【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2024年9月編|将棋情報局

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【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2024年9月編

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皆さんこんにちは。「もしも相手が絶対かなわないような強敵だとしても、勝とうとしなきゃ勝てないよ」でおなじみの編集部島田です。

将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第25弾です。25は4倍すると100になるので計算しやすい数字です(だから何)。夏が終わって急に涼しくなった、それどころか寒くなったような気がする今日この頃。皆さん、元気に過ごされていますでしょうか?

大谷翔平選手が54本塁打59盗塁の大記録を達成して、日本の総理大臣も岸田さんから石破さんになりましたが、今後も変わらず将棋観戦にいそしんでいく所存です。

9月は東京の新将棋会館のお披露目式、からの100周年記念パーティーに参加してまいりました。
新会館はピカピカなのでぜひ皆さん行ってみてください。1階の半分に壁がなく、柱だけで支える構造になっており開放感があります。これはル・コルビジェが編み出した「ピロティ構造」である、ということを世界遺産検定4級の勉強で学びました。

ぜひ、皆さんも現地に足を運んでいただいて「お~。ピロティ構造~」と感嘆していただければ幸いです(そこ?)。

しょーもない前置きはこれぐらいにして、そろそろ9月の藤井先生の対局を振り返っていきましょう!

9月の対局まとめ
4日 王座戦五番勝負第1局 永瀬拓矢九段戦 勝ち
18日 王座戦五番勝負第2局 永瀬拓矢九段戦 勝ち
21日 将棋日本シリーズJTプロ公式戦 佐々木大地七段戦 勝ち
30日 王座戦五番勝負第2局 永瀬拓矢九段戦 勝ち
9月は4戦全勝でした。知ってはいましたが、強いです。今年度のはじめは不調気味で勝率も5割くらいでしたが、ここへきて勝ちまくっており例年通りの8割という数字が見えてきました。王位戦の後半から絶好調モードに入っている感じがします。

タイトル戦としては皆さんご存知の通り永瀬先生との王座戦五番勝負が行われ、3連勝で見事に防衛となりました。ストレート勝ちではありますが、内容的にはとても濃密なシリーズでした。
それでは、順に振り返っていきましょう。

3三金型で先勝!


4日 永瀬拓矢九段戦
第72期王座戦五番勝負(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)第1局

序章 立場を替えて
9月から開幕した王座戦。前期は劇的な大逆転で藤井八冠が誕生する舞台となりました。永瀬先生が頭をかきむしる姿がいまでも印象に残っています。
今期は立場を替えて藤井先生がタイトル保持者、永瀬先生が挑戦者ということになりました。同じ舞台で同じカードになるということで永瀬先生も「運命的なものを感じる」とおっしゃっていました。中京テレビのインタビューでは藤井愛が炸裂していて、さすがの私も「負けた」と思いました(笑)。

https://www.youtube.com/watch?v=Zfm7DS_vUR4

特に印象的だったのは藤井先生の礼が深いという話で、「藤井さんは相手に対する礼だけでなく、将棋自体に対する礼もある」とおっしゃっていたところ。さすが永瀬先生、わかってらっしゃると思いました。

一方の藤井先生は自身の調子について「比較的いい状態で迎えられているのかなと思います」とおっしゃっていました。この発言は珍しい。藤井先生がこう言うからには確かな手応えがあるのだと推察しました。

さて、第1局の対局場は前期と同じ「陣屋」。将棋ファンにはすっかりおなじみの対局場で永瀬先生の「聡」の色紙が飾られていますし、何といってもカレーが有名です。対局とは関係ないですが、現在マイナビ出版では「陣屋カレーツアー」を陣屋さん協力のもとで企画しておりますので、皆さん楽しみにしていてください。

将棋で有名な旅館やホテルは全国にあるので、陣屋さんが好評だったら、こういうツアーが他にもできればいいなぁと考えています(そうすれば、私も仕事で全国の聖地に行けるという圧倒的打算)。

第1章 不屈の△3三金型早繰り銀
さて、将棋の話をしましょう。本局は永瀬先生の先手で角換わりとなりました。お互いに絶対の自信を持っている戦型なので、大本命の形です。後手番の藤井先生がどう対応するかが注目でしたが、ここで持ってきたのがまさかの「△3三金型早繰り銀」。
これは伊藤先生との叡王戦第2局で採用して敗れた形。負けた戦法を改良して再度ぶつけてくるあたりに藤井先生の負けず嫌いな一面を見た気がしました。

「△3三金型早繰り銀が弱いんじゃねぇ、俺が弱かっただけだ!」というのは藤井先生が絶対に言わないセリフでしょうが、敗れはしたもののこの戦法に手ごたえは感じていたんだと思います。

これには永瀬先生も意表と突かれた、、、と、思うじゃないですか。永瀬先生ですからね、人間をやめる覚悟で臨んでいる人に死角などありませんでした。驚くべきことに45手目の馬を作るところまで研究範囲だったと言います。

第2章 互角の中盤を抜け出したのはあなた
山あり谷ありの将棋だったり、すごい手が出た将棋は解説が書きやすいんですけど、本局は長―い中盤が続いて、じわじわと藤井先生が良くなっていったので描写するのが難しい(笑)。

あえてポイントを上げるとすれば、永瀬先生が飛車の前に香車を打って2筋を狙った場面。この攻めも迫力満点だったのですが、それ以上に藤井先生の玉に直接働きかけた攻撃の方が厳しかった、ということでしょうか。

未知の局面での指し手の正確性は藤井先生のストロングポイント。こういう手探りの状態が長く続く将棋は藤井先生の良さが出やすいと思います。

藤井先生がリードを奪いましたが、そう簡単に土俵を割る永瀬先生ではありません。自陣に銀を打って徹底抗戦の構えです。「まだまだこれからぁ!」という感じ。
それに対して藤井先生が飛車を取りに行ったのがスマートな勝ち方でした。手番を渡すので怖いんですが、藤井先生は相手から有効な攻めがないことを見切っていました。取った飛車を打つ手がすぐに詰めろになるので藤井先生の1手勝ちコースです。

最後に永瀬先生の角捨ての勝負手も出ましたが、それも冷静にかわす藤井先生。
手段が完全になくなったところで永瀬先生の投了となりました。

第3章 今宵、あの頃のバーで
後手番で先勝ということで藤井先生にとっては幸先のいいスタートになりました。
また、「幅広い戦型に対応する」というのが最近の藤井先生のテーマだったと思うので、それを実践したという意味でも大きな一局でした。

正直、叡王戦の△3三金型早繰り銀は伊藤先生の深い研究を避けた、というネガティブな印象がありましたが、この王座戦の△3三金型は「自分の将棋の領域を広げたのでそれを試した」という積極的な感じを受けました(個人の感想です)。

あと、やっぱり良かったのは感想戦。将棋の真理を探究する、誰も触れない二人だけの国がそこにありました。ルララ宇宙の風に乗るです。終始笑顔で、対局とのギャップが良かったですね。

先日、陣屋カレーツアーの下見で対局室「松風」にお邪魔した際に、「ここでやってたんだなぁ」と思って感慨にふけっている島田がいました。


対局場の陣屋「松風」
 

ルク・ドゥ・フジイユ

 
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