新刊案内「矢倉名局集」 ~大山先生は矢倉もマジ強い~|将棋情報局

将棋情報局

新刊案内「矢倉名局集」 ~大山先生は矢倉もマジ強い~

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 こんにちは。
ピザトーストにどれだけチーズを乗せられるかに挑戦している編集部の島田です。

もういくつ寝ると、4年に1度しかない2月29日、というわけで本日はそれにふさわしいメモリアルな新刊案内いきます。

3月24日発売の新刊「将棋戦型別名局集3 矢倉名局集」です!!





本書は将棋の戦型別の名局を100局集め、解説付きで収録した「将棋戦型別名局集シリーズ」の第3弾で、矢倉を扱ったものです。

若き日の大山康晴十五世名人から現在の羽生善治名人まで。
▲3七銀戦法以前、▲3七銀戦法、急戦・早囲い。
歴代の大勝負の中心に常に存在し続けた矢倉の名局を第一人者である高橋道雄九段の詳細な解説で堪能できる一冊となっております。

矢倉は有名な対局が多すぎて、どれを紹介するか迷うんですが、今日は本書の2番目に収録されている第12期名人戦第2局▲大山康晴名人―△升田幸三八段を取り上げたいと思います。

この2期前の第10期名人戦は木村名人と升田先生によって争われ、4勝2敗で木村名人が防衛。
打倒木村名人に闘志を燃やす升田先生でしたが、第11期名人戦で升田先生との挑戦者決定戦を制した大山先生が、4勝1敗で名人を奪取します。有名な「よき後継者を得た」ですね。


そして、続く第12期に大山名人の挑戦者となったのが升田先生でした。

高橋先生のリード文を読んでみましょう。

====================================
兄弟弟子の升田と大山。新時代の覇者となるのは? 激しい舌戦も繰り広げ、打倒木村に情熱を注いできた升田。第1期王将戦では、それを具現化させたものの、名人奪取を弟弟子に先を越されてしまい、その大いなる目標だった木村が戦いの場から去った。升田の胸中たるや、いかがなものだったか。
====================================

この第12期名人戦。第1局は大山先生の勝ち。迎えた第2局は、こんな感じの矢倉に進みました。





今の矢倉とだいぶ違います。こうやって腰掛け銀にして、あわよくば▲5六銀~▲6七銀として銀矢倉にするのが大山先生の得意戦法だったようです。

それにしても角が使いにくそうです。どうやって使うんでしょうか?

この後の進行を見てみましょう。





大山先生は5筋を突いて、升田先生は△3一角~△4二角~△5一角~△7三角として角を使いました。ただ、高橋先生の解説によると、この局面は先手陣のほうが伸び伸びしていてちょっと指しやすいとのこと。確かにそんな気もします。

ここで普通は▲6六歩~▲6七金ですよね。金銀が密集していかにも大山先生っぽいですが、本局は違います。

大山先生の指し手は▲4七金!




なぬ!?そっち!?

これが高橋先生いわく「全体感の一手」で、▲4五歩~▲3七桂の仕掛けを見た好手とのこと。なるほどぉー。そう指すもんですか。
ただ、先手はバランスの取れた好形ですが、後手も堅いのでいい勝負(と思います)。

先行した大山先生ですが、堅陣をバックにした升田先生の猛反撃にあって、下図の局面を迎えます。ここでの大山先生の一手を紹介したくてこのブログを書いている私です。





升田先生が△6五歩と歩を合わせたこの局面。

放置するともちろん△6六銀と出られますし、▲6五同歩と取っても△同桂が気持ち良すぎる跳躍です。ブブカです。

かといって後手陣は堅いので攻め合いは見込めそうにありません。

うーん。悩ましい。
悩ましいというか、むしろ先手負けに見えるのは私だけでしょうか・・・。

しかしかかし!!ここで大山先生に絶妙の受けの好手が飛び出します。

 

それが▲7六玉!!!!!





あちょーーー!!

ヒラリとかわすこの手が好手!

これがほんとのヒラリークリントン。

さらに、△6六銀に▲4八角!!!!





なにも取らせねー。

ぜってーなにも取らせてやんねー。

そんな気持ちが伝わってきます。

以下、△1五歩に▲3六飛、△3五歩に▲2六飛となにも取らせない作戦を続けて下図で升田先生の投了となりました。





つえー。

大山先生まじつえー。

あの局面から勝てる人間がこの世にいるんですね。
こわいわ、もう。

ちなみに該当ページをチラ見せすると、こんな感じです。




本局に勝って、2連勝となった大山先生は結局4勝1敗で名人初防衛に成功、その後5連覇を成し遂げました。
振り飛車のイメージが強い大山先生ですが、若い頃は「矢倉の大山」として知られており、矢倉を主戦場にしていたようです。

そのあたりのことは「矢倉名局集」の巻頭で高橋先生が倉の変遷」を書いていただいているので読んでみてください。





本書にはこの他にも将棋史に残る名局・名手がザクザク出てきます。
例えば・・・

中原先生の▲5七銀!


※第37期名人戦第4局 ▲中原―米長戦
タダで取られそうな4八の銀をタダで取られる5七へ!



加藤先生の▲3一銀!


※第40期名人戦第8局千日手指し直し ▲加藤―△中原戦
十番勝負に終止符!加藤先生悲願の名人獲得!!



羽生先生の▲9六歩!


※第19期新人王戦第2局 ▲羽生―森内戦
△6五歩~△7五歩が見えている局面で驚愕の端歩突き!



最後は米長先生の▲6七金寄!


※第20期王位戦第7局千日手指し直し
タダで取れる龍を取らずに金寄りが絶妙手!


あーすごい。
すごすぎてこわい。

最後に高橋先生のまえがきを掲載させていただきます。

=========================================
過去から現在に至るまで、特に大きな勝負では、矢倉を軸として戦われてきた。そうした対局を解説できる役目を仰せつかり、無上の喜びを感じている。
その対局数たるや、とてつもなく多く、100局に絞るのは困難を極めた。もし可能であったなら、数冊に分けて、それらの熱戦譜を紹介したいところである。何しろ、こと矢倉の将棋となれば、私自身の対局からだけでも、悠々と100局が出せてしまうのだ。
ひと口に矢倉といっても、実にさまざまな戦い方がある。本書ではそれを、戦型別に項目分けしてみた。時系列には並べていないので、ご注意願いたい。
また本文においては、敬称略とさせていただいた。登場された棋士の皆さまには、あらかじめご了承のほどを。
矢倉は私にとって、ライフワークの戦法と言っても過言ではない。100局を解説するのは、本当に大変な作業ではあったけれど、書きながら、非常に充実感を感じていたのもまた事実。
「自分は、矢倉の歴史をこの世に記す本書を書くために棋士になったんだなぁ」自然にそうした思いも込み上げてくる。
本書によって、長きにわたって戦い続けられてきた矢倉の世界に、どっぷりと浸ってみよう。

九段 高橋道雄
=========================================


高橋先生、100局の選別ならびにご執筆、本当にありがとうございました。

みなさん、本書で矢倉の名局を堪能しましょう!


さてさて、本書の予約は今日から始まっています!!
しかも!今なら予約特典として高橋道雄九段のサイン本が購入できます!!

購入ページはこちらです。
https://book.mynavi.jp/ec/products/detail/id=51229
 
購入をお考えの方はぜひサイン本をゲットしてください!
数に限りがありますのでお早めにどうぞ。

それではみなさん、今週もよい週末将棋ライフを!! お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中
将棋情報局では、お得なキャンペーンや新着コンテンツの情報をお届けしています。

著者