野呂エイシロウの「ケチの美学」第29回|MacFan

アラカルト ケチの美学

野呂エイシロウの「ケチの美学」第29回

文●野呂エイシロウ

人気放送作家が語るケチとアップルの交差点。

会議という名のデートへ

先日、某大学で講義をした。

試しに「就職したくない人いる?」と学生に尋ねてみたら、なんと2割ぐらいの人が手を上げた。「できれば、今のままがいい」と答える学生もいた。「いい事だ」「君等は預言者だ」と思わず口にした。

ボクは近い将来、結構な数の仕事がなくなると思っている。今から110年ほど前、T型フォードの生産が始まったとき、たくさんの労働者が工場で働いていた。

でも、今はどうだろうか? 車はロボットが組み立てている。では、建設現場はどうだろうか? エジプトのクフ王のピラミット建設に携わった労働者の人数は2万5000人ぐらいだとも言われている。しかし、それ以上にでかい国立競技場に携わる人は、今ではそんなに多くないだろう。

農業もそうだ。江戸時代などは、せいぜい牛を使うぐらいで、人間が手作業で行っていた。今は、野菜工場などさまざまなテクノロジーで農作物を育てている。

そう、テクノロジーの発展は、仕事の効率をさらに良くしている。そして、AIが誕生していろいろなことが大きく変わろうとしている。自動運転が増えれば、タクシー運転手が要らなくなるかもしれないし、運送会社の役割も大きく変わるだろう。コンビニの無人化も時間の問題だ。キャッシュレスになれば、警備会社の仕事の内容も必然的に変わるだろう。

実は、ボクらは年を追うごとに働かなくても良くなっているのだ。

だから、そもそも「野呂は働いているのか?」と言われると疑問だ。

ボクが学生のとき、最初に働いたのは、コンサートのアルバイトだった。照明器具やセットを運び、言われたとおりに設置する仕事だ。でも、このような運搬作業は自動化されるに違いない。次に働いたのは、スーツの量販店だったが、そのうちロボットが接客するだろうと思う。

その後、ボクは学生企業としてさまざまな企画を考えたり、編集の仕事をしたり、ラジオで話したりしてきた。今も放送作家として番組の企画を考え、さらににコンサル業と称して、每日いろんなアイデアを考えている。それで笑える会議を毎日やっているだけだ。ボクが以前書いた会議の本のキャッチコピーは、『会議という名のデートに出かけよう』だった。

そう、ボクは每日8つ以上の会議に参加しているが、それは仕事というよりデートである。新しいアイデアで人々を口説くので、デートである。だから、毎回ワクワクしている。

そう考えると、ボクはすでに仕事というものをしていないのかもしれない。

AIやロボットが活躍する未来、人々はどうやって収入を得るのだろうか? コンピュータができないアイデアを出すことか。もしくは、ロボットに投資をすれば、その配当金がもらえるかもしれない。さらにいえば、ロボットが税金を払ってくれる時代が来るかもしれない。

よくわからないけど、幸いにもボクは今でも仕事しなくても生きていけている。每日デートの連続だ。

 

 

芝山さおりさんと愉快な仲間たち。セミナーに無理やり登壇させられました。苦笑。

 

 

EishiroNoro

放送作家、戦略的PRコンサルタント。毎日オールナイトニッポンを朝5時まで聴き、テレビの見過ぎで受験失敗し、人生いろいろあって放送作家に。「元気が出るテレビ」「鉄腕DASH」「NHK紅白歌合戦」「アンビリバボー」などを構成。テレビ番組も、CMやPRをヒットさせることも一緒。放送作家はヒットするためのコンサルタント業だ!と、戦略的PRコンサルタントに。偉そうなことを言った割には、『テレビで売り上げ100倍にする私の方法』(講談社)『プレスリリースはラブレター』(万来舎)が、ミリオンセラーにならず悩み中。