【人気連載第6回!】将棋ガールズ ~高齢者介護施設での将棋ボランティア~|将棋情報局

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【人気連載第6回!】将棋ガールズ ~高齢者介護施設での将棋ボランティア~

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 ここでは青山学院大学将棋部に所属する現役女子大生、多々納光さんによるエッセイを掲載します。毎週金曜日更新予定です。 今回は第6回分を掲載します。
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将棋ガールズ

高齢者介護施設での将棋ボランティア

宮崎の全国大会が終わって気が抜けていた私に、友達のお母さんから、自宅近くの高齢者介護施設(デイサービスセンター)で、夏休みだけでいいから余暇ボランティアとして、お年寄りの将棋の相手をしてほしいと頼まれた。夏休みボランティアの課題になるかな ~と思って、すぐに承知した。


※デイサービスセンターへ

デイサービスは、比較的、要介護度の低い方々が利用していて、朝9時~夕方4時までを看護士や介護福祉士やボランティアが常駐するセンターで過ごす場所。余暇ボランティアは、午後の2時間程度を、それぞれの趣味や特技などを生かして利用者さんたちと一緒に活動をするのが役目。

音楽・ゲーム・手芸・編み物・絵・書道・囲碁将棋・朗読・水墨画、おしゃべりなどの会があって楽しみながらリハビリして、要介護度の進行を遅らせることが大切なのだそうだ。お年寄りにはプライドがあり、認知症にも調子の良いときと悪いときがあるので、年上の方への態度や礼儀を守りながらの発言と対応が実は難しかったりする。

私は、将棋は昔から趣味なので今もやりたいという利用者さんと将棋の対局をすることになった。お年寄り同士で対局すると、調整する人がいないので、対局が進行しなかったり、どちらかが不満になってもめたり、問題が起こるらしい。中でも認知症の方との勝負は注意が必要で、私のような医療の素人にお手伝いができるのか不安だったけれど、女子高生が来るというだけで、利用者さんたちは朝から楽しみに待っていてくれたらしい(^o^)



最初の相手、軽い認知症のAさん(82歳)は、将棋のルールはもちろん問題なく、最初は上手に駒を動かして、しばらく喜んで指してくれていた。でも集中力が続かず、途中からルールを忘れて手が止まり、困った表情になった。「ここはどうですか」と指し手を促してみた。二歩を指摘すると、手を引っ込めて考えるのだけれど、また同じところに二歩を置いてしまう。もう指摘せずに、二歩のまま置かれた歩を取って盤面から消した。

看護婦さんに聞いたら、ずっと前のことは覚えているが、直近(10秒前とか)の記憶が抜けていくことがあるらしい。一局目は勝手が分からず、勝負に勝ってしまい、つまらなそうな顔をされてしまった。「惜しかったので、もう一局お願いします」と誘い、今度こそ気づかれないように負けようと思ったが、一手詰みを逃され終局に持ち込むのに苦労した。結局、不自然な負け方になってしまい、不機嫌そうな顔で「強いね」と言われてしまった(T_T)。

次のBさん(91歳)と対局を始めると、観戦したいからとAさんが椅子を寄せてきた。看護婦さんが、「熱心に見ていて、今日は集中力が続いているわ」と言ったので、ちょっとほっとした。Bさんは初段だと聞いていたので、いい勝負に持ち込み、惜しくも上手に負けて楽しんでもらいたかった。

序盤は相手が美濃囲いの四間飛車で攻めてきたので、定跡通り、中盤まで上手に進んだ。認知症の症状は全く無く、体力面だけが難点だった。途中から少し盤面が悪くなると疲れてしまい、「もう負けたよ」と投げようとするので、逆転してもらえるように助言したら、プライドを傷つけてしまったようで嫌がられた。

あ~あ、あまり考えずにノータイムで指したほうが、私にポカが出てよかったな…。慣れてないから口三味線の将棋は指せないけれど、時々はしゃべりながら将棋を指せたらいいのになぁ。でも私が帰ったあとで「あの娘はわりと弱かったな(笑)」とセンターの方に嬉しそうに言っていたと聞いて、少し気が楽になった



お年寄りは記憶や思考力や集中力が低下してくるので、若い頃に得意だった趣味なら、新しく習うゲームよりも、自信を持って力を発揮できるのとのこと。認知症の症状が進行しないようにするには、将棋のように頭を使うゲームがぴったりなんだろうけど、私には上手な気の使い方がわからず、相手の様子を見ながら態度を合わせるのは大変だった。

勝ち負けよりも、楽しんでもらうことが大事だと看護婦さんに言われていたのに、勝負事って難しい。将棋の内容を良くしようと思うと考える時間がいるし、無口になってしまうので、上手な棋譜で勝敗の加減するのはすご~く難しい。大きな声でハキハキ楽しくおしゃべりして、良い勝負をすれば、脳の活性化につながって健康維持に役立つのに。他のボランティアの方々は、いつもにこやかで優しそうに見えた。私もあんなふうなら、雰囲気が和らいだのかも。まだまだ未熟者だなぁ(><)

将棋って、幅広い年代で交流できるゲームなだけでなく、医療にも役立つ?奥深いものなんだな…。将棋を通してちょっぴり成長できた夏休みだった。


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