弘法にも寄せの誤り… 斎藤八段が終盤逆転で永瀬九段下し挑決進出 第10期叡王戦本戦トーナメント|将棋情報局

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弘法にも寄せの誤り… 斎藤八段が終盤逆転で永瀬九段下し挑決進出 第10期叡王戦本戦トーナメント

伊藤匠叡王への挑戦権を争う第10期叡王戦(主催:株式会社不二家)は本戦トーナメントが大詰め。3月14日(金)には準決勝の永瀬拓矢九段―斎藤慎太郎八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀の終盤戦で抜け出した斎藤八段が166手で勝利。難敵を下して挑戦者決定戦にコマを進めています。

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■挑戦まであと2勝
振り駒が行われた対局は角換わり腰掛け銀に進展、後手となった斎藤八段は6筋の位を取る工夫で従来形からの変化を図ります。駒の細かな位置取りで第二次駒組みに突入するとやがて局面は相右玉の力戦形へと姿を変えました。先手の永瀬九段が右桂を跳ねて局面をほぐせば斎藤八段も攻防の角打ちで応戦して容易にリードを許しません。

丁々発止のやり取りはやがて先手ペースの終盤戦へとなだれこみます。この直前、銀損を甘受して桂の両取りに期待したのが永瀬九段渾身の一手で、後手はなかなか攻めの手番が回ってきません。先手が勝ちに近づくのは時間の問題と思われた最終盤、しかしここにドラマが待っていました。一分将棋のなか、手厚い詰めろを続けるのが永瀬九段に課せられた条件です。

■九死に一生の逆転劇
俗手の連続で迫れば勝ちという局面で永瀬九段に痛恨のミスが出ます。金打ちの王手を利かさず単に角を切ったのが失着。数手後に待つ後手からの王手竜取りを見落とした格好で、局後振り返った永瀬九段は「ひどかったですね」と苦笑するよりありませんでした。勝機は残るものの、対局中に明確な勝ち逃がしに気づいてしまってからの立て直しは困難でした。

九死に一生を得た斎藤八段は「読み切ってはいなかった」(局後のコメント)としながら自玉が詰まない可能性に懸けて開き直ります。この数手後、手にした3枚の桂が先手玉の死命を制する駒となって大逆転の終盤がついに決着しました。終局時刻は17時22分、最後は自玉の詰みを認めた永瀬九段が投了。決め手を与えぬ斎藤八段の粘りが結実した一局となりました。

自身3年ぶりとなるタイトル挑戦まであと1勝と迫った斎藤八段は挑戦者決定戦で糸谷哲郎八段と顔を合わせます。


斎藤八段の最新のタイトル挑戦は2022年の名人戦のこと、「気負わず戦いたい」とコメントした(写真は第79期名人戦第1局のもの 提供:日本将棋連盟)
水留啓(将棋情報局)

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