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ノーマル四間飛車特集「教えて!大介先生」

  皆さんこんにちは。将棋世界の下村です。年の瀬を迎え、どのようにお過ごしでしょうか。クリスマス~年末年始ももうすぐですね。予定がある方もない方も、まとまった休みは、ぜひ将棋世界でお楽しみください。現在発売中の1月号では、戦術特集として「ノーマル四間飛車」を特集しました。なんといっても角道を止める四間飛車は、昭和から今日までアマチュアには根強い人気を誇る振り飛車の王道です。流行に左右されるのもいいですが、美しい美濃囲いと飛車角のバランスのよい配置は、他の戦法にはありません。

 今回のチョイ見せは、鈴木大介八段と中村真梨花女流三段の四間飛車対談を紹介します。両者ともいわずと知れた四間飛車の使い手です。今回は対談と言っても視点を変えてみました。読者を代表して真梨花女流が生徒役になって、講師の鈴木八段に四間飛車の疑問を質問していくという、斬新?なスタイルです。タイトルは「教えて!大介先生」です。



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四間飛車の基本的な考え方から、指しこなすコツ、そして鈴木八段が選んだ名局を紹介してあります。皆さんも生徒になったつもりでお楽しみください。


─女流棋界で四間飛車の使い手といえば中村真梨花女流三段です。
真梨花 女流棋士になる前から指してきたので、愛着のある戦法です。振り飛車の中でもバランス感覚に長けているところが好きですね。アマチュアの方からも
「私も四間飛車が好きなんです」とよく声を掛けられますが、うれしいですし、励みになります。私はこれまで四間飛車がなければ、ほとんど指していないようなものです(笑)。

─ほぼ四間飛車一本で戦う姿勢について、鈴木八段はどう思いますか。
鈴木 すばらしいことですね。私もデビューした頃は四間飛車一本でしたが、時代の流れや流行戦法があって、いまはいろいろ指しています。棋士の中でも少数派ですし、プロとしての矜持があっていいと思います。四間飛車ファンにとっても、応援しがいがありますものね。
自分の好きなことができる
─それでは真梨花女流三段が読者を代表して、四間飛車に関する疑問を鈴木大介八段に質問していきます。
真梨花 鈴木先生、よろしくお願いします。まずは四間飛車の出だしは角道を止めますが、最近は止めない角交換系も流行しています。違いを教えてください。
鈴木 角道を止めないで戦うと、いつでも角交換から打ち込みに気をつけないといけません。力戦調なのでせっかく覚えた形にもなりにくいですね。また、初心者の方は王手をウッカリしたり、大駒をタダで取られたりと、流れ弾に当たりやすくなり、すぐに決着することもあります。その点、角道を止めておけば角交換にならないので、しばらくは戦いが起こりません。安全に玉を囲えますし、そうなれば序盤、中盤、終盤と、勝敗はともかく一局を十分に楽しめます。私はアマチュアの方に「強くなるにはどんな戦法を勉強するのがいいですか」と聞かれることもありますが、居飛車だったら棒銀、振り飛車だったら角道を止めるノーマル四間飛車を、迷わずおススメしています。
真梨花 やはり自分のペースで戦えることは、大きなポイントですね。
鈴木 ただしノーマル四間飛車にはデメリットもあります。藤井システムのような攻撃形なら別ですが、普通に玉を囲い合えば、居飛車側にも存分に組まれてしまうことです。相居飛車戦は序盤から相手の手を殺し合う駆け引きがありますがその点、四間飛車はおおらかなのです。
持久戦は歓迎
真梨花 プロの公式戦では、昔ほどノーマル四間飛車は指されていません。居飛
車穴熊をはじめとする持久戦には、やや苦しいと見られているのでしょうか。

鈴木 ゴキゲン中飛車や力戦など、振り飛車も多様化している部分はありますが、ノーマル四間飛車が戦法的に苦しいとは思いません。いまは四間飛車には持久戦が主流ですが、個人的にはむしろ歓迎しています。それは指したい手を指して自由に駒組みができるからです。実は私は対急戦のほうが苦手です。なぜなら美濃囲いに組んでも仕掛けられてしまい、それに対応する手を指すので、自由な指しまわしができなくなるからです(笑)。
真梨花 四間飛車の天敵といわれる居飛車穴熊ですが、組まれると正直「ムカッ」ときませんか。
鈴木 私は真梨花さんのように藤井システムを指さないので、居飛穴に組ませて戦う派ですが、駒組みをじっくり考えながら指すのが楽しみですね。急所さえ押さえておけば穴熊も崩れますし、必要以上に怖がることはありません。
真梨花 私が四間飛車を指し始めたのは藤井システムが出た頃で、居飛穴に対しては押していた時期でした。当時から居飛車党が相手なら、穴熊を狙うのが普通だと思っていたので、私も特に感情的になることはありません(笑)。
鈴木 いまはアマプロ問わず穴熊ありきの時代ですので、組まれてもイライラせずに、のんびり指すことが大事ですね。
真梨花 鈴木先生は急戦が苦手と言いましたが、私も急戦は苦手です。
鈴木 最善を尽くせば、4五歩(6五歩)早仕掛けと棒銀は、居飛車が互角以上に戦えると思っていますが、いつの間にか廃れていきました。4五歩早仕掛けは私の若手時代の頃は、仕掛けをまともに受けていたのですが、いまは▲5六銀~▲4五銀(第1図・便宜上先後逆)の玉頭銀が有力で、四間飛車側も十分戦えます。急戦は玉が薄く、有利になっても勝ちづらいという側面があるので敬遠されがちですが、いまはプロの終盤力も上がっているので、いずれは急戦全体が見直される日がくるかもしれません。



わがままな人が向いている
真梨花 四間飛車はどういう性格の人が向いていると思われますか。
鈴木 好きな手を指したいというわがままな人ですね。私は美濃囲いから銀冠まで組めれば、すぐに喜んでしまいます。真梨花さんの藤井システムもそうですが、ノーマル四間飛車は自分の指したいように指すのがいちばんです。あとは楽観的な人もいいでしょう。細かいことを気にしすぎないで駒組みが済んだら、合戦の鎧武者の一騎打ちみたいに、名乗り合ってから戦う呼吸です(笑)。
真梨花 私はすぐに局面を悲観してしまいますが、四間飛車は序盤で圧倒的によくはならないものの、悪くもなりません。相居飛車では1手がすぐに勝敗に直結するので、それを嫌がる人は四間飛車が向いているのかもしれません。それと鈴木先生が言うように、自分が好きなように指せるというのも大きな魅力ですね。


銀損でも飛車を成れば勝ち!?

真梨花 アマチュアでは四間飛車が、昔もいまも変わらぬ人気戦法です。
鈴木 プロは居飛穴に組まれると、主導権を握られやすいので勝ちにくいのでしょう。持ち時間の短いアマチュア大会なら、穴熊云々よりも、一局を通じて先に悪手を指したほうが負けやすいと思います。それと四間飛車は駒組みが簡単で、プロもアマも途中まではだいたい同じです。序盤を間違えずに進められることも、支持されている部分でしょう。
真梨花 四間飛車を指すときの心構えを挙げるとしたら、どんなことでしょうか。
鈴木 おおらかな気持ちで指すことです。私がアマ有段者の頃は、とりあえず美濃囲いに組んで、銀損しても飛車が成れれば勝ち!くらいなイメージでした(笑)。なので中盤は、飛車を敵陣に成ることを意識して指すのがいいと思います。
世紀末四間飛車が下地に
真梨花 四間飛車は、誰の将棋を勉強しましたか。
鈴木 初級者の頃は、師匠(大内延介九段)のツノ銀中飛車が初めて覚えた振り飛車でした。アマ初段くらいから四間飛車を覚えたのですが、その頃は森安先生(秀光九段)の将棋を並べました。粘着流のイメージですが、盤面制圧の勝ち方は参考になりました。そして奨励会に入ってからよく並べたのは小阪先生(昇七段)です。軽いさばきが勉強になりました。あとは櫛田先生(陽一七段)の世紀末四間飛車もよく並べていて、私の四間飛車の下地になっています。
真梨花 四間飛車はもう指したくないと思ったことはありますか。
鈴木 プロになって研究に行き詰まるとそう思うときがありましたが、戦法が悪いわけではなく、結局は自分が悪手を指して負けることが大半です。四間飛車の大きな味方は、なんといっても美濃囲いです。その囲いの堅さには何度も助けられたこともあるので、四間飛車が嫌いになったことは一度もありません。

と残念ながら掲載はここまでです。このあとは本誌をご覧ください。1月号は対談のほかにも講座、自戦記、次の一手と盛りだくさん。他に羽生三冠インタビューと、新春なので豪華な読者プレゼントもありますので、どしどしご応募お待ちしております。編集部では現在2月号を制作中です。年末発売ですのでこちらもお楽しみに。




 
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