謙虚な挑戦者はふたたび舞台へ 斎藤八段が糸谷八段降し伊藤叡王への挑戦権獲得 第10期叡王戦挑戦者決定戦|将棋情報局

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謙虚な挑戦者はふたたび舞台へ 斎藤八段が糸谷八段降し伊藤叡王への挑戦権獲得 第10期叡王戦挑戦者決定戦

伊藤匠叡王への挑戦権を争う第10期叡王戦(主催:株式会社不二家)は本戦トーナメントが大詰め。3月18日(火)には挑戦者決定戦の糸谷哲郎八段―斎藤慎太郎八段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、力戦調の捻り合いから抜け出した斎藤八段が111手で勝利。快勝で自身3年ぶりとなるタイトル挑戦を決めています。

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■意表の雁木中飛車
どちらが勝っても叡王初挑戦となる大一番、振り駒で後手となった糸谷八段は早々に角道を止めて雁木の姿勢を打ち出しました。守勢になりがちなこの作戦のなかでも中飛車に構えたのが糸谷八段独自の工夫で、先手の速攻を封じつつ定跡のない中盤戦に持ち込みたい意図が見て取れます。対する先手の斎藤八段は矢倉に組んで戦いの時を待ちました。

糸谷調の序盤戦で幕を開けた本局ですが、中盤以降は一転して斎藤八段の流麗な指し回しを見ることに。駒組みが一段落した局面は斎藤陣に遊び駒が一切なく、攻守ともに全軍躍動の好形を実現して先手の作戦勝ちが誰の目にも明らかです。糸谷八段は局後「組み上がってみると、しんどい将棋にしてしまったかな」と振り返りました。

■面目躍如の快勝譜
万全の体勢を得た斎藤八段は満を持して仕掛けます。敵陣の一番の弱点である端に手を付けたのが、筋の良さで知られる斎藤八段らしい切れ味鋭い攻め。大駒を犠牲にする痛快な寄せで一気に後手玉の喉元に迫ることに成功しました。プロ的にはすでに大差で、先手陣の矢倉に一切手が付いていないのがそれを裏付けます。

終局時刻は15時47分、最後は自玉の受けなしを認めた糸谷八段が投了。作戦勝ちを優勢につないだ斎藤八段が棋風通りの快勝で伊藤叡王への挑戦権を獲得しました。局後の記者会見で斎藤八段は「(成績が振るわず)自分はそんなものなのかと思う時期もあったが、もう一度(多くの人に)見てもらえる将棋を指したい」と静かにその意気込みを語りました。注目の五番勝負は4月3日(木)に愛知県名古屋市の「神楽家」で開幕します。


斎藤八段はこれで6度目のタイトル戦登場、叡王初挑戦となる(写真は第79期名人戦七番勝負第1局のもの 提供:日本将棋連盟)
水留啓(将棋情報局)

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