Macの標準導入と“究極のフリーアドレス”が叶える自由な働き方|MacFan

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Macの標準導入と“究極のフリーアドレス”が叶える自由な働き方

文●牧野武文

Apple的目線で読み解く。ビジネスの現場におけるアップル製品の導入事例をレポート。

Chatwork株式会社では、Macを業務デバイスとして一律採用することで導入コストや管理の手間を削減したほか、オフィスや自宅、同社で契約中のコワーキングスペースなどの中から、業務を行う場所を各自で選択することができる。無駄を削ぎ落とし、自由に働ける環境を実現できた理由を情報システム部門担当者の2名に伺った。

 

 

Mac導入で業務効率を改善

新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、ここ数年の間に多くの企業で導入されたのが「ビジネスチャットツール」だ。今年5月に新型コロナが5類感染症に分類されたことで、コロナ禍以前の出社スタイルに戻りつつある企業も多いが、オンライン上のコミュニケーションが廃れたわけではない。依然として、海外発のツール「グーグル・ワークスペース(Google Workspace)」や「マイクロソフト・チームズ(Microsoft Teams)」、「ズーム(Zoom)」などに加え、国産ツール「チャットワーク(Chatwork)」も人気が高い。「チャットワーク」は、チャットやビデオ会議、ファイル管理などの機能を備えており、導入企業数は中小企業を中心に39万7000社(2023年3月末日時点)を突破している。

その運営企業であるチャットワーク株式会社は、標準の配付デバイスを一律でMacBookに定めたことで、従業員の業務効率改善とともに情報システム部門の負担を大きく軽減することに成功した。同社のCSE部に所属する和田正人マネージャーは、Macを全社的に導入する理由について以下のように話す。

「もともとはウインドウズPCを業務デバイスとして採用していましたが、エンジニアからMacのほうが開発業務に適しているので導入してほしいと要望がありました。試しにMacを導入してみたところ、意外なほど導入がスムースだったこともあり、全社的なMacの導入に踏み切った経緯があります」

“導入のスムースさ”には、Macのモデル数が比較的少ないことが大きく関係している。ウインドウズPCの場合、数多くのメーカーやモデルを比較検討して選定する必要があるが、Macなら現行モデルとしてラインアップされているのは数種類かつ、各モデルのスペックや性能差もわかりやすい。たとえば、エンジニアやデザイナーには特に処理性能が高い14/16インチMacBookプロ、ビジネス職には比較的軽量な13インチMacBookエアを導入するなど、基本的に職種によって配付デバイスを振り分けている。

なお、常に最新のデバイスを使って業務効率を高めてもらいたいという理由から、同社ではデバイスを2年交換と定めている。これがウインドウズPCの場合、2年ごとに最適な機種を選定する必要があり、デバイスの手配や交換方法もメーカーによって異なる場合がある。

「それがMacであれば、調達の仕組みを変える必要はありません。ウインドウズPCに比べて、導入や管理を圧倒的に行いやすいのがメリットですね」(和田)

また、外部との書類のやりとりが多い従業員には、希望に応じてマイクロソフト(Microsoft)のオフィス(Office)ソフトを提供し、それでも問題が生じる場合はウインドウズPCを別途支給している。なお、現在のグループ従業員数は379名で、配付されているウインドウズPCは30台程度。それ以外はすべてMacを配付している。

CSE部は、MacとウインドウズPCをそれぞれ管理する必要はあるが、ウインドウズPCは特別枠扱いで台数も少ないため、管理の手間がかかる感覚はないという。MDMツールとして、Macには「ジャムフ・プロ(Jamf Pro)」、ウインドウズPCには「マイクロソフト・インチューン(Microsoft Intune)」と「ウインドウズ・オート・パイロット(Windows Autopilot)」を組み合わせることで、両デバイスともにゼロタッチキッティングを可能にしている。

 

仕事場所を自分で選択できる

同社は東京と大阪に拠点を設けているが、必ずしも出社して働く必要はなく、リモートワークが認められている。たとえば、同社のCSE部・コーポレートITチームに所属する苅谷直希チームリーダーは、もともと地元の岐阜県に近い愛知県の企業に就職していた。転職を思い立って「岐阜か愛知で仕事はありませんか」とSNSに投稿したところ、のちにチャットワークで上司になる人物が「チャットワークなら岐阜在住のままで働ける」と応じた。これがきっかけになり、苅谷氏は現在も岐阜県在住のままフルリモートで業務にあたっており、東京と大阪のオフィスには必要に応じて出張している。また、東京や大阪周辺から地方に移住した従業員もいるといい、地方在住の従業員は全体の10%程度に上っている。同社のリモートワーク制度について、苅谷氏は次のように話してくれた。

「部署ごとの業務内容や、その日の業務内容に応じて“それぞれが最適な場所を選んで働こう”という考え方が定着しています。たとえば“今日は集中したいから家で働こう”と在宅を選ぶ従業員もいれば、新しい業務のキックオフミーティングやブレインストーミングを行う際は対面のほうがコミュニケーションが取りやすいので、出社を選ぶ従業員や部署も多いです。また、自宅に小さなお子さんがいてビデオ会議中に子どもの声が入るのが気になる、もしくは自宅でないほうが集中できるなどの理由でオフィスや契約中のコワーキングスペースで業務する従業員もいます」

そのため、同社では自宅の業務環境を整えるための支援制度も設けており、入社初年度は15万円まで周辺機器やデスクなどの購入費用が半額補助される。また、同社はコワーキングスペースを契約しており、これを利用することも可能だ。

もちろんビジネス職など、東京や大阪周辺在住のほうが働きやすい職種も存在するが、多くの業務はリモートでも行える。この環境により、従業員がパフォーマンスを最大限発揮できるのはもちろん、大都市圏以外の優秀な人材を積極的に採用できることも重要だ。

 

ツールが場所の選択肢を増やす

そもそも、「チャットワーク」は最初から外部向けに開発されたツールではない。もともとは同社内でのコミュニケーションツールとして開発されていたが、その評判が次第にほかの企業に知れ渡った。すると、「うちも使いたい」と声が寄せられるようになり、2011年3月に正式リリースした。

同社では「チャットワーク」を開発した当初から“複数拠点のメンバーが円滑にやり取りできる、電子メールよりも利便性の高いコミュニケーションツール”として活用されていた。活用が進むにつれ、コミュニケーションの自由度がさらに高まり、どこでも働ける環境が構築されていった。こうして、既存の働き方に囚われない領域が徐々に広がった結果、現在の自由な働き方に結びついている。

しかし、同社は「この働き方をどの企業にも一律に広めたい」と考えているわけではない。同社は「すべての人に、一歩先の働き方を」をビジョンに掲げており、この“一歩先に踏み出す地点”が企業それぞれに異なることを冷静に捉えている。同社の役割は「それぞれの現在地から一歩先に進んでもらうためのお手伝いをする」ことだと考えており、まずは自らが体現するべく各部署が改善を続けている。それはコーポレート部門のCSE部でも同じだという。

「弊社の働き方は、これからもアップデートしていきます。今後より多様化していく社会の中で、なにが快適に働ける環境なのか模索し続けるということです。そのなかで常に最適で効率よく、セキュアな環境を提供していくのが情報システム部門の役割だと思っています。まずは弊社従業員が世の中や会社の状況に合わせて“一歩先の働き方”を実現できなければ説得力がありません。そのきっかけを作ることができる情シスの仕事にやりがいを感じています」(和田)

 

 

「Chatwork」は、チャットやビデオ/音声通話、タスク管理、ファイル管理などの機能を備えるビジネスチャットツール。シンプルな操作性で利用しやすく、“ITへの知識が豊富でなくても使いこなせる”ことを前提に設計されている。無料プランでもほとんどの機能を利用できるが、一部に制限も存在する。
【URL】https://go.chatwork.com/ja/

 

 

同社のCSE部に所属する和田正人マネージャー(右)とCSE部・コーポレートITチームに所属する苅谷直希チームリーダー(左)。和田氏は自宅で業務を行うことが多く、苅谷氏も岐阜在住のためほぼフルリモートで働いている。部署ごとに決められた範囲で、働く場所を判断できる。

 

 

対面のほうがスムースなブレストやキックオフミーティングなどを行う際は、参加メンバーがオフィスに集合することが多い。オフィスは“出社するための場所”というより“集まるための場所”という感覚で捉えられている。

 

 

同社で配付されているのは、原則MacBook Air/Proの2種類。Windows PCの場合、メーカーやモデル、スペックの選定作業が必要だが、Macは機能差が明確な数種類のモデルから選ぶだけで完結するのがメリットのひとつ。

 

Chatwork株式会社のココがすごい!

□Macを標準デバイスに採用し、導入/管理の手間を大きく削減
□業務ツールに「Chatwork」を活用し、働く場所を柔軟に選択できる
□居住地よりもカルチャーマッチやスキルを重視した採用を実現