雨宮編集長のコゴト@段持ち|将棋情報局

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雨宮編集長のコゴト@段持ち

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「ご趣味は?」
「将棋を少々やっております」
「それでは段をお持ちですか」

 こんな会話の経験は、多くの将棋ファンにあるのではないでしょうか。将棋の世界をあまり知らない人にとって、「段持ち」かどうかは分かりやすい目安なのです。おそらく、初段か四段かは関係ありません。級から段へのハードルを越えているのかどうか、大げさにいえば素人か達人かの境目としてイメージしていると思います。

 段級位制度は幅広い分野で採用されています。武道の世界では馴染み深いものですね。ご存知のように柔道では初段になると黒帯が締められるので、有段者と同義の言葉として「黒帯」が使われたりするようです。
 ほかにも書道や算盤、かるたやけん玉でも使われています。技能検定の分野では、級のみが使用されているのでしょうか。公的な資格として通用するものも少なくありません。

 そもそも「段」は江戸時代に囲碁の世界で始まり、やがて将棋界にも導入されたようです。上からの格付けですから権威の象徴みたいなものですが、手合い(ハンデ=駒落ち)の目安になりますし、分かりやすい目標として励みにすることもできます。合理的な意味があったからこそ浸透し、現在まで続いているのでしょう。

 ご承知のように、段位は必ずしも現在の実力を反映するものではありません。勝ち続ければ昇段しますが、一部の例外を除けば負け続けても降段することがないからです。そのため、「段」を形骸化した制度と思う人もいるでしょう。
 実はプロでもそう思った人たちがいるのです。第2次世界大戦が終わり、将棋界が復興に向かおうとしているころです。順位戦創設と同時に段位を撤廃しようという動きがありました。それがなんと、当時の棋士総会で可決されたのです!
 順位戦でプロ棋士がランク付けされるわけですから、実力をあらわすのものとしての段位は無用、という考え方です。敗戦でさまざまな「日本的なもの」が否定される風潮の中で、将棋界も社会の流れと無縁ではなかったということなのかもしれません。
 実際には完全撤廃には至らず、順位と段位の併用ということに落ち着いたようです。やはり抵抗感が強かったのでしょうね。

 筆者も若いころは段位よりレーティングなどのほうがいいと思っていました。前述のように、古い権威の象徴のようなイメージがあったからです。四段、五段の若手が八段、九段をなぎ倒すプロ棋界を目の当たりにしていたので、何のための「段」だ!と考えても無理はなかったと思います。

 でも、今はちょっと違います。もっと大らかに考えたほうがいいんじゃないかな。
 棋力はもちろん重要な要素ですが、それだけで将棋界が成り立っているわけではありません。教える人、お金を出す人、場所や道具を提供する人、などなど。さまざまな人がそれぞれのスタンスで将棋界を支えています。
 そういったものも含めて、将棋界への貢献度を表す「段」として機能すればいいんじゃないか。そんな風に考えるようになりました。そもそも、誰が一番強いか、どっちが強いか、なんてことは成績をみれば明らかですからね。

 ところで、冒頭に出てきた「段持ち」という言い方。この業界内では、聞いたことがありません。免状を持っている持っていないという話なら分かりますが、「段」を「持つ」という言い方はとても違和感があります。武道の世界では普通の言い方なのでしょうか。

 確かに「資格」や「免許」は「持つ」と言います。ひょっとしたら、そこから派生した言い方かもしれません。だとすれば、一般的には「段」も資格や免許の一種と思われているのでしょう。
 現実には「段」が資格や免許として機能することはありません。基準もあいまいです。個人的には、普及活動のためにはとても重要な課題だと思っています。
 
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