これが順位戦の厳しさか… 佐々木大七段が山本五段を破り昇級阻む 第83期順位戦C級2組10回戦|将棋情報局

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これが順位戦の厳しさか… 佐々木大七段が山本五段を破り昇級阻む 第83期順位戦C級2組10回戦

第83期順位戦C級2組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は、最終10回戦全27局の一斉対局が各地の対局場で行われました。このうち東京・将棋会館で行われた佐々木大地七段―山本博志五段の一戦は156手で佐々木七段が勝利。勝てば自力昇級だった山本五段ですが佐々木七段とともに残留が決まっています。

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■3つの昇級枠をめぐって
最終日を迎えた段階で昇級確定者のいない今期のC級2組。ここまで8勝1敗の山本五段は勝てば文句なく昇級ですが、敗れた場合はライバル5人が揃って敗れる必要が出てきます。山本五段の先手番で始まった対局は三間飛車対居飛車急戦のクラシカルな戦型に進行。ともに得意としている戦法だけあって力の出しやすい展開となりました。佐々木七段からの仕掛けに対し山本五段は「戦いの起こった筋に飛車を振る」のセオリー通りに飛車を6筋に振り直します。
 
飛車交換が行われて競り合いは一段落。中継放送に備え付けられた将棋ソフトが振り飛車ペースの評価値を示した終盤の入り口が最初の分岐点でした。控えの桂での美濃崩しを狙う後手の勝負手に対し、AIの示す最善手は自玉の危険を顧みずに攻め合いに出る一手。しかしこの道には随所に罠が張り巡らされており、振り飛車側が無理をして攻め合いに出る必要のなさそうな局面であること、また持ち時間でリードを許している点からも人間的には指しづらい順でした。

■吉報は届かず
一分将棋を延々と戦い続ける山本五段に試練が続きます。仕切り直しとなった最終盤、秒に追われるように香捨ての犠打で後手玉に迫ったのが結果的に敗着となりました。敵玉に詰めろをかけ続けなければという条件の中で放たれた王手ですが、ここで与えた香がこのあと逆に先手玉の死命を制する駒として襲い掛かってきます。十数分の持ち時間を残す佐々木七段はひょうひょうとした手つきで最後の反撃に乗り出しました。

日付をまたいだ熱戦は佐々木七段の冷静な王手ラッシュで幕引きを迎えます。終局時刻は翌12日0時4分、自玉の詰みを認めた山本五段が投了。最後は先述の香が先手玉をおびき出す露払いとなり、終局図では後手の持ち駒に歩しか余らない詰みとなりました。ともに8勝2敗と並んだ両対局者ですが、同星のライバルに順位の差で及ばずいずれも残留が決まっています。敗れた山本五段は感想戦では力を出し切ったことに満足するような笑顔も見られました。



佐々木七段はC級2組で5度目となる8勝2敗の好成績ながらいずれも昇級には至らず(写真は第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)
水留啓(将棋情報局)

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