ無限に使えるコードという特性を活かして商品ごとに個別のコードを割り振れるからだ。
例えば農作物で考えた場合、大きさや傷、品質など、同じ状態の商品は1つもない。店頭に1000個のメロンが並んでいても付いているコードはすべて同じJANコードであり、個体を管理する場合出荷時に何らか他のコードなどを付ける必要がある。稀に2次元コードが付いている場合があるが、認識しても出荷元のWEBサイトに飛ぶだけ。そこから個体番号を入力するなど面倒な作業をすれば固体情報を見られるものもあるが非常に面倒な作業である。一方、カメレオンコードの場合はそれぞれに個別のコードを付与でき、生産者が個体ごとに開示したい情報を紐付ければ、消費者に1アクションで表示させることが簡単に行える。
このような「個別コード」という特徴を物流の現場で活かしているのが、eコマース(主にアマゾン)への総合卸・小売業務を行うプリアップだ。アマゾンで販売されている商品の多くはアマゾンのバイヤーが直接買いつけているが、それ以外の(バイヤーの目には止まらない)商品を代行してアマゾンへ出品し、注文があった場合はアマゾンの配送センター経由で消費者に届けている。現在扱っている商品は約1万9000アイテムだ。
驚くのは、膨大なアイテム数とは裏腹に、プリアップの物流センターは街中の普通のオフィスビルの一室にあることだ。広さは、社員数20名ぐらいのオフィス程度。しかも、置かれている商品は少ない。
「朝、メーカーから配送されてきた商品は、数時間で仕分けをしてアマゾンの各地配送センターに送ります。少量多品種の商品(ロングテール商品)を取扱うeコマース流通においては、商品を回転させ、かつ一刻も早くお客様にお届けすることがもっとも重要な要素であり、むしろ商品をこの場所(物流センター)に滞留させてはならないのです」(同社代表取締役・明永敏悟氏)。
とはいえ、実際の仕分け作業は単純ではない。アマゾンからの発注は、「商品Aを○個と商品Bを○個、商品Cを○個を◯◯配送センターへ」という形で、1日に何件も入ってくる。注文書に従って商品をピックアップして箱詰めする必要があるのだが、メーカーは商品を箱単位で送ってくる。そのため、届いた商品を一度棚にカテゴリ別に分けるなどして整理し、作業員は注文書を見ながら手作業で一つ一つピックアップしていく。しかし、これでは棚の整理に時間がかかるし、スペースも取る、さらに作業員が「どの棚に行けばどのような商品があるか」ということを熟知していないと、作業効率が極端に悪くなってしまう。
 

iPadとの組み合わせによる大きな飛躍と相乗効果




そこで、プリアップはカメレオンコードを使ったピックアップ作業の効率化に乗り出した。商品1つずつにカメレオンコードを貼り、コードが見えるように棚に並べ、同時に配送先ごとに商品が並んだ注文書にもコードを印刷しておく。
こうしておけば、ピックアップ作業員は注文書に書かれたカメレオンコードをiPadの専用アプリで読み取り、次に商品が並ぶ棚の前でiPadをかざすだけでよくなる。注文書に書かれた商品がiPadのカメラを通して画面にハイライト表示され、すぐにどの商品をピックアップすればいいかがわかるのだ。そしてすべての商品をピックアップしたら、iPadの専用アプリを再びかざす。カメレオンコードが認識され、すべての商品が揃っていればiPad上に表示された商品名の脇にチェックマークが付き、揃っていない場合は警告が表示される。
この仕組みには、さまざまなメリットがある。まず、ピックアップ作業員に商品知識が不要になる。また、iPadを通して実際に目で見て確認できるのでピックアップの間違いも少ない。さらに、商品はカメレオンコードが見える状態で棚に置いておけばいい。「さらにiOSデバイス用に一般公開されているアプリを利用してコードにかざすと、発売元や販売元が提供する情報(商品の詳細や、キャンペーン情報など)を受け取ることもできるようになります。1つのコードで出荷現場での作業効率化だけでなく、商品プロモーション、コミュニケーションツールとしても利用できるのです。年内にはシステムを確立し、早い段階で商品点数を10倍に増やしたい」と明永氏は語る。
同じことはJANコードやQRコードでは行えない。いずれも接写しなければコードを読み取れないからだ。コンベア上に商品を流し、自動で読み取り、自動仕分けのロボットを導入する手もあるが、その場合は莫大な予算、広大なスペースが必要になる。物流というのは大量の商品をいかに効率的に配送するかという軸で進化をしてきた。しかし、現在では少量多品種をいかに効率的に配送するかも重要であり、商品1つずつの単位で管理できるカメレオンコードを使った新しい物流システムは、今後あらゆる場所で採用されていきそうだ。
プリアップの事例だけでなく、カメレオンコードの読み取りにはiOSデバイス(特にiPad)が多く使われている。認識にはカメラと認証システムを搭載したパソコンが必要となるが、高性能なiPadであればそれが1台で担えるからだ。また、端末のコストはパソコンよりも安価であり、携帯が容易であるため現場でも扱いやすい。さらに、カメラで認識したコードの情報が大画面に表示され、実際の商品(対象物)を見て確認できるというメリットもある。
これがノートパソコン+WEBカメラという組み合わせであったり、別途システムなどと連携させなければならない監視カメラや一般的なカメラであったら、カメレオンコードはまだ実用化を模索している段階にとどまっていたかもしれない。あらゆるビジネスの現場にフィットするiPadが登場したからこそ、大きな可能性を秘めていたカメレオンコードが花開き、その相乗効果でさまざまなビジネスの現場を変えているのだ。


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カメレオンコードはさまざまな紙やシール、カードなどに市販のプリンタを使って印刷することができる。サイズが0.5ミリ以下の極小のものでも認識可能だ。

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プリアップの明永敏悟代表取締役社長。メーカーから納品された商品のダンボールの山は一度箱からすべての商品を取り出し、区分けして棚に収納している(写真左)。作業員は棚を確認して実際に目で見て商品を1つずつピッキングしていくしかない。

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物流管理用に開発された専用アプリを起動した状態で、カメレオンコードが付いた注文書にかざすと一瞬で読み取られる。画面にはPO番号ごとにピッキングしなければならないアイテムが一覧表示される。

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カメレオンコードが貼られた商品に向けてiPadをかざすと、ピッキングすべきアイテムがハイライトされる。複数認識が可能なので、すぐに目的の商品を見つけ出せる。

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ピッキングしたアイテムに再びアイテムをかざすと、きちんと目的の商品が揃っているかを確認できる。コードが認識されると、一瞬で商品名にチェックマークが付く。

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子どもの遊び場を提供するビジネスを展開するアメイジングワールドでは、勤怠管理にカメレオンカードを利用している。タイムカードの代わりに置かれたiPadのカメラに、自分専用のコードをかざす。顔写真も同時に撮影されるので、部外者がなりすまし侵入しようとしてもすぐに発覚する。

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カメレオンコードはあらゆる商品に貼り付けることできるため、さまざまな活用用途が考えられる。例えば、図書館などにある本やマンガに貼り付ければ蔵書管理の手間を省き、入館者が本を見つけやすくなる。

文:牧野武文
『Mac Fan』2012年12月号掲載