小山怜央四段、十七世名人を破ってフリークラス脱出「プロになってからの大きな目標だった」|将棋情報局

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小山怜央四段、十七世名人を破ってフリークラス脱出「プロになってからの大きな目標だった」

昨年11月から今年2月にかけて行われた棋士編入試験に合格し、アマチュアからプロ棋士デビューした小山怜央四段が、8月11日に放送された第74回NHK杯トーナメントで谷川浩司九段に勝利し、直近30局で20勝10敗(勝率0.667)の規定成績に達して、フリークラスからC級2組に昇級した。奨励会未経験で順位戦入りした棋士は、戦後初。小山四段は来期の順位戦から参加する。
終局後に行った小山四段へのインタビューの内容を公開する。
【文/田名後健吾 写真提供/日本将棋連盟】

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 ●C級2組昇級おめでとうございます。まず、今日の対局は昇級が懸かる一局ということで、どういう思いで臨まれたんでしょうか。
「そうですね、やっぱりお相手が谷川十七世名人ということもあり、何日か前から〈もうすぐ対局だな〉と日々ドキドキ緊張しながら生きてました」

●対局を振り返っていかがだったでしょうか。
「そうですね、出だしは谷川先生の一手損角換わりということで、全く予定してなかったんですけど、でも過去の研究会とかで指した形の経験を生かして、途中まではまあまあうまく進めることができたと思います。ちょっと途中、読み抜けがあったんですけど、そこで頑張って踏みとどまることができたので、そこは良かったかなとは思いました」

●(フリークラスから)昇級を決められた思いをお聞かせください。
「やっぱりプロになってからの一つの大きな目標でしたし、ここまで本当に長かったので、ほっとしてますね」

●長かったというのは、プロになってから?
「そうですね。一応長いと言っても1年半ぐらいなんですけど。でも気持ち的にはもう……昇級できなきゃ引退だという気持ちがずっとあったので、すごく長くは感じてました」

●昇級というのはやっぱり一つの大きな目標としてずっとやってきたんですよね。
「はい。フリークラスという立場だと、どうしてもそこが一番大きな目標にはなると思います」

●小山さんにとって順位戦を指すというのはどういうものなんでしょうか。
「正直、全く想像がつかないんですけど、でも何て言うんでしょうね、普段から順位戦に参加されてる先生方が深夜まで戦われているのを見ると、これが棋士人生だっていう感じに思うので、そういうのを戦えるのは嬉しいですね」

●C級2組の戦いは来年度からスタートとなりますけども、順位戦への意気込みをお聞かせください。
「そうですね。もちろん一年中モチベーションをしっかり保っていい将棋を指したいというのが一番ですし、体力も必要になってくるので、しっかり付けていきたいと思います」

●谷川十七世名人には、2011年の(東日本大)震災の時に指導対局を受けたことがあるということですけども、そういう方と対戦してみていかがだったでしょうか。
「谷川先生も(1995年の阪神淡路大)震災の被災者だったと思いますので、そういう意味では何か繋がるところも……。東日本大震災の時も来ていただきましたし、何かいろんな面で繋がるものを感じながらといいますか、思いに浸ってはいました。ただ、あの(指導対局の)時は私、(谷川先生に)平手で挑むというけっこう失礼なことをしてしまったので(笑)。そのことばかり頭に入ってしまって、他のことはあんまり考えられなかったですね」

●永世名人に公式戦で挑むっていうところの気持ちはどうだったんでしょうか。
「谷川先生は小さい頃からの大スターの先生だったので、トップ棋士の中でも特別な思いはやっぱりあります」

●そういった大スターに勝たれたというところはいかがでしょうか。
「自分でも何か信じられない思いと言いますか、最後の数手は本当にドキドキしながら指してました」

●一時やや負けが続いていたことがありましたが、今年の初め頃から白星を重ねてこられて、何か掴んだものとかはあるのでしょうか。
「(不調の)原因はある程度は分かっていたんですけど、それを直すのはけっこう時間がかかるところだったので。今勝ててるというのはいろんな要素が……。振り駒も最近、先手が増えてきましたし、本当にいろんな要素が重なってこの結果にはなっていると思うので。今後もいろいろ課題はあるので、その辺はしっかり直していきたいと思います」

●感想戦が終わって、谷川十七世名人が席を離れられる時に、何か言葉を掛けられていましたが。
「谷川先生から『今後も頑張ってください』と激励を。つまり、しっかりやれよっていうことなんだと思うんですけど(笑)。心に刻んでちゃんと頑張らなきゃって思いますね」

●最後の決め手を指すところで、ちょっと手が震えているように見えたんですけど。勝ったと思いましたか。
「たまたまだと思うんですけど。そんな羽生先生(善治九段)みたいな感じで震えたわけではないです(笑)」

●昇級という、当面の目標を果たされたということで、次の目標はどうですか?
「具体的に言うのは難しいんですけど……、本戦入りまでの道のりが長い棋戦での本戦入りというのが一つ大きな目標になります」

●奨励会を経ないで棋士になった人が順位戦を指すというのは戦後初めてです。これからプロを目指す人の励みにもなると思うんですけど、その辺はいかがです?
「それについてはあんまり特別視はしてなかったんです。でも、アマチュアで活躍していくとなると、やっぱり日々将棋に触れることが大事なのかなというふうに思います。これからプロ棋士を目指す人も、目指すからには毎日モチベーションを持ち続けるのが大事だと思います」

【小山四段の成績内訳】※対戦相手の段位は当時のもの
2023/05/31 第13期加古川青流戦 ● 片山史龍三段
2023/06/24 第17回朝日杯    〇 荒田敏史三段
2023/06/30 第9期叡王戦    ● 谷合廣紀四段
2023/07/14 第65期王位戦    ● 井出隼平五段
2023/07/20 第17回朝日杯    ● 金井恒太六段
2023/08/24 第32期銀河戦    〇 谷合廣紀四段
2023/08/24 第32期銀河戦    〇 及川拓馬七段
2023/10/06 第72期王座戦    〇 伊藤沙恵女流四段
2023/11/02 第32期銀河戦    〇 南芳一九段
2023/11/02 第32期銀河戦    ● 黒沢怜生六段
2023/11/07 第72期王座戦    ● 石田直裕五段
2023/12/25 第37期竜王戦6組  〇 西山朋佳女流四冠
2024/01/15 第74期王将戦    ● 泉正樹八段
2024/01/24 第37期竜王戦6組  〇 所司和晴七段
2024/02/01 第50期棋王戦    〇 中座真七段
2024/02/19 第74回NHK杯   〇 高崎一生七段
2024/02/19 第74回NHK杯   〇 渡辺正和六段
2024/02/19 第74回NHK杯   〇 石田直裕五段
2024/02/28 第50期棋王戦    〇 石田直裕五段
2024/03/07 第37回竜王戦6組  〇 上村亘五段
2024/03/15 第74回NHK杯   〇 大石直嗣七段
2024/03/19 第55期新人王戦   ● 山根ことみ女流三段
2024/04/16 第37期竜王戦6組  ● 藤本渚五段
2024/04/26 第50期棋王戦    〇 青嶋未来六段
2024/05/16 第50期棋王戦    ● 池永天志六段
2024/06/05 第14期加古川青流戦 〇 谷合廣紀四段
2024/06/25 第96期棋聖戦    〇 星野良生五段
2024/06/25 第96期棋聖戦    〇 近藤正和七段
2024/06/30 第18回朝日杯    〇 竹内俊弘アマ
2024/07/15 第74回NHK杯   〇 谷川浩司十七世名人
(20勝10敗 0.666) お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中
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