新刊案内「矢倉名局集」 ~羽生、3手一組の絶品手順を棋史に残す~|将棋情報局

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新刊案内「矢倉名局集」 ~羽生、3手一組の絶品手順を棋史に残す~

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 こんにちは。
連立方程式の解き方が3つあったような気がするのですが、どうしても2つしか思い出せない編集部の島田です。

代入法と加減法と別に、なんかすごいエレガントな方法があったような気がするんですが…。

それはさておき、今日も元気に新刊案内いきます!
前回に引き続き3月24日発売の新刊「将棋戦型別名局集3 矢倉名局集」を紹介したいと思います。





将棋の歴史の中で大勝負と呼べるものは数あれど、第44期王将戦七番勝負はその最たるものの一つといえるでしょう。

そうです。第44期王将戦とは、羽生先生が七冠に初めてチャレンジし、谷川王将が第7局の千日手指し直し局でこれを退けたやつです。

その第7局千日手指し直し局は矢倉でした。

ちなみに千日手局も矢倉で、指し直し局が先後を入れ替えて途中まで同一局面が続いたのは有名なお話。

今日、ご紹介するのはその第7局、・・・ではありません!(なんで!?)

私が紹介したいのは第3局です!(個人の嗜好)


「矢倉名局集」では第66局として収録されている一局、早速見てみましょう♪
谷川先生の2連勝で迎えた第3局はこんな矢倉に進みました。





先手の羽生先生は▲4六銀・3七桂型で穴熊。対して谷川先生は△4二銀と引いて専守防衛の構えです。

さらに駒組みが進んでこうなります。





高橋先生の解説によるとこの局面は「両軍共に、いっぱいいっぱいに組み上げた感じ」。ここから羽生先生が▲3五歩と開戦しました。
銀交換の後、後手の谷川先生が△3七銀と打って、上部を開拓。
以下、なんだかんだでこんな局面になりました。





今、後手が△2四歩と桂取りに突き出した局面です。
飛車はすぐ使えませんし、2五の桂を取られたら攻めの取っ掛かりを失います。

先手としてはこのタイミングでなんとかしたいところですが、みなさんならどう指しますか?

ちなみに、本局の見出しは「羽生、3手一組の絶品の手順を棋史に残す」なのですが、その棋史に残る3手とは、ここからの3手のことです。


とりあえず、タダで桂を取られたくないから▲3三歩△同桂▲同桂成かな?と思った方、喜んでください。私と同じです。こんなもん、反射的にそう指しますね。

ただ、それは△3三同銀(下図)と取られて後手玉が安定してしまいます。





▲4五歩(下図)かな?と思った方。素晴らしいです。筋良し君です。





次に▲4四歩△同金▲7一角が狙い、ですよね?
ただ、▲4五歩には△2五歩▲4四歩△3三金寄(下図)で後手陣が堅いです。





では、羽生先生はここからどう指したんでしょーか?



※再掲図

 

 


正解は、▲3三歩△同桂▲4五歩!!!!!です。





まじか!!

▲3三歩で△同桂と取らせておいてから▲4五歩とはなんという手順でしょうか。
とりあえず私は一生浮かびそうにありません。

高橋先生もこの手順を賞賛してこう書いています。


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▲3三歩△同桂▲4五歩。この手順を見た当時、何と素晴らしい指し回しなんだろうと感動した覚えがある。その思いは今見ても変わらない。(中略)
本局は、この3手一組の手順によって、将棋が決まった感すら漂う場面である。
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う~ん。

▲3三歩△同桂▲4五歩。


▲3三歩△同桂▲4五歩。


盤に並べて何度か反芻したいです。


以下△2五歩▲4四歩△5三金▲2四銀と進みました。金が3三に行くのと5三に行くのでは大差ですね。


さて、本局は終盤もすごいんです。脱いでもすごいんです。
クライマックスは下図。





後手が△7七歩成と桂を取った手に対して、▲同金とするか、▲同銀とするか。
・・・そう考えるのが普通ですが、どっちで取っても後手の勝ちになります。

「△7七歩成に▲同銀、▲同金、どちらも後手の勝ち。幾つもの後手勝ちの順が漂っている中で、たった一筋の勝利への道を羽生は突き進む」(高橋先生の解説より)

羽生先生の指し手は▲1四桂△1一玉▲5二と!!!





ええっ!?

まじですか羽生先生!!

と金放置していいんですか?

案の定△8七とで金をボロッと取られてしまって、しかもその手が詰めろ。後手玉には詰みなし。
先手絶体絶命!?

しかしかかし!すべては羽生先生の手のひらの上だったのです。

▲4一飛!!(下図)が絶妙手!




合駒をすれば先手玉への詰めろが消え、△3一金や△3一銀と節約すると後手玉が詰んでしまうという仕組み。
本譜は△3一金打▲4二と!以下羽生先生の勝ちとなりました。


全部お見通しの羽生先生。

つえー。まじつえー。

見えている世界が違う、を通り越して住んでいる世界が違います。

この時代の矢倉の谷川―羽生戦や羽生―森内戦を見ていると、「あ~将棋の最高峰だなぁー」という気がするのです。

やっぱり矢倉は全面戦争的な感じになるので、最後は超ギリギリの戦いです。素人目にも激しさやすごさが伝わります。攻めるか・受けるか、プロの見切りはすげーです。

ぜひみなさんもこの「矢倉名局集」でスリルあふれる矢倉の名局100局を堪能していただければ幸いです。


さて、本書は予約特典として、高橋先生のサイン本を販売しております!
残り冊数が少なくなっておりますので、購入を考えている方はお早めにどうぞ。

→購入ページはこちら!!
https://book.mynavi.jp/ec/products/detail/id=51229

それでは皆さん、今週もよい週末将棋ライフを!
 

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