「最短15分で診察から薬の配送準備」を実現したアプリの“仕組み”|MacFan

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「最短15分で診察から薬の配送準備」を実現したアプリの“仕組み”

文●朽木誠一郎

Apple的目線で読み解く。医療の現場におけるアップル製品の導入事例をレポート。

調子が悪いときに飲む薬なのに、病院にもらいに行くと1日がかりになる、なんてことも珍しくはない。そんな薬を、病院に行くよりも安く、かつラクに手に入れることができる「配薬アプリ」が、このほど登場した。既存の医療の枠組みを上手く“ハック”することで、医療資源の適正化まで目指すアプリの仕組みを紹介する。

 

 

処方薬を「安価に」「手軽に」

調子が悪いときに飲む薬。これは医師の診察が必要な「処方薬」と薬局やドラッグストアで購入できる「市販薬」に大きく分けられる。

同じ効果を表示している場合でも、成分や含量、効き方や効き目が異なったりするため、前者は医師や薬剤師による管理が必要であり、後者で完全に代用することはできない。

しかし、薬をもらうためにわざわざ病院を訪れ、診察を待ち、さらに薬局を訪れ、調剤を待つというフローは、忙しい現代社会に合わなくなっているのも事実だ。特に最近では、病院の診察の待ち時間が短くなっている一方、薬局によっては調剤の待ち時間が長くなっているという声も聞かれるようになった。

たとえば花粉症を患い、「市販薬ではあまり効かない」という人もいるだろう。ここでもう一つネックになるのは、基本的には処方薬というのは長期・大量には患者に渡されないということだ。もちろん、これは前述したように、専門家による管理が必要な薬剤であるため。医師は患者の状態の変化などを確認しながら、薬の種類や量を調整していく。処方薬が欲しいという患者側のニーズはあるが、頻繁に通院するのは現実的に難しいという事情もある。

こうした課題を解決し得るサービスが株式会社ユビキタス・メディカルズのアプリ「国医楽薬」だ。同アプリでは、オンライン診療の仕組みを上手く活用しながら、患者に「安価に」「手軽に」配薬することができるという。ユビキタス・メディカルズ代表取締役の森田昇氏と、開発に携わった同社の鈴木篤志氏を取材した。

 

 

2022年1月設立の株式会社ユビキタス・メディカルズ。最新のICTを利活用したデジタルヘルス機器やアプリケーションの開発を通じて、どこにいても最高の医療を誰もが享受できる社会の実現に寄与する。 [URL]https://www.ub-medicals.com

 

 

株式会社ユビキタス・メディカルズの代表取締役社長である森田昇氏(左)と、開発に携わった同社執行役員の鈴木篤志氏(右)。

 

 

自由診療を“ハック”する発想

なぜ処方薬を安価に提供できるのか。それは同アプリが「自由診療」による医療を提供しているからだ。

自由診療には、「高額」のイメージがあるだろう。実際に、効果の乏しい医療を高額で行うような問題のある医療機関も存在する。一方、同アプリはある意味で、この自由診療を“ハック(攻略)”しているともいえる珍しい仕組みを採用している。

自由診療の対になる概念は「保険診療」だ。保険診療では、健康保険により自己負担額を3割に抑えることで、患者への経済的な影響を軽くしている。一方で、そのために決まりごとも多くあり、それが一定期間ごとの通院だったり、1回の診察あたりの処方薬の量の制限だったりする。

自由診療であれば、この制限がなくなる。それにより、いわゆるジェネリックのような安い薬を、保険診療の制限量より多く処方することにより、全額負担になる市販薬や、3割負担の場合の処方薬(非ジェネリックで薬価が高いものなど)よりも、薬によっては安価に入手できる、というわけだ。

もちろん、疑問も浮かぶ。たとえば、多めに処方されることで過剰摂取につながり、健康上の問題はないのか。これに鈴木氏は「医師による用法・用量の説明(服薬指導)がある」「基本的に副作用の少ない薬を中心に取り揃えている」と答える。では、処方薬を多めに処方することで、薬不足などの問題は起きないのか。ここで実際には、ジェネリック薬は現在、種類によっては「余っている実情がある」(鈴木氏)。薬価が上げられず、またどうしても先発薬が選ばれやすいため、ジェネリック薬中心の製薬会社が経営不振に陥ったニュースも報じられた。言うなれば、市場に眠っているジェネリック薬を揺り起こすサービスでもあるのだ。

適正な用法・用量を守ること、目的外の薬の使用に注意することは不可欠だ。これについては後述するようなオンライン診療により、担当医師が各患者の状態をしっかり確認し、説明する、と鈴木氏は語る。

 

オンライン診療で自宅に薬が

「国医楽薬」の使用方法には4つのステップがある。アプリで薬剤を選択してから配送先選択までの所要時間は「およそ15分程度」(鈴木氏)と、病院で受診する場合と比べればかなり短い。

まずは処方を希望する薬剤を検索して選択、あるいは症状により提案される薬剤を選択する。自分が飲みたい薬の名前を把握している人はそう多くないだろうが、ナビゲーションによりそれをアシストしているという。

そして薬剤を選択したら、医師のオンライン診療の予約が可能になる。このように、薬ファーストな設計が同アプリの特徴だ。より待ち時間を短くするために、予約機能もあるが、予約が集中する時間帯は取りにくいそうだ。

予約時間になったら、アプリ内の診療室へ入室する。本人確認後、オンライン診療・処方がスタート。同アプリでは、厚生労働省のオンライン診療研修を修了した医師が診察を担当しているという。あらかじめ問診票やクレジットカード情報を入力しておけば、診療や服薬指導は5~10分程度で終わる。

オンライン診療が完了すると、最短で翌日には薬剤が専用の包装で手元に届く。ポストに投函されるので、届いたタイミングで不在にしていても受け取ることが可能だ

 

医療資源の適正化につながるか

病院に行けない」という理由のほかにも、たとえばEDやAGAといったそもそも病院に行きづらい悩みや、ピルやアフターピルなどセンシティブな困りごとに関連したニーズも多いそうだ。

このサービスにおいて、繰り返しになるが、適正な用法・用量を守ることが絶対条件になる。目的外の薬の服用などがあってはならないことは、サービスとしても強く意識していると森田氏は認める。そのうえで、こうしたサービスにより、「医療費の抑制や、休眠医師の発掘など、医療資源の適正化に寄与することができるのでは」と鈴木氏。

たとえば、湿布薬は近年、保険診療による処方の枚数が制限されている。2016年度の診療報酬改定時に「1処方につき計70枚まで」という制限が設けられ、2022年度改定では「1処方につき計63枚まで」とさらに枚数減に。一つの理由は、自己負担3割で薬局やドラッグストアよりも湿布薬が安く手に入るため、大量の処方を求める患者が多く、医療費の増加につながっていたためだ。

これを、自由診療の枠組みの中で、余っていて安いジェネリック薬に置き換えることができれば、まさに「三方よし」になる。また、診察を担当する医師には、出産や育児で現場を離れた女性医師も多いという。こうした仕組みにより、医師もまた、活躍の幅を広げられる可能性がある。そのためには、何よりも「事業を継続すること」を目指すと森田氏。同社の挑戦が日本に根づくまで、粘り強くサービスを提供していく、と語った。

 

 

「国医楽薬」は副作用が少ない100種類以上の薬剤から、患者が必要とする薬や、新たに使用を希望する薬を、手軽に安心して安全に入手できる配薬サービスだ。 [URL]https://www.dr-rakuyaku.com

 

 

まずはアプリから薬・症状を選択。処方してほしい薬を探すか、薬がわからない場合でも症状から選ぶことができる。医師と相談したうえで薬を選ぶことも可能。「今すぐ」か「日時指定で予約」により、医師とマッチングする。隙間時間が15分あれば予約までを完了できる。

 

 

薬を適正に選ぶためのデータを、専門家とともに整備。薬の基本情報はもちろん、併用してはいけない薬の情報や、服用してはいけない人の情報も記載されている。こうした情報は専門家のレビューを受けて掲載されているもの。

 

国医楽薬のココがすごい!

□最短15分で診察から薬の配送準備までがオンラインで完結
□病院を受診するより処方薬を「安価」「手軽」に手に入れられる
□市場に余剰のあるジェネリック薬などを自由診療で行き渡らせる