2025.03.01
【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2025年3月編
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皆さんこんにちは。「弱いから負けた。それだけです」でおなじみの編集部島田です。
将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第31弾です。3月ということで、だいぶ暖かくなってまいりました。・・・が、なんか目がかゆい。これまで花粉症じゃないことを自慢に生きてきたんですが、ついに私にもその時が来たのかもしれません。今のところ、気のせいだと思って生きています(笑)。
3月は年度末ということで会議が多くて、外に取材に行けませんでした。無念です。
特に30日の「詰将棋解答選手権」には聡太先生も参加されるということだったので何としても大阪に取材に行きたかったのですが、水泳のジュニアオリンピックに出場した娘の労をねぎらう会が親族一同で開催されたため断念しました。ここで仕事に行ってしまうと娘に一生恨まれそうだったので(笑)、やむなしです。でも、4月12日に行われる初級戦と一般戦のほうは行きたいと思います。
今回、『詰将棋解答選手権2024』の編集をさせていただいたのですが、全国各地の会場レポートがほんとに素晴らしくて感動しました。中には小学生のレポートもあって、毎年この大会を楽しみにしていることが伝わってきましたし、いろんな人の詰将棋愛が集まって、ここまでの規模の大会になったんだなということがよくわかりました。素晴らしい大会だと思うので、今後、より深くかかわっていきたいです。とりあえず『詰将棋解答選手権2025』も頑張って作りますので、皆さん買ってくださいね(^^)。
外出といえば、最近は就位式にもあまり行けていないので、来年度はまた参加しようと思っています。就位式やイベントで島田を見かけたら声かけてください。
・・・さて、前置きはこれくらいにして3月の藤井先生の対局を振り返っていきましょう!
では1局ずつ振り返ってまいりましょう!
2日 増田康宏八段戦
第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)第3局
序章 新幹線で新潟へ
藤井先生が2連勝して防衛に王手を掛けて迎えた棋王戦五番勝負第3局。対局は「新潟グランドホテル」で行われました。
前夜祭での藤井先生のコメントを見てみましょう。
「過去2年は信越本線の『しらゆき』で来ていたのですが、今年は新幹線で来ました。信越本線とは対照的に、新幹線は険しい山中を抜けていく感じがあって、改めていろいろな景色があるのだなと感じました。明日は皆さまの期待に応えられるような熱戦にできるよう、全力を尽くしたいと思います」
何線で来たかを説明するのは前夜祭では定跡化された光景。電車と詰将棋の話をしているときの藤井先生が一番イキイキしている気がします(笑)。
面白いのが、電車に乗った時いつも外の景色を見ていることですね。
私なんかだと、電車で遠くに行っても結局スマホ画面しか見てないですし、外の景色を見てもすぐに飽きてしまうんですけど、藤井先生はずっと景色を眺めていられるのがすごいです。藤井先生は地理も好きなので、たぶん、同じ景色を見ていてもそこから得られる情報量が多いんでしょうね。ブラタモリのタモリさんみたいに。
いつかあるNHK特番「ブラ聡太 ~日本全国鉄道の旅~」に期待します。
第1章 千日手
本局は藤井先生の先手、ということで角換わりに進みます。対する増田先生は定跡の中で微妙に外す、というスタンスですので、角換わりを受けて立ち、39手目▲6九玉の「藤井スペシャル」の将棋になりました。
中盤、銀を2二に引いて△6五歩から反撃したのが増田先生の用意していた工夫でした。この局面、評価値的には後手が悪いので普通の人は研究しません。さすがの藤井先生も深くは研究していなかったはずです。ただ、実際に先手を持って良くするのは難しい局面でもあり、そこを深く掘り下げて勝負するというのが増田先生の狙いでした。
こういう作戦というのはこれから増えていくような気がします。
評価値的には若干悪いけど相手の研究も薄いので、そこで自分だけ詳しくなって勝負する、ということですね。
本局ではこの増田先生の作戦が見事に的中して、少し悪かった後手の評価値が互角になり、さらに少しリードするところまで行きました。中盤で千日手模様になった時に後手から打開する手もあったようですが、藤井先生の先手番角換わりに対して千日手に持ち込めれば御の字というもの。増田先生が無理して打開せずに千日手を選んだのは賢明な選択だったと思います。
ということで、棋王戦第3局は先後を入れ替えて指し直しということなりました。
ちなみに、これを読んでいる皆さんには「千日手」の説明の必要はないですよね?
皆さんを信じて先に進みます(笑)
第2章 雁木
指し直し局で先手番になった増田先生は矢倉を選択。対して藤井先生の選択は雁木でした。
第2局でも採用されていましたが、そのときいい感触があったのかもしれません。
島田的には中盤が長くなる雁木は藤井先生の長所を生かしやすい戦法だと思っているので、採用していただいてうれしかったです。
藤井先生の雁木に対して、増田先生は矢倉の堅さをバックにガンガン攻めていきます。その結果、藤井先生の守りの駒がほとんどなくなってしまいます。
藤井先生自身「薄い形になり、寄ってしまってもおかしくない」と振り返っていました。しかし、ここから倒れないのが藤井聡太。
雁木は確かに薄いのですが、玉が広いのが特長。そしてその広さを生かして玉をかわしていくのは藤井先生が得意とするところです。ゆらゆらと右辺に逃げ出して、藤井玉が捕まらなくなりました。
そして生まれた一瞬の余裕を生かして藤井先生の反撃が始まります。飛車を成りこみ、左右挟撃の態勢を作る電光石火の寄せが炸裂。あっという間に増田先生を投了に追い込んでしまいました。強し。犬養毅。
第3章 話せばわかる
長い中盤を抜け出して鋭い寄せを決めた藤井先生が勝利。これでシリーズ3連勝としてストレートでの棋王防衛となりました。
また、本局の勝利でタイトル戦通算100勝を果たし、タイトル獲得数を27期として谷川浩司十七世名人に並びました。めちゃくちゃすごい記録ではありますが、藤井先生の場合、あまり驚きもなく通過点でしかない、という感じなのが恐ろしいところです。
この棋王戦は両者が得意とする中盤のねじり合いがハイレベルで見ごたえがありました。そこでわずかに藤井先生が上回ったという感じでしょうか。増田先生も「中終盤の力の差を感じた」と振り返っていましたが、その差は紙一重だと思います。
このタイトル戦について佐藤和俊七段にお話を聞きましたが、ほぼ互角の形勢でずっと続いていくのは棋士から見ても異次元、とおっしゃっていました。
この二人でしか創れない将棋だったのと思うので、またこのカードでタイトル戦が見たいですし、その時はきっとやってくるでしょう。
藤井先生、増田先生、お疲れさまでした。
完全版はこちらで読むことができます。
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将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第31弾です。3月ということで、だいぶ暖かくなってまいりました。・・・が、なんか目がかゆい。これまで花粉症じゃないことを自慢に生きてきたんですが、ついに私にもその時が来たのかもしれません。今のところ、気のせいだと思って生きています(笑)。
3月は年度末ということで会議が多くて、外に取材に行けませんでした。無念です。
特に30日の「詰将棋解答選手権」には聡太先生も参加されるということだったので何としても大阪に取材に行きたかったのですが、水泳のジュニアオリンピックに出場した娘の労をねぎらう会が親族一同で開催されたため断念しました。ここで仕事に行ってしまうと娘に一生恨まれそうだったので(笑)、やむなしです。でも、4月12日に行われる初級戦と一般戦のほうは行きたいと思います。
今回、『詰将棋解答選手権2024』の編集をさせていただいたのですが、全国各地の会場レポートがほんとに素晴らしくて感動しました。中には小学生のレポートもあって、毎年この大会を楽しみにしていることが伝わってきましたし、いろんな人の詰将棋愛が集まって、ここまでの規模の大会になったんだなということがよくわかりました。素晴らしい大会だと思うので、今後、より深くかかわっていきたいです。とりあえず『詰将棋解答選手権2025』も頑張って作りますので、皆さん買ってくださいね(^^)。
外出といえば、最近は就位式にもあまり行けていないので、来年度はまた参加しようと思っています。就位式やイベントで島田を見かけたら声かけてください。
・・・さて、前置きはこれくらいにして3月の藤井先生の対局を振り返っていきましょう!
3月の対局まとめ
2日 第50期棋王戦五番勝負第3局 増田康宏八段戦 勝ち
8、9日 第74期王将戦七番勝負第5局 永瀬拓矢九段戦 勝ち
3月は、対局は少なかったですが、ともにタイトルの防衛を決める大きな一番でした。ここでは取り上げませんが、NHKの決勝戦も放映されて見事に優勝。タイトル防衛2つと棋戦優勝ということで、まさに年度末にふさわしいフィニッシュになったと思います。2日 第50期棋王戦五番勝負第3局 増田康宏八段戦 勝ち
8、9日 第74期王将戦七番勝負第5局 永瀬拓矢九段戦 勝ち
では1局ずつ振り返ってまいりましょう!
ねじり合い制し防衛、タイトル戦100勝!
2日 増田康宏八段戦
第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)第3局
序章 新幹線で新潟へ
藤井先生が2連勝して防衛に王手を掛けて迎えた棋王戦五番勝負第3局。対局は「新潟グランドホテル」で行われました。
前夜祭での藤井先生のコメントを見てみましょう。
「過去2年は信越本線の『しらゆき』で来ていたのですが、今年は新幹線で来ました。信越本線とは対照的に、新幹線は険しい山中を抜けていく感じがあって、改めていろいろな景色があるのだなと感じました。明日は皆さまの期待に応えられるような熱戦にできるよう、全力を尽くしたいと思います」
何線で来たかを説明するのは前夜祭では定跡化された光景。電車と詰将棋の話をしているときの藤井先生が一番イキイキしている気がします(笑)。
面白いのが、電車に乗った時いつも外の景色を見ていることですね。
私なんかだと、電車で遠くに行っても結局スマホ画面しか見てないですし、外の景色を見てもすぐに飽きてしまうんですけど、藤井先生はずっと景色を眺めていられるのがすごいです。藤井先生は地理も好きなので、たぶん、同じ景色を見ていてもそこから得られる情報量が多いんでしょうね。ブラタモリのタモリさんみたいに。
いつかあるNHK特番「ブラ聡太 ~日本全国鉄道の旅~」に期待します。
第1章 千日手
本局は藤井先生の先手、ということで角換わりに進みます。対する増田先生は定跡の中で微妙に外す、というスタンスですので、角換わりを受けて立ち、39手目▲6九玉の「藤井スペシャル」の将棋になりました。
中盤、銀を2二に引いて△6五歩から反撃したのが増田先生の用意していた工夫でした。この局面、評価値的には後手が悪いので普通の人は研究しません。さすがの藤井先生も深くは研究していなかったはずです。ただ、実際に先手を持って良くするのは難しい局面でもあり、そこを深く掘り下げて勝負するというのが増田先生の狙いでした。
こういう作戦というのはこれから増えていくような気がします。
評価値的には若干悪いけど相手の研究も薄いので、そこで自分だけ詳しくなって勝負する、ということですね。
本局ではこの増田先生の作戦が見事に的中して、少し悪かった後手の評価値が互角になり、さらに少しリードするところまで行きました。中盤で千日手模様になった時に後手から打開する手もあったようですが、藤井先生の先手番角換わりに対して千日手に持ち込めれば御の字というもの。増田先生が無理して打開せずに千日手を選んだのは賢明な選択だったと思います。
ということで、棋王戦第3局は先後を入れ替えて指し直しということなりました。
ちなみに、これを読んでいる皆さんには「千日手」の説明の必要はないですよね?
皆さんを信じて先に進みます(笑)
第2章 雁木
指し直し局で先手番になった増田先生は矢倉を選択。対して藤井先生の選択は雁木でした。
第2局でも採用されていましたが、そのときいい感触があったのかもしれません。
島田的には中盤が長くなる雁木は藤井先生の長所を生かしやすい戦法だと思っているので、採用していただいてうれしかったです。
藤井先生の雁木に対して、増田先生は矢倉の堅さをバックにガンガン攻めていきます。その結果、藤井先生の守りの駒がほとんどなくなってしまいます。
藤井先生自身「薄い形になり、寄ってしまってもおかしくない」と振り返っていました。しかし、ここから倒れないのが藤井聡太。
雁木は確かに薄いのですが、玉が広いのが特長。そしてその広さを生かして玉をかわしていくのは藤井先生が得意とするところです。ゆらゆらと右辺に逃げ出して、藤井玉が捕まらなくなりました。
そして生まれた一瞬の余裕を生かして藤井先生の反撃が始まります。飛車を成りこみ、左右挟撃の態勢を作る電光石火の寄せが炸裂。あっという間に増田先生を投了に追い込んでしまいました。強し。犬養毅。
第3章 話せばわかる
長い中盤を抜け出して鋭い寄せを決めた藤井先生が勝利。これでシリーズ3連勝としてストレートでの棋王防衛となりました。
また、本局の勝利でタイトル戦通算100勝を果たし、タイトル獲得数を27期として谷川浩司十七世名人に並びました。めちゃくちゃすごい記録ではありますが、藤井先生の場合、あまり驚きもなく通過点でしかない、という感じなのが恐ろしいところです。
この棋王戦は両者が得意とする中盤のねじり合いがハイレベルで見ごたえがありました。そこでわずかに藤井先生が上回ったという感じでしょうか。増田先生も「中終盤の力の差を感じた」と振り返っていましたが、その差は紙一重だと思います。
このタイトル戦について佐藤和俊七段にお話を聞きましたが、ほぼ互角の形勢でずっと続いていくのは棋士から見ても異次元、とおっしゃっていました。
この二人でしか創れない将棋だったのと思うので、またこのカードでタイトル戦が見たいですし、その時はきっとやってくるでしょう。
藤井先生、増田先生、お疲れさまでした。
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