雨宮編集長のコゴト@上田初美の横歩取り|将棋情報局

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雨宮編集長のコゴト@上田初美の横歩取り

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寒のもどりが思いのほか強く、厚手のシャツや、発熱下着などを駆使してしのいでいます。みなさまも、くれぐれもご自愛くださいませ。

冷たい雨が降った7日。マイナビ女子オープン五番勝負が聖地・陣屋で始まった。野暮用に追われる筆者は、ゆったり終日観戦というわけにもいかず、せめて対局開始だけでもと思い、当日の朝に陣屋に足を運んだ。
対局室では谷川浩司会長の後ろに座って、駒を並べる対局者をじっくりと見た。加藤桃子も上田初美も、タイトル戦慣れしているだけあって、和服姿もさまになっている。振り駒で加藤桃子が先手になった。

▲7六歩△3四歩▲2六歩に、ほとんど間を置かず△8四歩。対局室の空気が少し揺らいだ気がした。

マイナビ女子オープン創設前、週刊将棋ではレディースオープン・トーナメントという棋戦を主催していた。筆者は何年か担当として張り付き、女流の将棋を見ていた。

そのころの上田初美は、丸い大きなメガネがトレードマークの少女だった。振り飛車穴熊を振りまわす駒音は高く大きく、当時は山田久美、石橋幸緒とともに女流駒音三羽ガラスとひそかに呼んでいた。残念ながら目立った活躍はなく、たまに何かの片鱗を見せるくらいの存在だった。

後日のインタビューなどによると、悩みが大きい時期だったらしい。ふっ切れてからは、着実にトップクラスへ近づいていった。必勝の将棋を落としたときの「髪の毛が全部抜けそう」というコメントは、筆者一番のお気に入りだ。

加藤桃子との開幕戦。横歩取りは得意戦法ではない。中盤まではうまく進めていたが、最後はちぎられた。中住まいで△5五歩と伸ばした形はいかにも危なっかしく、陣形の勘どころを知っている穴熊戦とは大違いだった。

しかし、筆者は「頼もしい」と思った。タイトル戦を得意とはいえない戦法で戦うことは無謀かもしれないが、今回が最後のチャンスだなんて思っていない証拠でもある。まだトップクラスとしては駆け出しの上田初美には、小さくまとまってほしくない。

チャレンジマッチ、奨励会員の参戦、スポンサー制度…
レディースオープン担当時代に「やってみたい」と思っていた事は、ほぼすべて実現した。女流棋士がどこまでレベルアップできるか、今期の五番勝負がその指標になればと思う。
 
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