渡辺明九段と獺ヶ口笑保人四段が対談!13年前のJ:COM杯で生まれた縁|将棋情報局

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渡辺明九段と獺ヶ口笑保人四段が対談!13年前のJ:COM杯で生まれた縁

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記事のタイトルを読まれて、トップ棋士の渡辺明九段と、棋士になったばかりの獺ヶ口笑保人四段の組み合わせに驚いた方も多いかもしれません。

なんの接点もないように見えるこのお二人ですが、実は浅からぬ縁があるのです。まずはそこから説明いたしましょう。

皆さんは「J:COM杯 3月のライオン 子ども将棋大会」という大会をご存じでしょうか?

J:COMと囲碁・将棋チャンネルが主催する小中学生の将棋大会で、共催は日本将棋連盟、協力は白泉社と、多くの企業や団体の尽力のもとに運営されており、2012年の第1回大会から昨年までで13回開催されています。

とても規模の大きい大会で、毎年、北海道から九州まで全国で地区大会が行われます。
筆者は昨年、仙台で行われた東北大会にお邪魔したのですが、まず会場がとても広く、スタッフの数が多いことに驚きました。さらに、お菓子がもらえるアンケートコーナー、『3月のライオン』の立ち読みコーナー、どうぶつ将棋コーナー、棋士や女流棋士による指導対局コーナーなど、子どもたちが楽しめるように工夫されていました。


会場の様子。ゆったりしている


指導対局の様子。子どもの目線で教える山川泰熙四段と正座で指導を受ける男の子


参加する子どもたちを眺めてみると、身長がバラバラであることに気づきます。これはJ:COM杯が小中学生の混合大会だからです。小学1年生から中学3年生までが幅広く参加できる全国規模の大会は他になく、J:COM杯が唯一の大会となっています。

また、全国大会に続く真剣勝負の場である「全国クラス」のほかに、将棋を楽しむことを目的とした「交流クラス」が用意されていて、将棋を始めたばかりの子どもたちも楽しめるようになっていました。子どもたちのチャレンジを応援する、というコンセプトのもとで様々な工夫がなされていて、「いい大会だなぁ」と感嘆している自分がいました。


交流クラスの様子。とても楽しそう

地区大会で優勝した選手は東京で行われる全国大会に出場できます。昨年の全国大会は将棋会館で行われ、16人の代表選手たちが熱い戦いを繰り広げました。予選リーグ、決勝トーナメントを勝ち抜いて、中学3年生の木村橙哉さん(関西大会2ブロック代表)が見事に優勝して幕を閉じました。


全国大会決勝の様子

・・・さて、皆さんがJ:COM杯という大会をご理解していただいたところで、ここからが本題です。

先ほども述べた通り、本大会には13年の歴史がありますので、全国大会出場者の中から、3名の棋士・4名の女流棋士が活躍しています。

そして何を隠そう、このJ:COM杯の第1回優勝者が獺ヶ口笑保人四段なのです!

当時中学1年生だった獺ヶ口少年は大阪大会で優勝し、全国大会でも決勝戦まで勝ち進みます。
J:COM杯の決勝の模様は囲碁・将棋チャンネルで放送されるのですが、その際に大会の審判長になった棋士が大盤解説を務めます。そして獺ヶ口四段が出場した第1回大会の審判長こそ渡辺明九段だったのです。

ついに渡辺九段と獺ヶ口四段がつながりました。

当時竜王だった渡辺九段は中学1年生の獺ヶ口少年にとってまさに雲の上の存在だったことでしょう。
決勝戦では、渡辺九段が感心する指し回しを見せた獺ヶ口少年が見事に初代チャンピオンに輝きました。

※第1回大会の結果や対局の動画はこちらでご覧いただけます。
https://www2.myjcom.jp/special/user/event/kids-shogi/past/2012.shtml

全国大会で優勝したことで自信をつけた獺ヶ口少年はその後、奨励会に入会します。そして厳しい戦いを勝ち抜いて、ついに棋士になる夢をつかみとりました。J:COM杯の優勝者が棋士になったことはこれまでになく、獺ヶ口四段が初めてです。

そして第1回大会から13年の時を経て、昨年の全国大会で渡辺九段と獺ヶ口四段は審判長とゲスト棋士として再会を果たします。
解説者と選手だった二人が同じ棋士として再会することになろうとは、両者にとって感慨深いものがあっただろうと思います。


全国大会の表彰式の様子。左から獺ヶ口四段、準優勝の西彩之介さん、優勝の木村橙哉さん、渡辺九段、香川愛生女流四段
表彰式の後で、渡辺九段と獺ヶ口四段の対談が行われました。
ここではその模様をお伝えしたいと思います。



――第1回大会のことは覚えていますか?

渡辺「なんとなくですが覚えています。獺ヶ口さんは苗字が特徴的なので記憶に残っていますね。奨励会に入られてからも専門誌で成績表を見たときにパッと目が行くので、『あのときの子がここまで上がったんだな』と思って見ていました」

獺ヶ口「決勝戦を渡辺先生が解説してくださって、感想戦の中で渡辺先生から『こう指されたらどうするつもりだった?』と聞かれる場面がありました。僕がそれに対して確か『▲6二金です』と答えたのですが、それを渡辺先生にほめていただいたことがすごく印象に残っています」

(第1回大会の動画を二人で視聴)

第1回大会でインタビューに答える獺ヶ口少年
提供:囲碁・将棋チャンネル

 

獺ヶ口「すごく若いですね。全国大会に出たのもこの大会が初めてだったので、まさか優勝できるとは思いませんでした」

渡辺「獺ヶ口さんがかわいいなという印象です(笑)。鳩森八幡神社で大会が行われたのが珍しいことで、そういえばそうだったなと思い出しました」

――今回の大会は将棋会館で行われており、準決勝は特別対局室での対局となります。

獺ヶ口「私が特別対局室で将棋を指したのは奨励会の有段者になってからで、初めてのときは入るだけで緊張しました。由緒正しい場所ですので背筋が伸びる思いだったことを覚えています」

渡辺「準決勝まで行くと特別対局室で将棋が指せるということでスペシャル感がありますし、対局できた選手にとってはいい思い出になったと思います」

――J:COM杯という大会の意義についてどうお考えでしょうか。

獺ヶ口「J:COM杯というのは大きな大会で、第1回大会で優勝できたことは自信になりました。奨励会に入ってから順調にいかないことが多くて、くじけそうになったこともあったのですが、そのときにJ:COM杯での優勝が心の支えになりました。つらいときに将棋に対するパッションを取り戻せたのも優勝した経験があったからだと思います」

渡辺「参加する子どもたちは普段から道場やインターネットでも将棋を指していると思いますが、大会という舞台があるからこそ普段の練習もしっかり取り組むようになります。また、大会の結果は人それぞれですが、その結果を踏まえて次に向かっていく過程はとても大事なものです。こういった大きな大会を開催していただくのは大変ありがたいことだと思っています」

――コロナ禍の中でも途切れず続いている大会です。

獺ヶ口「本当にありがたいことで、プロになって今回13年ぶりに大会に戻ってきましたが、何か母校に帰ってきたようなほっとした気持ちになりました。子どもたちにとって貴重な場となるので、次世代の将棋ファンを増やしていくためにもこの大会が末永く続いていってほしいなと思っています」

――J:COMでは厳しい奨励会を勝ち抜いた新四段にJ:COM賞を贈っています。

獺ヶ口「東海大会の会場でありがたく受け取らせていただきました。立派な贈呈式もありまして感謝しております。私のこれまでの将棋人生を振り返ってもJ:COM杯で貴重な対局の機会を与えていただきましたし、J:COM様からは奨励会に対しても支援をいただいています。そして今回J:COM賞をいただくことができて、本当に深い縁を感じておりますし、大変感謝しております」

渡辺「奨励会員やプロになりたての新四段が表彰される場面というのはそれほど多くないので、表彰していただくことで明日への活力につながる部分はあると思います。J:COM賞の取り組みはありがたい限りです」

――未来のために子ども将棋大会が担う役割とはどんなものでしょうか。

渡辺「将棋は幼稚園の年少くらいから始めることができますが、最初の頃はなかなか相手への思いやりや礼儀を学ぶのはなかなか難しいことですし、教えるのも大変です。そういった中で、大会があることで周りのみんなもやっていますから自然と『負けました』と言って頭を下げることもできるようになる。対人のコミュニケーションが自然に学べる場として、将棋が好きという同じ志を持ったお子さんが集まる大会というのは大変有意義なものだと思っています」


――今後のJ:COM杯も盛り上げていただきたく、メッセージをいただけますか?

獺ヶ口「もちろんです。私はまだ棋士になったばかりで大きなことは言えないですけど、私が棋士として活躍すれば『J:COM出身の棋士が活躍した』と言われることにつながるので、そういったことも目標の一つとして頑張っていきたいと思います」


――渡辺九段、獺ヶ口四段ありがとうございました。

渡辺・獺ヶ口「ありがとうございました」


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……いかがでしたでしょうか?
獺ヶ口四段がご自分のことを「J:COM出身の棋士」と言っているのが面白いですね。それだけJ:COM杯との深いつながりを感じているということでしょう。
渡辺九段も大きな視点で子ども大会の素晴らしさを語っていて、さすがでした。

J:COM杯が今後も長きにわたって続いていけば、たくさんの子どもたちが将棋を楽しんでくれることでしょう。その中で、今回の渡辺九段と獺ヶ口四段のようなドラマチックな縁が生まれることを期待しています。

また、この渡辺九段と獺ヶ口四段の対談の模様は囲碁・将棋チャンネルにて2月8日(土)夜8時から放送されます。J:COMのコミュニティチャンネル「J:テレ」でも2月16日(日)夜11時15分から放送されます。ぜひご視聴ください。

 
「J:テレ」について
<チャンネル番号> 札幌・仙台・関東:10ch、関西・福岡:12ch、下関:111ch、熊本:11ch
<視聴可能エリア> 全国のJ:COMサービスエリア
「J:COM」の有料サービスの加入・未加入を問わず、「J:COM」のネットワークが接続されている建物にお住まいであれば、無料でご視聴いただけます。
視聴可能エリアを確認する https://www.jcom.co.jp/area_search/  
※サービスエリア内でも一部ご視聴になれない地域があります。


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