証明された大器の片鱗 上野四段が1期抜けで五段昇段 第83期順位戦C級2組10回戦|将棋情報局

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証明された大器の片鱗 上野四段が1期抜けで五段昇段 第83期順位戦C級2組10回戦

第83期順位戦C級2組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は、最終10回戦全27局の一斉対局が各地の対局場で行われました。このうち関西将棋会館で行われた上野裕寿四段―高橋佑二郎四段の一戦は149手で上野四段が勝利。プロデビュー2年目の時点で棋戦優勝2回を誇る大器が片鱗を示し、見事1期目での昇級を勝ち取っています。

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■初参加の順位戦で
ともに順位戦初参加の年となった若手の両者。ここまで8勝1敗の上野四段は暫定3位と昇級圏内ながら、本局に敗れると他局の結果で昇級を逃してしまう可能性が濃厚です。上野四段の先手番で始まった対局は矢倉の戦型に進展、双方が急戦を含みとした流動的な陣形に組むのが現代的な力戦策です。後手の高橋四段が盤上中央で銀交換を挑み、盤上は一触即発の雰囲気に。
 
先手が銀交換を拒否したことで激しい戦いが回避され長い中盤戦が始まります。本格的な戦いが始まったのは夕食休憩後の19時過ぎ、高橋四段が急所の継ぎ歩攻めで矢倉崩しに乗り出したときでした。後手の攻めに反応して玉頭に厚みを築いたのは、受けに強みを発揮する上野四段らしい指し回しですが、高橋四段から急所の田楽刺しを食らい飛車と香車の交換になってしまって苦戦の感は否めません。

■辛抱実らせ逆転勝利
一分将棋のなか辛抱を続ける上野四段に一筋の光が差し込みます。不安定な自玉を一段目に置いたまま、開き直って攻め合いで応戦した勝負手が後手の迷いを誘いました。40分の持ち時間を残していた高橋四段ですが、妥協するように放った歩での王手が失着。確実な2手スキに焦らされた格好ですが、この王手によりわずかに攻め合いの速度が逆転しました。

逆転に成功した上野四段の指し手は最後まで冷静でした。終局時刻は23時38分、最後は攻防ともに見込みなしと認めた高橋四段が投了。劣勢の終盤で一瞬にして体を入れ替えた上野四段の逆転譜となりました。勝った上野四段は今期順位戦成績を9勝1敗とし、初参加となる順位戦で見事C級1組への昇級と五段昇段を勝ち取りました。高橋四段は5勝5敗で今期順位戦を終えています。

なお上野四段のほかに池永天志六段が昇級を、岡部怜央四段が昇級と五段昇段を決めています。



八代弥七段ら実力者を制して順位戦9連勝での昇級となった上野四段(写真は第54期新人王戦三番勝負第1局のもの 提供:日本将棋連盟)
水留啓(将棋情報局)

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