2025.03.10
『実戦で学ぶダイレクト向かい飛車の勝ち方』棋書アンバサダーによるレビュー nomaddo様
『実戦で学ぶダイレクト向かい飛車の勝ち方』棋書アンバサダーによるレビュー第5弾です!
限定記事や限定動画など特典が盛り沢山!将棋情報局ゴールドメンバーご入会はこちらから
『実戦で学ぶダイレクト向かい飛車の勝ち方』棋書アンバサダー企画
レビュー第4弾はnomaddo様に書いていただきました。
詳細かつ、大変熱のこもったレビューを書いていただきました。
それでは、どうぞ!

『実戦で学ぶダイレクト向かい飛車の勝ち方』のレビューを書かせていただきます、nomaddoと申します。
私は子どもの頃将棋を遊び程度に少しだけやってから暫く離れていたのですが、30歳になって将棋を再開した大人の初心者です。
将棋ウォーズ1級で、普段は居飛車の将棋を指します。
なかなか初段への昇級できずにおりまして、新しい戦法を身につけたいと思っていたところに本書のアンバサダーの募集を見つけ、応募させていただいた次第です。
佐藤先生は前将棋連盟の会長をされながら活躍され、豪快な棋士という認識でした。
将棋のわからない私としては、すごい個性的な手を指される方、と思っていたのですが、先生のインタビューのなかで別に奇をてらっている訳ではなく、ご自分の中での論理に基づいて手を選んでいる旨のご発言があり、本書でその一端が垣間見れればいいかなと期待しておりました。
—--------------------
この本はダイレクト向かい飛車の戦い方を佐藤九段の実戦を通じて学ぶ本です。特に駒組み・駒がぶつかってからの攻防について重点的に解説されております。
本書にしかない特徴は、やはり佐藤九段の戦いの感覚を文章化しているところです。この本を読むと将棋が好きになると思います。
逆に網羅的な定跡を知りたい、というのではあれば別の本が良いと思います。
マイナビ出版様からも『ダイレクト向かい飛車こそが合理的な戦法である』、『ダイレクト向かい飛車徹底ガイド』などが出版されております。
序章はダイレクト向かい飛車の気になる部分の解説です。私は角交換四間の経験はあったので、ダイレクトに向かい飛車に振ってしまうと▲6五角打たれたらどうするんだ?と最初思っておりました。
▲6五角が嫌なので後手で角交換振り飛車をしたとき、乱戦を避けるために△4二飛と途中下車をしてから向かい飛車にするという理解をしておりました。
本書では真っ先にこれにコンパクトに回答されております。ダイレクト向かい飛車で不安な部分が真っ先にカバーされている作りですね。

攻めの基本は相手と駒を交換して攻め駒を駒台にのせていくことですが、▲6五角を打たれると角・金を手持ちにして戦うことになり、逆に打たれると攻めが進んでいる!ということになるんだと思います。玉の薄さ含めてほかの戦型にはない独特な感覚があります。
第一章では、▲6五角を打たれた場合の戦い方について6局紹介されています。

第1図は△5四角~△2七金と飛車を取りに行く狙いがあり、それだけで手になるというのが面白いですね。
金を手持ちにしている分攻め味が強いですが、これを守りに打ってしまうような手もあります。

この図の第3図は後手ダイレクト向かい飛車側から逆棒銀を仕掛け、先手から▲3六歩と仕掛けられたところです。△同歩は▲3四歩があるのでできませんが、ここで佐藤九段は△5一金!と守りに打っていく手を指されております。手持ちにした金を再び守りに投入する、というのは思いつきにくい発想に思えます。ここで1手固めて、逆棒銀の攻めを成功させようという、佐藤九段の戦いの感覚が垣間見られて面白いですね。
第二章では、▲6五角を打たれない持久戦の戦いが紹介されています。
ここが主戦場と考えられておられるのか、ダイレクト向飛車穴熊が2局・美濃対矢倉が9局・美濃対美濃が7局の計18局とたっぷり紹介されています。
各戦型に対して、最初はオーソドックスな棋譜を紹介されて、その後に様々なバリエーションを紹介されています。
こういうふうに考えるものか、という部分を紹介させてください。

図4から△5二金左とあがり、先手の▲3七桂を誘発させて攻めるというアイディアを紹介されております。△5二金左と攻めるのに万全の形を作って攻めるぞ攻めるぞと圧をかけ、▲3七桂を跳ねさせてその桂馬を攻めるというのは面白く感じました。ダイレクト界隈だと常識なのかも知れませんが、こういう駆け引きを面白く読ませていただきました。
第三章は△5四歩型の解説です。第一章のように▲6五角を打たれないようにする形の解説で3局解説されております。
▲6五角と打たれたときに角成りの両狙いにならないようにしてから△2二飛と回る事ができるのですが、△5四歩を突いてしまったことで気をつけるべきことも発生しております。その補足のような章になっております。
第四章はその他の棋譜の解説です。かの有名な?暴銀と呼ばれた郷田先生との対局も解説されております。どういう考えのもと9筋から銀を繰り出して9筋の歩を取ってしまうような暴れっぷりになったのか解説されております。

—----------------------
ここまで本書の構成に沿って内容をご紹介しました。
本書をまとめると、ダイレクト向かい飛車の戦型・仕掛け方辞典ともいえるものです。各章で取り上げる実戦では、実戦の内容をすべて解説されているわけではなく、駒組みから仕掛け・中盤の攻防の入口までを主に取り上げています(棋譜によっては終盤の攻防を解説されております)。
それだけにとどまらず佐藤康光実戦集でもあり、佐藤流の指し方を指南する指南書のようです。
また解説ごとにリンクがあり、理解しやすい構成だと思いました。例えば2章の対矢倉の節の棋譜はザックリ言うと「オーソドックスな矢倉戦(△5二金とあがる、矢倉って伸展性あるよね)」「△5二金とあがらなかったどうなる?」「矢倉が伸展して穴熊なら?」「矢倉には9筋逆襲できるよね」「居飛車から▲5六角と打って歩をかすめ取る筋があるよね」というものなのですが、この同じような筋が異なる章でも繰り返し出てくるのです。例えば9筋の位を取らせて逆襲は対美濃の章(2章3節)でも出てきますし、歩をかすめ取る筋は3章にも解説されております。
同じ筋が形が違うとどうなるのか?ということが自然に理解が深まると思います。
また本書は佐藤康光先生の名局集としても大きな役割があると思います。
佐藤先生は『天衣無縫 佐藤康光勝局集』を出版されており、ここにダイレクト向飛車は2局掲載されております。本書はダイレクトだけで31局もの棋譜が掲載されており、ダイレクト縛りの第二の名局集として遜色ない棋譜が揃っております。対戦相手も名だたる棋士揃いです。
解説も実戦集でもなかなかここまでないだろうと思うくらいの充実度で、棋譜理解が深まると思います。
本書はプロの棋譜を題材に解説されているのもあり、理解に時間がかかるページもあります。本文でそれなりに長い手順が示されることもあるため、盤を一緒に並べていく必要がありそうです。
読んだ感想としては、「独特すぎる、これ指せるの?」という気持ちと「指してみたい!」という気持ちでいっぱいになりました。レビュー後にダイレクトを数局指してみたところ負けましたが、新鮮な気持ちでワクワクしながら指せました。
本書は将棋の勉強のための書籍を超えて、将棋を楽しくしてくれると思います。
限定記事や限定動画など特典が盛り沢山!将棋情報局ゴールドメンバーご入会はこちらから
レビュー第4弾はnomaddo様に書いていただきました。
詳細かつ、大変熱のこもったレビューを書いていただきました。
それでは、どうぞ!

『実戦で学ぶダイレクト向かい飛車の勝ち方』のレビューを書かせていただきます、nomaddoと申します。
私は子どもの頃将棋を遊び程度に少しだけやってから暫く離れていたのですが、30歳になって将棋を再開した大人の初心者です。
将棋ウォーズ1級で、普段は居飛車の将棋を指します。
なかなか初段への昇級できずにおりまして、新しい戦法を身につけたいと思っていたところに本書のアンバサダーの募集を見つけ、応募させていただいた次第です。
佐藤先生は前将棋連盟の会長をされながら活躍され、豪快な棋士という認識でした。
将棋のわからない私としては、すごい個性的な手を指される方、と思っていたのですが、先生のインタビューのなかで別に奇をてらっている訳ではなく、ご自分の中での論理に基づいて手を選んでいる旨のご発言があり、本書でその一端が垣間見れればいいかなと期待しておりました。
—--------------------
この本はダイレクト向かい飛車の戦い方を佐藤九段の実戦を通じて学ぶ本です。特に駒組み・駒がぶつかってからの攻防について重点的に解説されております。
本書にしかない特徴は、やはり佐藤九段の戦いの感覚を文章化しているところです。この本を読むと将棋が好きになると思います。
逆に網羅的な定跡を知りたい、というのではあれば別の本が良いと思います。
マイナビ出版様からも『ダイレクト向かい飛車こそが合理的な戦法である』、『ダイレクト向かい飛車徹底ガイド』などが出版されております。
序章はダイレクト向かい飛車の気になる部分の解説です。私は角交換四間の経験はあったので、ダイレクトに向かい飛車に振ってしまうと▲6五角打たれたらどうするんだ?と最初思っておりました。
▲6五角が嫌なので後手で角交換振り飛車をしたとき、乱戦を避けるために△4二飛と途中下車をしてから向かい飛車にするという理解をしておりました。
本書では真っ先にこれにコンパクトに回答されております。ダイレクト向かい飛車で不安な部分が真っ先にカバーされている作りですね。

攻めの基本は相手と駒を交換して攻め駒を駒台にのせていくことですが、▲6五角を打たれると角・金を手持ちにして戦うことになり、逆に打たれると攻めが進んでいる!ということになるんだと思います。玉の薄さ含めてほかの戦型にはない独特な感覚があります。
第一章では、▲6五角を打たれた場合の戦い方について6局紹介されています。

第1図は△5四角~△2七金と飛車を取りに行く狙いがあり、それだけで手になるというのが面白いですね。
金を手持ちにしている分攻め味が強いですが、これを守りに打ってしまうような手もあります。

この図の第3図は後手ダイレクト向かい飛車側から逆棒銀を仕掛け、先手から▲3六歩と仕掛けられたところです。△同歩は▲3四歩があるのでできませんが、ここで佐藤九段は△5一金!と守りに打っていく手を指されております。手持ちにした金を再び守りに投入する、というのは思いつきにくい発想に思えます。ここで1手固めて、逆棒銀の攻めを成功させようという、佐藤九段の戦いの感覚が垣間見られて面白いですね。
第二章では、▲6五角を打たれない持久戦の戦いが紹介されています。
ここが主戦場と考えられておられるのか、ダイレクト向飛車穴熊が2局・美濃対矢倉が9局・美濃対美濃が7局の計18局とたっぷり紹介されています。
各戦型に対して、最初はオーソドックスな棋譜を紹介されて、その後に様々なバリエーションを紹介されています。
こういうふうに考えるものか、という部分を紹介させてください。

図4から△5二金左とあがり、先手の▲3七桂を誘発させて攻めるというアイディアを紹介されております。△5二金左と攻めるのに万全の形を作って攻めるぞ攻めるぞと圧をかけ、▲3七桂を跳ねさせてその桂馬を攻めるというのは面白く感じました。ダイレクト界隈だと常識なのかも知れませんが、こういう駆け引きを面白く読ませていただきました。
第三章は△5四歩型の解説です。第一章のように▲6五角を打たれないようにする形の解説で3局解説されております。
▲6五角と打たれたときに角成りの両狙いにならないようにしてから△2二飛と回る事ができるのですが、△5四歩を突いてしまったことで気をつけるべきことも発生しております。その補足のような章になっております。
第四章はその他の棋譜の解説です。かの有名な?暴銀と呼ばれた郷田先生との対局も解説されております。どういう考えのもと9筋から銀を繰り出して9筋の歩を取ってしまうような暴れっぷりになったのか解説されております。

—----------------------
ここまで本書の構成に沿って内容をご紹介しました。
本書をまとめると、ダイレクト向かい飛車の戦型・仕掛け方辞典ともいえるものです。各章で取り上げる実戦では、実戦の内容をすべて解説されているわけではなく、駒組みから仕掛け・中盤の攻防の入口までを主に取り上げています(棋譜によっては終盤の攻防を解説されております)。
それだけにとどまらず佐藤康光実戦集でもあり、佐藤流の指し方を指南する指南書のようです。
また解説ごとにリンクがあり、理解しやすい構成だと思いました。例えば2章の対矢倉の節の棋譜はザックリ言うと「オーソドックスな矢倉戦(△5二金とあがる、矢倉って伸展性あるよね)」「△5二金とあがらなかったどうなる?」「矢倉が伸展して穴熊なら?」「矢倉には9筋逆襲できるよね」「居飛車から▲5六角と打って歩をかすめ取る筋があるよね」というものなのですが、この同じような筋が異なる章でも繰り返し出てくるのです。例えば9筋の位を取らせて逆襲は対美濃の章(2章3節)でも出てきますし、歩をかすめ取る筋は3章にも解説されております。
同じ筋が形が違うとどうなるのか?ということが自然に理解が深まると思います。
また本書は佐藤康光先生の名局集としても大きな役割があると思います。
佐藤先生は『天衣無縫 佐藤康光勝局集』を出版されており、ここにダイレクト向飛車は2局掲載されております。本書はダイレクトだけで31局もの棋譜が掲載されており、ダイレクト縛りの第二の名局集として遜色ない棋譜が揃っております。対戦相手も名だたる棋士揃いです。
解説も実戦集でもなかなかここまでないだろうと思うくらいの充実度で、棋譜理解が深まると思います。
本書はプロの棋譜を題材に解説されているのもあり、理解に時間がかかるページもあります。本文でそれなりに長い手順が示されることもあるため、盤を一緒に並べていく必要がありそうです。
読んだ感想としては、「独特すぎる、これ指せるの?」という気持ちと「指してみたい!」という気持ちでいっぱいになりました。レビュー後にダイレクトを数局指してみたところ負けましたが、新鮮な気持ちでワクワクしながら指せました。
本書は将棋の勉強のための書籍を超えて、将棋を楽しくしてくれると思います。
限定記事や限定動画など特典が盛り沢山!将棋情報局ゴールドメンバーご入会はこちらから
将棋情報局では、お得なキャンペーンや新着コンテンツの情報をお届けしています。