羽生善治三冠 新春SPインタビュー「三冠を死守した激闘の軌跡」|将棋情報局

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羽生善治三冠 新春SPインタビュー「三冠を死守した激闘の軌跡」

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中

みなさま、こんにちは。将棋世界編集部の鈴木です。
すでに発売されている『将棋世界1月号』と、12月29日発売の『将棋世界2月号』で、「羽生善治三冠 新春スペシャルインタビュー」を掲載します。今回は1月号に掲載した、「三冠を死守した激闘の軌跡」の一部を公開いたします。


新春スペシャルインタビュー【前編】
羽生善治三冠
「三冠を死守した激闘の軌跡」

【インタビュー構成】小暮克洋
【撮影】中野伴水

2016年の羽生善治三冠は、年明けから挑戦者として王将戦に登場。4月から10月までは名人戦と棋聖戦、王位戦、それに王座戦と、休む間もなく防衛戦に臨んだ。ところが五冠への挑戦につまずくと、続いて名人位を失冠。その後も思うように白星を挙げることができず、坂道を転げ落ちるような大ピンチに見舞われた。しかし後半戦で立ち直り、終わってみれば3つのタイトルを死守。まことしやかに流れた「限界説」を、見事に乗り越えたのだった。苦しい戦いの軌跡を振り返りつつ、いまなお棋界を牽引する絶対王者の「現在と未来」に肉薄するロングインタビューをお届けする。




※2016年8月号からワイド版(通常の2倍サイズ)の販売を開始しました。「マイナビBOOKS」による、限定販売です。詳しくはこちら

第65期王将戦七番勝負
郷田真隆王将 ○●●○○○4 防衛
羽生善治名人 ●○○●●●2


覚悟のうえで

――まずは郷田真隆王将との七番勝負についてうかがいます。シリーズの合間にはアメリカやイギリスに飛ぶ、タイトなスケジュールが話題を呼びました。周囲には好奇心旺盛な羽生流のコンディション調整の一環にも映りましたが、盤上への影響はいかがでしたでしょうか。
「海外へはNHKの番組取材で出掛けたのですが、第4局と第5局の間隔がかなりあいていたので、ロケはその期間に集中的に行いました。ただ王将戦の内容は、全般的によくなかった。いい結果につながらなかったのは残念に思います」
――開幕前にはスイス、後半にはロシアへの訪問もあり、海外尽くしの感がありました。体力的にはどうでしたか。
「移動は大変でしたが覚悟のうえで、すべて自分の責任です。棋士はオフシーズンがないので、対局以外の日程をどうこなしていくのかは難しい。バランスを取りながらやらなくてはいけません。与えられた機会を、うまく生かせるかどうかのタイミングも大事だと思っています」
――郷田さんについての印象は。
「今回のシリーズでは、特に充実ぶりを感じました。基本的に持ち時間があればあるほどいいというタイプの棋士で、じっくり腰を据えられる2日制が気に入っていることは指していてわかります。一手一手に深い読みが入っていて、我が道をいく指し手に自信が伝わってきました。こちらの準備の仕方や戦術的な対応に、ちょっと問題があった気はしています」

第74期名人戦七番勝負
羽生善治名人 ○●●●●1
佐藤天彦八段 ●○○○○4奪取


回避し続けるわけには

――やや暗雲が垂れ込める状況で名人戦が開幕しましたが、第1局は快勝。若い佐藤天彦さんに貫録を見せつけるような勝ち方で、上々の滑り出しでした。ところが続く第2局。羽生さんが相手玉の即詰み順を逸するという〝事件〟が起こり、1勝1敗になってしまいます。きっちり勝ちきっていれば2連勝……。この敗戦がずるずると尾を引くかもしれない、と周囲は恐る恐る予感し、そのとおりの結果になってしまったわけですが。
「最終盤のあの場面は残り時間が1分でした。もうちょっと時間があっても、果たして詰み筋を見つけられたかどうかはわからないと、いまも自分では思っています。その前のところでこちらに明快な勝ち筋があったと思うので、それを逃してしまったことにむしろ悔いが残りました。とはいえ、第1局も決して楽に勝てたという感じではなかったので、仮に第2局を勝ちきれていたとしても、最終的に防衛できたのかどうかは……。第3局以降の展開や内容を前提に見ると、どうだったのかなあ、という気はします」
――詰みを逃すのと他の漠然とした勝ち筋を逃すのとでは、同じ負けでも精神的なショックが違うものでしょうか。
「まあ、残念という気持ちは当然ありますが、それも実力のうちですからね。ただ第2局に関しては、それ以前の局面でもうちょっと落ち着いて指せなかったか、ということのほうが反省材料でした」
――羽生さんは20代の頃、いちばん好きな戦法は横歩取りと公言していましたね。とはいえ、佐藤さんは現代を代表する横歩取りのスペシャリストです。今回の新名人誕生は、羽生さんが最新の傾向に十分対抗できなかったのも一因ではないかと分析する人もいました。
「横歩取りを避けて戦う選択肢もあったとは思いますが、その場合の対応も佐藤さんはしっかりしているはずです。回避し続けるわけにもいかないので、相手の得意形でも好きな形でも、そこはやっていかなくてはならないと思いました」
――結果は、トータル1―4での敗退。森内俊之さんに何度も退けられた数年前を思えば、この星勘定も一過性の出来事として片づけることもできます。ただ森内さんとはあの当時、どっちが勝ってもまた来年会いましょう、という雰囲気だったように思います。今回は20代後半の若手が相手ということで、勝手が違います。これまでにない不安や寂しさがよぎったところはありませんでしたか。
「佐藤さんはこの1年で3回目のタイトル挑戦でしたから、いつ頂点に立ってもおかしくないと思っていました。名人位を失ってしまい、心残りがないといえばうそになりますが、年齢差についてはある程度の年からはそんなに関係ないのかな、と自分では感じています。30歳前後から先は、40でも50でもだいたい同じではないか、と。いまの年齢と比較した場合ですけれど、相手が20歳前後ならちょっと違ってくるのでしょうが、ある程度の年齢から上になれば、みな経験のある棋士、ということになりますから。ただ若い世代の人たちが台頭してきているのは紛れもない事実なんで、重く受け止めないといけないとは思います」

この後はしばらく名人戦の話が続いたあと、棋聖戦、王位戦、王座戦へと移っていきます。羽生三冠の率直な本音のすべてを、ぜひ現在発売中の「将棋世界1月号」でご覧ください。
また、インタビューの【後編】「新たなる挑戦の始まり」を掲載する
「将棋世界2月号」も予約を開始しました。ご期待ください。



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