こぼれ落ちた振り飛車ドリーム 永瀬九段が終盤逆転で佐藤天九段降し名人初挑戦決める 第83期順位戦A級プレーオフ|将棋情報局

将棋情報局

こぼれ落ちた振り飛車ドリーム 永瀬九段が終盤逆転で佐藤天九段降し名人初挑戦決める 第83期順位戦A級プレーオフ

藤井聡太名人への挑戦権を争う第83期順位戦A級(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は、佐藤天彦九段―永瀬拓矢九段のプレーオフが3月4日(火)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、苦難の終盤戦をしのいだ永瀬九段が115手で勝利。4期目となるA級参加で自身初の名人挑戦を決めています。

限定記事や限定動画など特典が盛り沢山!将棋情報局ゴールドメンバーご入会はこちらから

■振り飛車党の期待背負って
今期順位戦で6勝3敗同士で並んだ両者、二人の間で6月に戦われた順位戦1回戦は佐藤九段が制していました。振り駒が行われた本局は1回戦に続いて再び後手となった佐藤九段がダイレクト向かい飛車を採用。自陣全体に金銀をバランスよく配置したのは、大師匠である大山康晴十五世名人を彷彿させるおおらかで粘り気ある指し回しです。
 
右辺で飛車交換が行われて盤上は早くも終盤戦へ。5筋の拠点にガツン!と角を打ち込んだのは貴族の愛称に似つかわしくない力技ですが、この手が実戦的な好手で形勢は徐々に振り飛車ペースに傾き始めます。切れない攻めを実現した佐藤九段が勝ち切るのは時間の問題と思われましたが、日付を跨ごうかという最終盤にエアポケットが待っていました。

■九死に一生の逆転劇
守勢の永瀬九段が金打ちで粘ったとき、馬を引いて攻めの立て直しを図ったのが結果的に逸機。遅攻で満足と見た佐藤九段ですが後手からの反撃が思いのほか厳しかった形で、感想戦では「受けがないんですね」と漏らすことに。代えては馬を引かずに飛を取って厳しく攻め立てるのが正着で、感想戦では永瀬九段も「なんとかできる自信はなかった」と結論付けられました。

九死に一生を得た永瀬九段はたくわえた持ち駒で最後の反撃に出ます。タダのところに金を捨てたのが華麗な寄せの決め手で、入玉の可能性さえ消してしまえば後手玉は一手一手の寄り形となります。終局時刻は翌5日0時42分、自玉の受けなしを認めた佐藤九段が投了。苦難の終盤戦をしのいだ永瀬九段が名人初挑戦を決めた瞬間でした。

永瀬九段は七番勝負に向け「重みのあるタイトルなのでそれにふさわしい将棋を指したい」と抱負を語りました。注目の第1局は4月9日(水)・10日(木)に東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で行われます。


永瀬九段は局後「藤井名人と持ち時間9時間の将棋を指したいと思っていたので実現できてよかった」と喜びを語った(写真は第74期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグ戦プレーオフの時のもの 撮影:編集部)
水留啓(将棋情報局)

限定記事や限定動画など特典が盛り沢山!将棋情報局ゴールドメンバーご入会はこちらから
将棋情報局では、お得なキャンペーンや新着コンテンツの情報をお届けしています。