「9度目の正直」でつかんだ勝利 糸谷八段が藤井竜王・名人下し八冠ドリームは持ち越しに 第10期叡王戦本戦トーナメント|将棋情報局

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「9度目の正直」でつかんだ勝利 糸谷八段が藤井竜王・名人下し八冠ドリームは持ち越しに 第10期叡王戦本戦トーナメント

伊藤匠叡王への挑戦権を争う第10期叡王戦(主催:株式会社不二家)は本戦トーナメントが大詰め。2月25日(火)には準決勝の藤井聡太竜王・名人―糸谷哲郎八段の一戦が関西将棋会館で行われました。対局の結果、横歩取りのねじり合いから抜け出した糸谷八段が100手で勝利。難敵を下して挑戦者決定戦にコマを進めています。

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■9度目の正直なるか
藤井竜王・名人は週末に石川県で行われた棋王戦第2局から中2日の過密日程。9度目となった両者の対決はここまで対藤井戦未勝利の糸谷八段に初日が出るかに注目が集まりました。振り駒が行われた対局は後手となった糸谷八段の注文で横歩取りに進展。青野流への対策を打ち出す戦い方は両者の間で2022年に戦われたA級順位戦と同じ構図です。

持ち時間3時間と比較的短時間の棋戦らしく両者決断よく指し手を進めます。飛車を切り飛ばし二枚角で攻めを続ける藤井竜王・名人に対し、糸谷八段は手にした飛車でさっそく反撃開始。続けてじっと8筋に控えの桂を打ったのがその充実ぶりを示す好手でした。先手玉の左辺への逃げ道をふさいでおけば自然と右辺からの攻めが厳しくなるという寸法です。

■一歩千金の寄せ
リードを奪った糸谷八段の手がしなり始めます。追われた銀を捨て守備金をおびき出したのち、ノータイムで香頭に歩を叩いたのが一歩千金の決め手。中住まいの急所に迫るこの攻めが厳しく、ここからは糸谷八段の寄せを見るばかりとなりました。局後の藤井竜王・名人は「見落としがあり早い段階で思わしくない展開になってしまった」と振り返ります。

終局時刻は16時50分、最後は自玉の詰みを認めた藤井竜王・名人が投了。八冠奪還の可能性は今年はお預けとなりました。4年ぶりのタイトル戦登場に向けあと1勝と迫った糸谷八段は「(対藤井戦で)1勝できてよかった。本局と同じように準備したい」と意気込みを語りました。挑戦者決定戦では永瀬拓矢九段―斎藤慎太郎八段戦の勝者と対戦します。


テレビのバラエティ番組で「引退までに一回は(藤井戦で)勝ちたい」と話した糸谷八段、ファンからは「夢が叶ってよかった」と祝福の言葉があふれた(写真は第27期竜王戦七番勝負第5局のもの 撮影・田名後健吾)
水留啓(将棋情報局)

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