2024.10.01
【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2024年10月編
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3局指して2勝1敗でした。ここまですべて先手番が勝っていて、どちらが後手番でブレイクするかが注目ポイントでしょうか。
それでは、ここまでの3局を順に振り返っていきましょう。
さぁ、竜王戦でございます。優勝賞金4400万円という将棋界の最高棋戦です。藤井先生はここまで3連覇中。今期の挑戦者は佐々木勇気八段となりました。
佐々木先生と言えばやはり思い出されるのは藤井先生の連勝記録を29で止めた将棋。
対藤井戦に並々ならぬ闘志を燃やす棋士で、その才能は以前から高く評価されてきました。
30歳でのタイトル戦初登場は遅かった印象もありますが、ついにその才能が開花したということで、藤井先生にとって強敵であることは間違いありません。
注目の第1局は例年通りのセルリアンタワー能楽堂。この名前を聞くと「竜王戦」という感じがします。紫式部と聞いて『源氏物語』が出てくるようなもんです。
前日のインタビューで藤井先生は
「今年はこれまで戦型の選択も含めて試行錯誤の時期になっていて、今まで指していなかった形を指していて。もちろんうまくいかなかったこともありましたが、経験としてはよかったと思っていますし、今後に生かしていければと思っています」とおっしゃっていました。
私も今期の藤井先生の戦いについて同じような印象をいだいていたので、なんかうれしかったです。試行錯誤の間は大変だったと思いますが、今はそれが実を結んで良かったなと思います。
第1章 角換わり
それでは将棋の話にいきましょう。第1局は藤井先生が先手番となりましたので、目指すは当然角換わりです。佐々木先生も当然わかっていたでしょう、用意の新構想をぶつけました。藤井スペシャルの形になる前の早い段階で6筋の位を取るのが狙っていた手で、前例の少ない将棋になりました。
佐々木先生はこの形を深く研究してきたのだと思いますが、藤井先生も角換わりのスペシャリスト、もちろん研究範囲だったようで、難しい中盤戦が続きます。
第2章 タイムトラベラー聡太
この将棋は中盤がとても面白くて、先手、後手ともに自分から交換した歩を元の位置に打ち直し、さらに出ていった銀がどんどんバックしていきます。
逆再生のVTRを見ているように時間が逆行する展開で、見ているほうはまったくついていけませんでした(笑)。しかし、両者とも特に違和感なく進んでいたので、やっぱり最高峰の戦いはすごいんだなぁと感動しました。
特に中盤、佐々木先生に△8七角と打って攻める手が見えていたのですが、藤井先生はそれを受けることなく「打ってこい」という姿勢。対して佐々木先生もそれを見越して角を打たずにじっと3筋に歩を打ち直した場面は見応えがありました。
藤井「どうぞ打ってください」
佐々木「いや、打ちませんよ」
という感じでしょうか。
棋は対話なり。盤上の物語の価値は不変でございます。
第3章 流れが変わる
互角で1日目が終わって2日目へ。封じ手を入れる封筒に普通は「佐々木」と2か所に書くところで「佐々木」「勇気」と書くという新手が話題になりました。さすが佐々木先生です。
ただ、2日目に入ってから流れが変わります。藤井先生が端を攻めたのが佐々木先生の読みになかったようで、形勢が藤井先生に傾きました。角を好位置に打って挟撃態勢を築きます。そしてここからが圧巻でした。佐々木先生の攻めをすべて手抜いて(無視して)踏み込んでいきます。最後も解説の棋士が安全な勝ち方を予想する中でタダのところに王手で金を叩き込んであっという間に佐々木玉を受けなしに追い込みました。
駒をたくさん渡すので怖いんですが、自玉が詰まないことを読み切っています。「これが藤井聡太の勝ち方じゃ!」と言わんばかりの最速の寄せ。カッコいいです。
話はそれますが、以前佐藤天彦九段にインタビューさせていただいたときに「終盤の勝ち方に棋士の個性が表れる」という話をされていました。最速で勝ちにいく場合、自分の玉が詰まされてしまったら目も当てられないのですが、全ての変化を読み切れるのであれば、逆にまぎれのない一番確実な勝ち方になります。藤井先生はこういう勝ち方が多いので、まさに個性が出ているなぁという感じがします。逆に木村先生のように受け切って勝ちにいく棋士もいるので面白いところです。
と、いうことで「棋士、それぞれの勝ち方」と題した連載が『将棋世界』にあれば面白いんじゃないかと考えた次第です。第1回は藤井聡太編で(^^)
第4章 楽しかった
鮮烈の金捨てを見て佐々木先生の投了。注目の第1局は藤井先生の快勝となりました。やはり藤井先生の先手角換わりは無敵、そう思わせる内容でした。
佐々木先生は敗れはしたもののタイトル戦の空気を存分に味わったようで「言葉が変かもしれないが、楽しかった」とおっしゃっていました。
昼食のダブル注文やシュークリーム4連発など、盤外でもファンを楽しませてくれた佐々木先生、話題の多いシリーズになりそうだと思わせてくれた第1局でした。
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皆さんこんにちは。「間違いを犯したことのない人とは、何も新しいことをしていない人だ。」でおなじみの編集部島田です。
将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第26弾です。秋ですね。秋と言えばサンマ。久しぶりに食べるとおいしくてびっくりします。そういえば藤井先生の好きな魚って何なんですかね? 実は聞いたことがないような気がします。穴子ですかねー。次回の将棋年鑑の質問の候補ということにしておきましょう。
10月は棋聖の就位式に参加してきました。ファンの方が250人も集まっていてすごかったです。藤井先生が入退場のときに会場の外周をぐるっと回って登壇されたのがいいサービスでした。あとは、フジテレビの遠藤取締役がアベマの控室での辛口の藤井先生のことを話題にして、苦笑いしている藤井先生がよかったです。最近前髪がまた伸びたようで、手で髪を上げる仕草がまたセクシーでした(全部ほめるスタイル)。
そしてスピーチはいつもながら完璧。永世称号を獲得して「より一層の研鑽を積んでいきたい」とおっしゃっていたので、私も及ばずながら頑張っていきたいと思います。
というわけで、10月の藤井先生の対局を振り返っていきましょう!
10月の対局まとめ
5、6日 竜王戦七番勝負第1局 佐々木勇気八段戦 勝ち
19,20日 竜王戦七番勝負第2局 佐々木勇気八段戦 負け
25、26日 竜王戦七番勝負第3局 佐々木勇気八段戦 勝ち
10月は佐々木勇気八段との竜王戦が開幕!5、6日 竜王戦七番勝負第1局 佐々木勇気八段戦 勝ち
19,20日 竜王戦七番勝負第2局 佐々木勇気八段戦 負け
25、26日 竜王戦七番勝負第3局 佐々木勇気八段戦 勝ち
3局指して2勝1敗でした。ここまですべて先手番が勝っていて、どちらが後手番でブレイクするかが注目ポイントでしょうか。
それでは、ここまでの3局を順に振り返っていきましょう。
伝家の宝刀、角換わりで先勝
5、6日 佐々木勇気八段戦
第37期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)第1局
さぁ、竜王戦でございます。優勝賞金4400万円という将棋界の最高棋戦です。藤井先生はここまで3連覇中。今期の挑戦者は佐々木勇気八段となりました。
佐々木先生と言えばやはり思い出されるのは藤井先生の連勝記録を29で止めた将棋。
対藤井戦に並々ならぬ闘志を燃やす棋士で、その才能は以前から高く評価されてきました。
30歳でのタイトル戦初登場は遅かった印象もありますが、ついにその才能が開花したということで、藤井先生にとって強敵であることは間違いありません。
注目の第1局は例年通りのセルリアンタワー能楽堂。この名前を聞くと「竜王戦」という感じがします。紫式部と聞いて『源氏物語』が出てくるようなもんです。
前日のインタビューで藤井先生は
「今年はこれまで戦型の選択も含めて試行錯誤の時期になっていて、今まで指していなかった形を指していて。もちろんうまくいかなかったこともありましたが、経験としてはよかったと思っていますし、今後に生かしていければと思っています」とおっしゃっていました。
私も今期の藤井先生の戦いについて同じような印象をいだいていたので、なんかうれしかったです。試行錯誤の間は大変だったと思いますが、今はそれが実を結んで良かったなと思います。
第1章 角換わり
それでは将棋の話にいきましょう。第1局は藤井先生が先手番となりましたので、目指すは当然角換わりです。佐々木先生も当然わかっていたでしょう、用意の新構想をぶつけました。藤井スペシャルの形になる前の早い段階で6筋の位を取るのが狙っていた手で、前例の少ない将棋になりました。
佐々木先生はこの形を深く研究してきたのだと思いますが、藤井先生も角換わりのスペシャリスト、もちろん研究範囲だったようで、難しい中盤戦が続きます。
第2章 タイムトラベラー聡太
この将棋は中盤がとても面白くて、先手、後手ともに自分から交換した歩を元の位置に打ち直し、さらに出ていった銀がどんどんバックしていきます。
逆再生のVTRを見ているように時間が逆行する展開で、見ているほうはまったくついていけませんでした(笑)。しかし、両者とも特に違和感なく進んでいたので、やっぱり最高峰の戦いはすごいんだなぁと感動しました。
特に中盤、佐々木先生に△8七角と打って攻める手が見えていたのですが、藤井先生はそれを受けることなく「打ってこい」という姿勢。対して佐々木先生もそれを見越して角を打たずにじっと3筋に歩を打ち直した場面は見応えがありました。
藤井「どうぞ打ってください」
佐々木「いや、打ちませんよ」
という感じでしょうか。
棋は対話なり。盤上の物語の価値は不変でございます。
第3章 流れが変わる
互角で1日目が終わって2日目へ。封じ手を入れる封筒に普通は「佐々木」と2か所に書くところで「佐々木」「勇気」と書くという新手が話題になりました。さすが佐々木先生です。
ただ、2日目に入ってから流れが変わります。藤井先生が端を攻めたのが佐々木先生の読みになかったようで、形勢が藤井先生に傾きました。角を好位置に打って挟撃態勢を築きます。そしてここからが圧巻でした。佐々木先生の攻めをすべて手抜いて(無視して)踏み込んでいきます。最後も解説の棋士が安全な勝ち方を予想する中でタダのところに王手で金を叩き込んであっという間に佐々木玉を受けなしに追い込みました。
駒をたくさん渡すので怖いんですが、自玉が詰まないことを読み切っています。「これが藤井聡太の勝ち方じゃ!」と言わんばかりの最速の寄せ。カッコいいです。
話はそれますが、以前佐藤天彦九段にインタビューさせていただいたときに「終盤の勝ち方に棋士の個性が表れる」という話をされていました。最速で勝ちにいく場合、自分の玉が詰まされてしまったら目も当てられないのですが、全ての変化を読み切れるのであれば、逆にまぎれのない一番確実な勝ち方になります。藤井先生はこういう勝ち方が多いので、まさに個性が出ているなぁという感じがします。逆に木村先生のように受け切って勝ちにいく棋士もいるので面白いところです。
と、いうことで「棋士、それぞれの勝ち方」と題した連載が『将棋世界』にあれば面白いんじゃないかと考えた次第です。第1回は藤井聡太編で(^^)
第4章 楽しかった
鮮烈の金捨てを見て佐々木先生の投了。注目の第1局は藤井先生の快勝となりました。やはり藤井先生の先手角換わりは無敵、そう思わせる内容でした。
佐々木先生は敗れはしたもののタイトル戦の空気を存分に味わったようで「言葉が変かもしれないが、楽しかった」とおっしゃっていました。
昼食のダブル注文やシュークリーム4連発など、盤外でもファンを楽しませてくれた佐々木先生、話題の多いシリーズになりそうだと思わせてくれた第1局でした。
矢倉で完敗
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