変調かき消す胆力勝負 永瀬九段がライバルに快勝で挑戦に名乗り 第83期順位戦A級8回戦|将棋情報局

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変調かき消す胆力勝負 永瀬九段がライバルに快勝で挑戦に名乗り 第83期順位戦A級8回戦

第83期順位戦A級(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は8回戦全5局の一斉対局が東西の将棋会館で行われました。このうち東京・将棋会館で行われた永瀬拓矢九段ー千田翔太八段の一戦は127手で永瀬九段が勝利。千田八段得意の右玉を封じて今期5勝目を挙げています。

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■混戦の挑戦権争い
永瀬九段4勝2敗、千田八段4勝3敗で迎えたいわゆる「ラス前」は挑戦権争いの山場。永瀬九段は休場中だった渡辺九段との一戦を残していますが、いずれにせよ5勝2敗で暫定首位を走る佐藤天彦九段を追うために両者負けられない戦いです。永瀬九段の先手番で始まった対局は角換わりへ。

後手の千田八段が選んだのは右玉の持久戦策。前節の佐々木勇気八段戦で用いて快勝を収めている作戦で、千日手も辞さない待機策を披露。この間に自玉を穴熊の堅陣に収めた永瀬九段が飛車先の歩交換に出たとき、千田八段は右玉の常とう手段となる桂頭攻めで局面を動かしにかかりました。

■変調乗り越え見事な着地
盤上右方での激しい攻防が一段落した局面は永瀬九段が自陣に引いた竜を、千田八段が敵陣に作ったと金を主張する展開で互角の終盤戦。丁寧な指し回しで徐々にペースをつかんだのは永瀬九段のほうでしたが、千田八段の勝負手を見て手が止まります。左辺の端攻めと中央のと金攻めの両方を見せられては変調の雰囲気です。

冷えたペットボトルを何度か頬に当てた永瀬九段は開き直って攻め合いを志向。23時前、終盤戦の第二幕が始まった合図でした。盤上全体に飛び火した戦いは、それでも永瀬九段の制するところとなります。後手の攻めに見切りをつけて3筋にと金を作ったのが待望の反撃で、ここは永瀬九段の正確な速度計算が光りました。

終局時刻は翌29日0時25分、最後は自玉の詰みを認めた千田八段が投了。苦境の終盤戦をなんとか踏みとどまった永瀬九段は貴重な5勝目を挙げました。この日の結果を受け名人挑戦の可能性は佐藤九段(6勝2敗)、永瀬九段(5勝2敗)、増田康宏八段(5勝3敗)の3名に絞られています。


永瀬九段の最終戦の相手は増田八段、大一番となりそうだ(写真は第74期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグ戦プレーオフの時のもの 撮影:編集部)
水留啓(将棋情報局)

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