2019.07.02
スペシャリストたちのAPPLE CROSS TALK
二人のプロが語るSSD市場の現在
中尾●ライターとしてPC市場を長年ご覧になっていらっしゃる石井さんは、SSD市場の現状をどうご覧になっていますか。
石井●SSDは10年ほど前からコンシューマ向けに販売が始まりましたが、ここ数年で性能や容量がどんどん上がりましたが、価格は下がってコモディティ化していると感じますね。
中尾●たしかに発売当時は高価でしたよね。
石井●そうですね。贅沢品でした(笑)。しばらくはHDDが主流でしたが、今は小容量から中容量に関してはSSDがメジャーになりましたね。
中尾●MacBookをはじめ、ノートPCについてはもうほとんどSSDですからね。今後はデスクトップもどんどんSSDになっていくでしょう。最近のMacはSSDの換装ができませんが、弊社のSUNEAST製品には外付けとの両用で使えるものがありますので、用途に応じて使い分けていただくことができます。
石井●それは便利ですね。私は初心者の方にもSSDをおすすめしたいと思っています。HDDに比べて、SSDには利点しかありませんから。
中尾●具体的にどんなところがメリットだと思いますか?
石井●まず故障率がHDDに比べて低いですよね。HDDはどうしても物理的に円盤を回転させて書き込みと読み出しを行うので衝撃には弱いです。SSDは半導体ですから衝撃にも強いし、消費電力も低い。
中尾●仰るとおりですね。
石井●その点ではSSDのほうが管理しやすいメリットもありますよね。SSDの寿命は書き換え回数で決まりますから、いつごろ交換すればいいのかが予測しやすいと言えます。大容量ですとHDDのほうがまだ容量あたりの単価は安いのですが、技術の進歩により近い将来、必ずSSDのほうが安くなるでしょう。すでに256GBくらいならHDDよりSSDのほうが安いですからね。
中尾●120GBなんて、この半年で半値くらい下がりましたよ。原価ベースでいうとびっくりするくらい安くて、もうこれ以上は下がらないところまできていると思います。
石井●どんどん安くなっていますよね。しかも、旭東エレクトロニクスさんの製品は品質がしっかりしているのに他社に比べてもさらに安価ですよね。正直、本当に儲かってらっしゃるのか心配になるくらいです(笑)。
中尾●おかげさまできちんと利益は出ていますよ(笑)。組み込み法人様の要望にお応えするため、高い品質を保ちながらコストダウンに力を入れており、結果コンシューマ向けの店頭プライスが安くなっているんです。
高品質な製品を安価に造れる理由
石井●ああ、そうでしたか。アキバなどのショップで一般販売されているほうが特殊なケースだったんですね。
中尾●組み込み向けが95%以上といっていいですね。法人様からは一度に多くの発注をいただくので、その分コストを抑えて生産することができるのです。
石井●ラインナップがすごく豊富なのもそれが理由ですか?
中尾●はい。弊社では120GB、128GB、そして250GB、256GB……と、かなり小刻みにラインナップをそろえていますが、これも法人様からのオーダーがあるからですね。
石井●一般のユーザからしてもラインナップが豊富なのは嬉しいですよね。しかも、日本プロデュースブランドですから、安心感があります。
中尾●自社設計で信頼できる工場にラインを持っていますから安定して生産ができますし、何か問題があってもすぐに改善できるのが強みです。そもそも、品質がしっかりしていないと法人様には取り扱っていただけませんからね。
石井●そのお答えが聞けて納得しました。SSDメーカーはとにかくプレイヤーが多くて、ユーザとしても本当に信頼できるメーカーの選び方を知りたかったのです。中尾さんのお答えで安心したユーザもかなりいるのではないでしょうか(笑)。
中尾●それならよかったです(笑)。
石井●ただ、法人向け故に大変なこともあるのでは?
中尾●そうですね。やはりまとめて発注されるお客様が多いので、お待たせしてしまう場合もあります。もちろん、先々の需要を予測して生産するのですが、一回の発注が五千個や一万個になることもざらなので、在庫が切れてしまうこともあるのです。
石井●そういう場合はどれくらい待つことになるのですか?
中尾●遅くて5営業日ほどでしょうか。商社系やOEMではなくメーカーですので早くできます。
石井●えっ、たった5営業日ですか! 1カ月くらいかと思ったらそれくらいなんですね! 生産ではなく製造に苦労することはありませんか?
中尾◦それは正直、ありません。不良率もかなり低いです。不具合の報告があっても、調べるとSSDではなくPC側に問題があるというケースのほうが、実は多いのです。
今後は技術の進歩で低コスト化と大容量化
中尾●逆に石井さんはお仕事での苦労話はありますか?
石井●仕事柄、SSDをレビューすることも多いのですが、旧モデルと新モデルを比較して旧モデルのほうが性能が出てしまうと困りますね(笑)。むろん捏造はできませんから、何度もやり直して確認することもあります。
中尾●今後、SSDはどのように進化していくとお考えですか?
石井●SSDはこの10年で飛躍的な進化を遂げました。おそらく、ここから先の10年も大きく進化するだろうと思います。容量あたりのコストはさらに下がり、大容量化が進むでしょう。
中尾●私も同意見です。現在はQLCという技術に注目しています。
石井●メモリのセル一つに4bitのデータを記録できる技術ですね。
中尾●はい。現在はTLCという技術が主流ですが、QLCのほうが低コストで大容量化しやすいので、今後はQLCがメインになっていくだろうと思います。現在はまだ耐用年数などに不安があるため弊社は製品化できていませんが。
石井●それは時間が解決しそうですね。
中尾●TLCが出てきたときも耐久性に不安があるといわれていましたが、今は完全に主流になっていますからね。
石井●それが技術の進歩ということなんでしょうね。今後、SSDに代わる技術も出てくるのでしょうか。
中尾●ポストフラッシュ的な技術も少しずつ出てきてはいますが、SSD自体の性能も向上していますから、まだまだSSDが主流であり続けるでしょう。
高級感漂うブラッシュドアルミ仕上げのおしゃれでスリムなスタイル。6色カラーが楽しいポータブルSSD「SUNEAST S9」。500GBと1TBをラインナップし、インターフェイスにUSB3.1 Type-Cを採用した、性能も申し分ない実力派。今夏発売予定。
中尾秀樹
大阪に本社をおく株式会社 旭東エレクトロニクスの本社営業部セールスマネージャー。同社はメモリ・ストレージなどのPCパーツ及び周辺機器の開発、製造、販売を行っている。【URL】https://sun east.co.jp/
今後もMac/iPhone/iPad向け新商品をどんどん企画しているので、ぜひともSUNEASTのホームページをチェックしてみてください。今回発表できなかった新製品が掲載されているかもしれません(中尾さん)。【URL】https://suneast.co.jp/