【実機レビュー】大注目の完全ワイヤレスイヤフォン「WF-1000XM5」|MacFan

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【実機レビュー】大注目の完全ワイヤレスイヤフォン「WF-1000XM5」

文●折原一也

Mac・iPhone・iPadと使える新作アクセサリを徹底レポート!

WF-1000XM5

 

私が検証しました!
折原一也

大画面テレビやスピーカ、イヤフォンなど映像と音が専門のAVライター/評論家。ITはMac/PCを併用する自称中立派。YouTube「オリチャンネル」でもレビューを発信中。

 

[SPEC]
【発売】ソニー
【価格】オープン価格
【実売価格】4万1800円(公式オンラインストア価格)
【ドライバ型式】密閉ダイナミック
【ドライバユニット】8.4 mm
【重量】約5.9g(イヤフォン片側)
【連続音声再生時間】最大8時間 (ノイズキャンセリングオン)/最大12時間 (ノイズキャンセリングオフ)
【Bluetooth規格】5.3
【対応コーデック】 SBC/AAC/LDAC/LC3
【URL】https://www.sony.jp/headphone/products/WF-1000XM5/

 

 

エアポッズ・プロの対抗馬となる新モデル

「アップルユーザが完全ワイヤレスイヤフォンを選ぶなら、エアポッズ(AirPods)シリーズ一択!」と言いたいところですが、いまやそうとも言い切れません。9月1日に発売されるソニーの完全ワイヤレスイヤフォン「WF−1000XM5」(以下、XM5)の先代モデル「WF−1000XM4」(以下、XM4)が2021年に登場した際、その音質が高く評価されました。XM4とエアポッズ・プロ(第1世代)どちらを選ぶか悩んだユーザも多かったようですが、昨年秋にアップルからエアポッズ・プロ(第2世代)が登場したことで風向きが少し変わって…というのが現状でした。

そんな状況なので、XM5がアップルユーザの新たな選択肢になりうるのか気になりますよね。そこで、最新作のXM5と前世代のXM4、そしてエアポッズ・プロ(第2世代)の性能を細かく比較してみました。

 

デザインの再設計で25%もの小型化を実現

XM4に比べて、XM5が進化したポイントは多数あります。そのなかでも、特にインパクトのある進化点が“本体サイズの小型化”です。XM4は内耳を完全に塞ぎ、外耳からも大きくはみ出すサイズ感でした。今どきの完全ワイヤレスイヤフォンの中でもかなり大型で、一貫してスリムなデザインを採用するエアポッズシリーズとは対照的です。しかし、XM5では本体の体積が約25%ダウン、本体重量が約20%ダウンと小型化。実物を前にしても、その差がよくわかりますし、装着時の圧迫感も大幅に低減されました。

ここで、XM5の装着感をもう少し掘り下げます。本体サイズが小型化したため、外耳全体への収まりは良くなった一方で、内耳の密閉度はイヤピースに左右される度合いが高まりました。イヤピースはXM4から見直されてフィット感が増したほか、サイズも従来のS/M/Lに加えてSSが追加。XM5を使い始める際にきちんとイヤピースを選ぶことの重要性が高いですが、再設計のおかげでユーザ一人ひとりがより最適なサイズを選べるようにもなりました。

 

ノイキャンは本当に“世界最強”なのか?

XM5発表時に打ち出された謳い文句は“世界最高ノイキャン”でした。技術的にXM4と比較すると、内部プロセッサを2つに強化し、「統合プロセッサーV2」と「高音質ノイズキャンセリングプロセッサーQN2e」を採用しています。ノイズキャンセリングマイクも従来の4個から6個に強化することで、XM4に比べて20%ノイズを低減できるそうです。

実際に仕事用デスクでXM5を装着してみると、エアコンの騒音や屋外から聞こえる自動車の走行音をほぼ打ち消しました。ただ、低減効果はXM4と比べて少しアップした程度…。正直、「エアポッズ・プロ(第2世代)のほうがノイキャン強くない?」と思ってしまいました。たとえば、デスクトップPCが発する高めのファン音はエアポッズ・プロ(第2世代)のほうがよく消えています。

試行錯誤の結果、XM5の使いこなしのコツがわかりました。ポイントはやはりイヤピース選びで、僕がソニー製イヤフォンで普段使っているMサイズではなく、Lサイズに変更すると騒音低減効果が大幅にアップ。ただ、それでもXM5のノイキャンが“世界最高”と言い切れるかは疑問が残ります。電車内で三者を比較してみても、XM5はXM4より確実に騒音低減効果がアップしているものの、エアポッズ・プロ(第2世代)のほうが低~中域のノイズキャンセルは強力でした。ただ、エアポッズ・プロ(第2世代)は騒音低減時に音が多少歪むなど違和感が感じられ、ソニーのほうが自然だったので一長一短ですね。

 

iPhoneでも納得の高解像度サウンド

完全ワイヤレスイヤフォンを選ぶ際にもっとも気になるポイントは“音楽リスニング時の音質”ですよね。XM5はハイレゾワイヤレスコーデックのLDACに対応していますが、アップル製品は未対応。そのため、AACコーデックでサウンドを比較しました。

まずXM4とXM5を比べてみると、音質の差は歴然。J−POPを聴いたところ、XM5はより臨場感あるサウンドで、空間に浮かぶ歌声のクリアさやアコースティックギターの質感あるサウンド、パワフルかつ情報量のある低音と、さすがの一言でした。エアポッズ・プロ(第2世代)と比べても、XM5のほうが音の解像度や低音のパワーを感じられるなど、音質差は明らかです。

また、XM5は音楽リスニング以外の性能に関しても優秀でした。まず、エアポッズ・プロ(第2世代)は同一のアップルID(Apple ID)でログインしているアップルデバイス間の切り替えはスムースです。一方、XM5はマルチポイント接続に対応しており、接続切り替えなしで2台同時に接続可能。「私物のiPhoneで音楽を聴きながら仕事をしつつ、アップルIDでログインできない会社のMacやPCでビデオ会議を行う」なんてときも便利です。

XM5は通話マイクも進化しており、新たにAI(人工知能)によって高い精度で声を聞き分ける技術と骨伝導センサを搭載しました。実際に通話音質で調べてみると、XM4よりも大幅に音質が向上していて低い男性の声の質感もしっかり拾ってくれます。声をクリアに拾う精度はエアポッズ・プロ(第2世代)が極めて優秀ですが、声の質感の伝え方はXM5が優秀です。

音質とマルチポイント接続を最重視するなら、XM5は選んで間違いない1台ですね。

 

【POINT】前モデルやAirPodsと比較

WF-1000XM5(写真下)と、2021年に発売された前モデルのWF-1000XM4(写真中央)、そしてAirPods Pro(第2世代)。装着感がよいのはAirPods Pro、XM5、XM4の順番でした。

 

【POINT】小型化によりフィット感が向

XM5を耳に装着した様子。XM4の外耳いっぱいに収まるデザインが改良されて約25%小型化されているので、外耳の上下に余裕ができました。また、XM5はイヤピースを装着するノズルも長め。XM4と同サイズのイヤピースを装着しても、耳の内側にもやや余裕がある設計です。

 

【POINT】電車内でノイキャンをテスト

電車内で3モデルのノイキャン性能をテストしました。XM4と比べて、XM5は低域から高域まで自然に騒音を打ち消す効果が確実にアップしています。ただし、低~中域の騒音低減はAirPod Pro(第2世代)のほうが強力に感じました。

 

【POINT】iPhoneでも納得の高音質!

Apple Musicのロスレス音源を聴いて、XM5の音質をテスト。新開発のダイナミックドライバは、解像度アップと中低域の表現力に貢献していて、臨場感あるサウンドを楽しめました。音質に関しては、今回比較した3モデルのなかでXM5がもっとも優れていた印象です。

 

【POINT】通話マイクの音質も大幅アップ

Macと接続して、通話マイクの性能も比較しました。XM4とXM5を比較すると、XM5のほうが声の質感までしっかり拾えており、通話用マイクとしての音質も進化しています。ただし、人の声の明瞭さに関してはAirPod Pro(第2世代)が優れていました。

 

検証報告

□“世界最高ノイキャン”の売り文句は少々疑問。ノイキャン目当てなら、AirPods Pro(第2世代)を選んでも良さそうです。
□iPhoneで音楽を聴いたところ、なかなかの高音質だったので音質重視の方にオススメ!通話用マイクも十分高音質です。