2016.03.18
新刊案内「果し状 ―伊藤果詰将棋50年作品集―」 ~銀の超絶技巧に感動~
こんにちは。
好きな戦国大名は長宗我部元親の編集部島田です。
これまで引っ張ってきた「伊藤果先生の何か」をついに明かす時が来ました。
そうです。4月28日発売、本日から予約開始の新刊「果し状 ―伊藤果詰将棋50年作品集―」です。
伊藤果先生や上田先生のツイートでご存じだった方も多かったかと思います。
本書は伊藤果八段が詰将棋創作50周年、並びに2016年4月での八段昇段を機に制作された作品集です。
これまで先生が作られた詰将棋はなんと2万以上!その中から200題を厳選し、詳細な解説と先生ご自身のコメントをつけて収録しております。
箱入りの上製本(ハコに入ったハードカバーの本)で箱の題字は上田先生に書いていただきました。かっこいいです。
上田先生、ありがとうございました!
さて、今日は本書の200題の中から私的に「すげ~っ」と思った詰将棋を一つ紹介しようと思います。
本書の空の巻「伊藤果詰将棋珠玉篇」の第26番として収録されている作品です。
早速ご紹介します。こちらです。
意外とシンプルな形。持ち駒なし。
しかしかかし!この駒配置には伊藤果マジックがふんだんに盛り込まれております。
ここから解答を書いちゃいますので、自分の力で解きたい!という方はここから先を読まずに、すぐに予約ページに飛んでください。
さてさて、この問題を見て私が真っ先に考えたのは▲2四竜△1二玉▲2二竜!までの3手詰です。
やりました!伊藤先生!詰みです!!
って、これで詰んだら苦労はしない。
▲2四竜には当然△3二玉と逃げられて▲2二竜△4三玉(下図)で大海原。一生捕まりません。
初手▲2四竜がダメなら▲2四銀しかありません。
今度△3二玉(あるいは△1二玉)なら▲4二竜があります。よって玉方は△1四玉の一手。
ここからの銀の動きに注目してください。▲3五銀に△2三玉と戻ります。
最初1五にいた銀が3五に移動しました。
・・・だから何?と思いましたね?
すごいのはここからです。
図から▲3四銀!! 再度の△1四玉に▲4五銀!!!!
そして△2三玉と戻ると・・・。
最初1五にいたはずの銀がジグザグ動いているうちに4五に来てしまいました。
ただ、3五にいたときは相手玉に近づいたように思いましたが、4五まで来てしまうとむしろ遠ざかってしまったような気がします。
何やってんだろ・・・?
・・・・・・ところが、この銀の横移動によって、ハタスマジックはすでに完了していたのです。
このタイミングで▲2四竜!!!!!!!
な、な、なにぃー!?
▲2四竜といえば、最初に考えて「一生捕まらない」とあきらめたあの手。
いうなれば置き去りの大砲。壊れかけのRadio。だったはず。
だって、▲2四竜には△3二玉と逃げて・・・。
って、今度は▲2二竜△4三玉に▲4二竜で簡単に詰んどるーーー!!!!
マジカ・・・。
と、いうわけで▲4五銀に対しては△2三玉ではなく、△2五玉が最善。
以下▲3六銀△1六玉に▲1五角成!がまた鮮やかな収束で詰上がります。
銀の横移動によって、最初にあきらめた手が詰むようになるのがとても面白いと感じました。
本書から伊藤果先生のコメントを見てみましょう。
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銀の住所変更はいかがでしたか。
21歳のときに東京に移ってから、今まで九回ほど引越しをしています。詰将棋の中なら何度引越ししてもいいのですが…。
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「銀の住所変更」とはまたオシャレな言い回しです。
ただ、東京に引っ越してきてから、なぜさらに九回も引っ越しをしてしまったのかは永遠の謎です。
さて、今回は空の巻「伊藤果詰将棋珠玉篇」(上)から一つ紹介しましたが、本書の構成は
地の巻 「簡素図式」
水の巻 「密室図式」
火の巻 「実戦図式」
空の巻 「伊藤果詰将棋珠玉篇」(上)
風の巻 「伊藤果詰将棋珠玉篇」(下)
となってまして、初形の制約があるもので3章、それ以外の代表作で2章、という具合になっております。
20000題から厳選された珠玉の200作品。
伊藤果先生の名人芸をご堪能ください。
機を見てまた本プログで作品の中からいくつか取り上げてみたいと思います。
で、なんと!!本書の予約は今日から始まっております!!
しかも予約特典として伊藤果先生特製のかの有名な「夢のなかの詰将棋」ポストカードがついてきます。
購入を考えている方はお早めにどうぞ。
購入ページはこちらです。
https://book.mynavi.jp/hatashijo/
それではみなさん、今週もよい週末将棋ライフを!!