【人気連載第10回!】将棋ガールズ ~将棋部設立?~却下されて~藤枝の大会の中止~|将棋情報局

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【人気連載第10回!】将棋ガールズ ~将棋部設立?~却下されて~藤枝の大会の中止~

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 ここでは青山学院大学将棋部に所属する現役女子大生、多々納光さんによるエッセイを掲載します。毎週金曜日更新予定です。 今回は第10回分を掲載します。
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将棋ガールズ

将棋部設立?~却下されて~藤枝の大会の中止


このへんで、高校一年の3学期、鬼怒川の新人戦が終わったころに話を戻そうと思う。(^-^)
私は4歳からスイミングスクールに通っていた。



水泳部では平泳ぎの選手で、江東区の辰巳国際水泳競技場で行われる都大会にも出場した。でも将棋と違って競技人口の多い競泳では、とても上位に食い込めない。同級生の将棋仲間、サッカー部の菊池、剣道部のリサも、それぞれの運動部活を頑張っていたけれど、全国大会などめったに届かない夢…。


※都大会の様子

青山学院高等部の数学科に安田健次郎先生という方がいる。安田先生は、背がとても高くて、すでにバスケット部の顧問をしていた。それでも将棋部を設立したいと申し出て相談したとき、顧問になってもいいとおっしゃってくれた。先生は幾何学でもパズルのようなものが好きで、将棋の対局はしないけれど、詰将棋を解くのがとても好きな人だった。

将棋部ができたら、スケジュールを融通すれば、みんな兼部で活動できるはず。生徒会のハンドブックを見ながら、部活新設の申請書を作った。いままでの活動と戦績を記入し、顧問となる安田先生の名前を書き、部員の数もそろえた。そして、生徒会に提出した。

規定通りにものごとを進めたにもかかわらず、申請は却下された。その理由は「新校舎建設中だから」とのこと。でも、将棋部が新校舎と関係あるの?専用の活動場所が必要なわけでもないし、将棋するのに費用もたいしてかからないのに。

「よくは知らないけど、以前あった将棋部が、ろくろく活動していなかったからつぶれたという過去の出来事があったらしいよ。どうせまた、いいかげんな部じゃないのかと思われて承認されなかったんじゃないか」
「高等部の先生方が将棋を嫌いなのかな。中等部には将棋部があるんだから」
なんて、憶測で話し合ってみたが、どうにもならなかった。将棋部設立の願いは却下され、がっかりして私たちの高校一年生は終了しようとしていた


※高校の仲間と将棋会館前で

そして、2011年の3月11日、誰もがショックを受けたあの未曽有の大地震、東日本大震災が起こった。地震は東北から関東に大きな被害をもたらした。東京都心では帰宅難民があふれた。学校は試験休みに入っており、所属していた水泳部の練習がたまたま午前中だけだったので、私は昼過ぎには家に帰っていて難を逃れた。青山学院高等部では、生徒が何人も学校で備蓄していたビニールシートを体に巻いて一夜を明かした。学校が用意してくれたおにぎりをみんなで一つずつ分け合って食べたそうだ。

「仙台の弥穂ちゃん、盛岡の友希ちゃん、山形の美鈴ちゃんは大丈夫かしら?」
急に不安になった。全国大会で知り合っていた東北の友人たち数人にメールを出した。もちろん電波制限があって、無事なことを知らせてくれたメールは翌々日まで返信されてこなかった。それでも、やっと届いたメールで、あの子たちは大丈夫だったんだとほっとした。でもすぐに無事でなかった方々の事を思い、暗い気持ちになった。

東北沿岸部の多くの町は津波に流されて、多くの命が奪われたが、中でも福島県は原子力発電所のメルトダウンで放射能の被害を受け、今も原発近くの市町村では避難が続いている。この事実は私がここに述べるまでもなく、現在も多くの日本人の共通の苦しみであり、悲しみに変わりない。

そして次の日、3月12日土曜日の朝、学校から自宅に電話があった。藤枝明誠高校から青学高等部に連絡があって、3月13日に予定されていた全国高校女子将棋選抜大会の中止の知らせが届いたのだった。女子将棋選抜大会は静岡県の藤枝明誠高校で開催される、女子高生だけの将棋の全国大会。3月開催のため、三年生は卒業しているので、参加できるのは一年生と二年生だけ。

考えてみたら、南海トラフや東海地震との連動も予測され、新幹線も在来線もダイヤが乱れて移動の手段はなく、静岡県の宿泊地が受け入れられないのは当然だった。1年にたった一度の女子高生だけの全国大会なのに…と、その時は残念に思ったが、ニュースで東北の被災地の状況が徐々にわかってきた。こんな時に将棋大会どころではないことは明らかだった。

ちなみに、この全国高校女子将棋選抜大会は、翌年の3月には無事開催され、リサと私は高校二年生で一度だけ参加することができた (*^-^*)




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