変化を起こすことは常に正しくて|MacFan

アラカルト “M世代”とのミライ

変化を起こすことは常に正しくて

文●松村太郎

いまや世界唯一のアップル専門誌『Mac Fan』が、今号を最後に、月刊から隔月刊へ移行することは、すでに皆さんもご存じかと思います。そんな貴重な雑誌で巻頭のコラム連載を担当させていただいたことをとても光栄に思います。本連載は今号で最終回となります。これまでご愛読いただき、ありがとうございました。

ちょうどMacがアップルシリコンに移行してからスタートした連載ということもあり、“M世代”という新しい時代に、アップル、Mac、そしてテクノロジーが前提の社会について書いていこうという趣旨でお届けしてきました。

私は、24歳だった2004年に、大学院でブログの研究をしている過程で、テクノロジーとライフスタイルを軸に、モバイルとMacをテーマにした原稿を書く仕事を始めました。すっかり忘れていましたが、今年で私もデビュー20周年になっていました。

企業に就職するのが当たり前だった当時、エッジカルチャーで「デジタルノマド」という考え方に触れ、ノート型のMacを携えて「これさえあればなんとかなるんじゃないか?」と考え始めた時期でした。今でもMacを小脇に、そのままのスタイルで仕事を続けています。

この20年は、テクノロジーも社会全体も、本当にいろいろな変化がありました。

スティーブ・ジョブズが1996年に復帰して、モバイルとデスクトップ、通常モデルとプロという4つのセグメントに絞り、ティム・クックが在庫を数万代規模で廃棄したところから再出発したアップルは、当時助け舟を出してもらったマイクロソフトと、時価総額3兆ドルを挟んで切磋琢磨しています。

アップルの主力ビジネスは、2007年にiPhoneへと移行しました。これはテクノロジー業界のみならず、社会全体で、インターネットのモバイル化による革命を引き起こすきっかけとなりました。iPhoneに次いで大きな売上高を誇るのがアップストア(App Store)やアップルミュージック(Apple Music)といったサービス部門であることもまた、意外と知られていない、驚くべき事実です。

Macで言えば、PowerPCからインテルチップに置き換わり、2020年には再び自社設計のアップルシリコンが採用されました。1980年にジョブズが描いていたリモートワークとコラボレーションの環境を、人間が働ける時間よりも長いバッテリ持続時間で実現してくれます。そして、立ち遅れていたAIについても、Macにはすでにエッジ処理に優位性がある、とのメッセージを伝え始めました。

Z世代にとっては、これらがスタンダードであり、前提になっています。

裏を返せば、20年前からMacを見つめ追いかけてきた私も、昨年、創刊30周年を迎えた『Mac Fan』もまた、時代に合わせて変化し、その中でも輝ける存在を目指しながら、アップデートしていかなければならない、ということです。

あんなに巨大な企業だったアップルが、シンプルな思考と徹底的なムダの排除、今でいうDX(デジタル・トランスフォーメーション)を実行したうえで、顧客に提供できる価値となる競争領域をデザイン、プライバシー、環境配慮の姿勢と増やしてきました。

圧倒的に正しい行動をとり続ける集団をつぶさに見つめる瞳もまた、そうあるように努力していくべきです。そして変化を起こすことは、常に正しく、常にワクワクするもの。そんな気持ちを共有しつつ、新たな門出を一緒に迎えていきましょう。

 

昨年、創刊30周年を迎えた『Mac Fan』も、時代に合わせて常にアップデートを続けています。本連載をご愛読いただきありがとうございました。また近々お会いしましょう。

 

 

Taro Matsumura

ジャーナリスト・著者。1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒業後、フリーランス・ジャーナリストとして活動を開始。モバイルを中心に個人のためのメディアとライフ・ワークスタイルの関係性を追究。2020年より情報経営イノベーション専門職大学にて教鞭をとる。