【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2024年8月編|将棋情報局

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【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2024年8月編

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皆さんこんにちは。「何もかも失ったと思える瞬間でさえ、あなたの未来は残っている」でおなじみの編集部島田です。

将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第24弾です。第24弾ということは丸2年ですね。最初はお試し企画だったこの連載も皆さんの温かい応援のおかげで2年続けることができました。ありがとうございました。

これを区切りにしてこの連載もそろそろ・・・と思うじゃないですか。私の体力と会社が許す限り本連載は続いていきますので、3年目も引き続きよろしくお願いいたします!

先月、我が家のクーラーが壊れた、という報告をさせていただきましたが、結局壊れたまま今夏の終局を迎えそうです。
次の対局(冬)が始まる前になんとかエアコンを導入してほしいものです。うちの大蔵大臣(古い)がそろそろ重い腰をあげてくれることを祈ります。

さて、今月は叡王就位式にお邪魔してきました。伊藤匠新叡王の誕生ということで、多くの関係者がご参加されておりました。師匠の宮田先生のスピーチと伊藤先生の謝辞がユーモアにあふれていてとても良かったです。また、伊藤先生が最終局について「一分将棋の緊迫した場面で藤井さんに対局することができたのは、私にとって貴重な財産になった」とおっしゃっていたのはジーンときました。

藤井先生がいなかったらもっと活躍していたであろうと周りは思うんですが、伊藤先生は一貫して藤井先生が同時代にいてくれたことに感謝していて、藤井さんがいたから自分はここまでこれた、ということをおっしゃっています。聞くたびに感動しちゃいますね。

これからも藤井―伊藤のタイトル戦は何度も見られると思います。
二人の戦いが今後どうなっていくか、改めて楽しみだと感じた叡王就位式でした。

さて、前置きが長くなりました。
そろそろ8月の藤井先生の対局の振り返りにまいりましょう!
 

8月の対局まとめ
19、20日 王位戦七番勝負第4局 渡辺明九段戦 勝ち
27、28日 王位戦七番勝負第5局 渡辺明九段戦 勝ち
いろいろあったような気がしたんですが、8月は2局しかなかったのですね。もっと対局してなかったっけ?と思ったら、それはアベマトーナメントでした(;^_^A

皆さんご存知の通り、王位戦第4局、第5局で連勝して、見事王位防衛となりました。

では、順に振り返っていきましょう。

倉中飛車で完勝!防衛に王手


19、20日 渡辺明九段戦
伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦七番勝負(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)第4局

序章 子どもチャレンジ
藤井王位の2勝1敗で迎えた王位戦七番勝負第4局は佐賀県唐津市の「洋々閣」で行われました。唐津市は佐賀県の上の方に位置していて海に面しているため、海の幸が美味しいらしいです。さらに、佐賀牛でも有名で、魚も肉もうまいという最高の場所。藤井先生も前日のインタビューで「おいしいものがたくさんあり、楽しみにしている」とおっしゃっていました。

前日のイベントで、とてもよかったのが恒例になっている西日本新聞こども記者の皆さんによるインタビュー。渡辺明九段の場を和ませるトーク術はさすがでした。そして藤井先生が子ども記者の質問にいつもと変わらず丁寧に答えていたのには感動しましたね。さらに、子どもたちが藤井先生が答えてくれたことに「ありがとうございました」とお礼を言ったのに対して一人一人に「ありがとうございました」と返していたのには思わず泣きそうになりました。「質問してくれてありがとう」ということなんだと思いますが、なかなか言えるものではないです。記者として扱ってくれて、小学生たちもうれしかったと思います。

私もちゃんとインタビューしなきゃならんな、と思った2024年の夏でした。
渡辺先生が「素晴らしい企画だ」とおっしゃってましたが、大人記者の質問にウンザリしてるんでしょうね(;^_^A
私も渡辺先生に「いい質問ですね」と褒められるように精進します。


第1章 矢倉
さて、将棋を見ていきましょう。先手番になった渡辺先生の作戦は矢倉でした。第1局(指し直し局)と第2局では先手番で相掛かりの同じ形を採用されていて、2局とも藤井先生からリードを奪っていました。なので、ここでも相掛かりなのかな?と思っていたのですが、少し意外でした。
もちろん2局リードされた藤井先生も相掛かりについては相当警戒していたはずですから、その研究を外す、という意味もあったのだと思います。この辺りはさすが作戦家の渡辺先生だと思いました。

ただ、そこからの進行は渡辺先生らしからぬものになってしまいました。この将棋には▲渡辺―△佐々木勇気戦(佐々木勝ち)という前例があったのですが、その前例通りに進んで、藤井先生にリードを奪われてしまったためです。
推測するしかありませんが、おそらく渡辺先生の予想が外れたのだと思います。例えば、中飛車にしないで藤井先生が得意とする△7二飛型にしてくるなど、渡辺先生が想定していた局面というのは別にあったのではないでしょうか。

1局しかない前例をしっかり研究してあった藤井先生がすごいとも言えます。相掛かりの対策も用意しながら矢倉も網羅していたとは。
伊藤匠叡王の言葉じゃないですけど、いつ勉強しているんですかね(;^_^A

第2章 ズバンズバン
本局は渡辺先生がご自身のXで「先手番なのに早々と悪くしてしまい、どう粘るかという将棋にしてしまいました」と書かれていたように、早い段階で差がついてしまい、最後までその差が埋まることはありませんでした。

封じ手辺りで渡辺先生に暴れる順(対局後に藤井先生が指摘)もあったようですが、それを指していたとしても藤井先生がリードを保っていたようです。

終盤は藤井先生の独壇場、角を切り、銀を捨てて竜を作ると、少ない駒で攻めをつなげて渡辺先生に粘る余地を与えませんでした。ズバンズバンと最強最速の手順で寄せ切って、本局は藤井先生の快勝となりました。

だいたい、藤井先生が飛車や角を切り始めたら「読みきってますよ」のサインですからね。私なら切られた時点で投了します(そもそも対局することがない)。

第3章 久しぶりの藤井曲線
王位戦はここまで星の上では2勝1敗でしたが、全ての将棋でリードを奪われていて、藤井先生としても内容的にはとても満足のできるものではなかったと思います。

前日のインタビューでも「これまでの3局を振り返ってみると序中盤でリードを奪われてしまう将棋が多かったと感じているので、その辺りでしっかりバランスを保つことを意識して考えていきたいと思います」とおっしゃっていました。

お互いが最善手を指し続けてずっと均衡が保たれるのが藤井先生の目指す「面白い将棋」。自分から形勢のバランスを崩してしまうことを何より嫌う藤井先生ですから、ここまでの3局の内容には忸怩たる思いがあったでしょう。それがこの第4局ではバランスを崩すことなく、久しぶりに完璧な藤井曲線を描く完勝となりました。叡王戦から不調気味だった藤井先生ですが、本局で復活の光が見えた気がしました。
 

手な中盤を制し永世二冠に!

 
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