2024.11.05
『藤井聡太の角換わり』棋書アンバサダーによるレビュー 竹中健一様
『藤井聡太の角換わり』棋書アンバサダーによる第三弾をお届けします!
お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中
『藤井聡太の角換わり』棋書アンバサダー企画
今回、レビューを書いていただいたのは竹中健一様です。
竹中様はアマ名人を獲得されたこともあるアマ強豪です。前2人のレビューにも目を通したうえで、高段者の視点から本書の感想を送ってくださいました。「将棋ガチ勢」ならではのレビューをお楽しみください。
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今回、『藤井聡太の角換わり』の棋書レビューをさせていただくことになりました、竹中健一と申します。最初に私の自己紹介を簡単にさせていただき、その後レビューに入らせていただきたいと思います。
私は奨励会に昭和57年に入会しました。解説の森内俊之先生は同期入会の仲間で、初日の3局目に対戦し、入玉模様の将棋を負けたのが最初の対戦だったと思います。森内先生にとっては奨励会初勝利の一局です。
私は奨励会退会後にアマ名人、アマ準竜王にはなりましたが、その後将棋から離れた生活を10年ほど送り、15年ほど前に復帰してからは再度日本一になりたいとの思いで、プロ棋士や奨励会員と研究会を続けています。そこで最新形に触れることも多くあり、奨励会員もAI研究が主流であること実感しております。
私は居飛車党ですが、昨今の角換わりはAI研究合戦になっているような気がして、どちらかというと自分で避けていたところがあります。詰将棋の解図力を生かして、角換わりをもっと指したら良いと思うとアドバイスを受けたこともあり、最近は角換わりの本も読み漁っていました。先般発刊された徳田先生の『角換わり腰掛け銀の探求』(マイナビ出版)という本も熟読しましたが、こちらはプロ棋士ならではのかなり深い研究が随所に出てきて、角換わりの怖さを感じていたところで、今回の棋書レビュー募集の話を見て、AI系の角換わりの本だろうかと思いつつも、森内先生が執筆されるのであれば是非読んでみたいと思い、応募した次第です。
本書は、角換わりの定跡書ではありません。AIを活用した解説本でもありません。単なる藤井聡太先生の角換わり実戦集とも異なります。題材は藤井聡太先生が八冠獲得するまでの公式戦から角換わりの将棋を合計28局取り上げ、それぞれについてポイントを森内先生が解説するという形式です。
この中には、腰掛け銀以外の戦型(早繰り銀)も含まれており、藤井聡太先生が負けた将棋も含まれています。取り上げられている対局は時系列になっているので、藤井聡太先生および対戦者がそのとき何を角換わりのテーマ図として考えていたか、戦型選択の変遷が分かるようになっています。
1局について6~8ページを使って、ポイントの局面を解説しています。2ページごとにタイトルが書いてありますが、どう考えるべきかという局面の捉え方についての言及も多く、角換わりをこれからマスターしたい方や、角換わりを得意戦法にしたい攻め将棋の方には参考になることが多いです。
例えばこのページ、受け切りに見える△4一角ような手でも、実際にはそれでは勝ちにくいということが分かります。その考え方のもと、実戦がどのように進んでいったのかが次のページに書かれており、なるほど! と唸ることも多くあります。
対局の時期によって3章に分かれていますが、章の終わりには「実戦に生かしたいポイント」として、見開きで4項目ずつ(最終章は8項目)、角換わりを戦ううえでの重要となる考え方が多くまとめられているのがうれしいです。
角換わりは受けているだけでは勝てない戦法という認識がありましたが、その考えを肯定してくれているかのように攻め方の考え方が多くて、勉強になりました。同時に、「相手の攻めを遅らせる」、「攻め筋を読んで受ける」という受けの要素のポイントも入っており、ただ攻めていれば良いのではなく、相手の攻めとの見合いで必要なところはしっかり受けましょう、ということを言われているように感じました。藤井聡太先生および著者の森内先生が受けも非常にうまいということが背景にあるように感じました。
章の終わりには、取り上げたそれぞれの将棋の棋譜が消費時間も含めて掲載されています。消費時間を見ていると、どこまでが想定局面だったのか分かることもあります。当時の角換わりの最新形を採用している対局が多く、その結論が出ないまま今の定跡につながっていることもあります。少し前を思い出して、定跡の変遷を追いかけてみるのも面白い楽しみ方だと思います。
本書のレベルはかなり高いと思いますが、読めばそれだけ強くなると感じた一冊でした。
私はこの一冊を通して、また最近出版された(される)角換わり系の本を読み通して、また角換わりをレパートリーに入れていこうと考えるようになりました。居飛車党で攻め将棋で終盤型の方には角換わりは最高の戦法かもしれません。是非この本でたくさんのいい手を覚えるだけではなく、角換わり将棋の感覚を身につけていただきたいと思います。
この度は棋書レビューに参加する機会をいただき、マイナビ出版様には御礼申し上げます。また機会があれば書いてみたいと思います。
少しでも多くの方にこのレビューが参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
竹中健一
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今回、レビューを書いていただいたのは竹中健一様です。
竹中様はアマ名人を獲得されたこともあるアマ強豪です。前2人のレビューにも目を通したうえで、高段者の視点から本書の感想を送ってくださいました。「将棋ガチ勢」ならではのレビューをお楽しみください。
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今回、『藤井聡太の角換わり』の棋書レビューをさせていただくことになりました、竹中健一と申します。最初に私の自己紹介を簡単にさせていただき、その後レビューに入らせていただきたいと思います。
私は奨励会に昭和57年に入会しました。解説の森内俊之先生は同期入会の仲間で、初日の3局目に対戦し、入玉模様の将棋を負けたのが最初の対戦だったと思います。森内先生にとっては奨励会初勝利の一局です。
私は奨励会退会後にアマ名人、アマ準竜王にはなりましたが、その後将棋から離れた生活を10年ほど送り、15年ほど前に復帰してからは再度日本一になりたいとの思いで、プロ棋士や奨励会員と研究会を続けています。そこで最新形に触れることも多くあり、奨励会員もAI研究が主流であること実感しております。
私は居飛車党ですが、昨今の角換わりはAI研究合戦になっているような気がして、どちらかというと自分で避けていたところがあります。詰将棋の解図力を生かして、角換わりをもっと指したら良いと思うとアドバイスを受けたこともあり、最近は角換わりの本も読み漁っていました。先般発刊された徳田先生の『角換わり腰掛け銀の探求』(マイナビ出版)という本も熟読しましたが、こちらはプロ棋士ならではのかなり深い研究が随所に出てきて、角換わりの怖さを感じていたところで、今回の棋書レビュー募集の話を見て、AI系の角換わりの本だろうかと思いつつも、森内先生が執筆されるのであれば是非読んでみたいと思い、応募した次第です。
本書は、角換わりの定跡書ではありません。AIを活用した解説本でもありません。単なる藤井聡太先生の角換わり実戦集とも異なります。題材は藤井聡太先生が八冠獲得するまでの公式戦から角換わりの将棋を合計28局取り上げ、それぞれについてポイントを森内先生が解説するという形式です。
この中には、腰掛け銀以外の戦型(早繰り銀)も含まれており、藤井聡太先生が負けた将棋も含まれています。取り上げられている対局は時系列になっているので、藤井聡太先生および対戦者がそのとき何を角換わりのテーマ図として考えていたか、戦型選択の変遷が分かるようになっています。
1局について6~8ページを使って、ポイントの局面を解説しています。2ページごとにタイトルが書いてありますが、どう考えるべきかという局面の捉え方についての言及も多く、角換わりをこれからマスターしたい方や、角換わりを得意戦法にしたい攻め将棋の方には参考になることが多いです。
例えばこのページ、受け切りに見える△4一角ような手でも、実際にはそれでは勝ちにくいということが分かります。その考え方のもと、実戦がどのように進んでいったのかが次のページに書かれており、なるほど! と唸ることも多くあります。
対局の時期によって3章に分かれていますが、章の終わりには「実戦に生かしたいポイント」として、見開きで4項目ずつ(最終章は8項目)、角換わりを戦ううえでの重要となる考え方が多くまとめられているのがうれしいです。
角換わりは受けているだけでは勝てない戦法という認識がありましたが、その考えを肯定してくれているかのように攻め方の考え方が多くて、勉強になりました。同時に、「相手の攻めを遅らせる」、「攻め筋を読んで受ける」という受けの要素のポイントも入っており、ただ攻めていれば良いのではなく、相手の攻めとの見合いで必要なところはしっかり受けましょう、ということを言われているように感じました。藤井聡太先生および著者の森内先生が受けも非常にうまいということが背景にあるように感じました。
章の終わりには、取り上げたそれぞれの将棋の棋譜が消費時間も含めて掲載されています。消費時間を見ていると、どこまでが想定局面だったのか分かることもあります。当時の角換わりの最新形を採用している対局が多く、その結論が出ないまま今の定跡につながっていることもあります。少し前を思い出して、定跡の変遷を追いかけてみるのも面白い楽しみ方だと思います。
本書のレベルはかなり高いと思いますが、読めばそれだけ強くなると感じた一冊でした。
私はこの一冊を通して、また最近出版された(される)角換わり系の本を読み通して、また角換わりをレパートリーに入れていこうと考えるようになりました。居飛車党で攻め将棋で終盤型の方には角換わりは最高の戦法かもしれません。是非この本でたくさんのいい手を覚えるだけではなく、角換わり将棋の感覚を身につけていただきたいと思います。
この度は棋書レビューに参加する機会をいただき、マイナビ出版様には御礼申し上げます。また機会があれば書いてみたいと思います。
少しでも多くの方にこのレビューが参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
竹中健一
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