うっかり手がすべった?角換わり腰掛け銀で先手が▲6九玉と引く形を解説!|将棋情報局

将棋情報局

うっかり手がすべった?角換わり腰掛け銀で先手が▲6九玉と引く形を解説!

今回は先後同型の角換わり戦において、▲6九玉と引く形を解説します。
この記事を読めば、プロの公式戦で現れる謎の手待ち合戦の意味が判明します。
角換わりを指す方にはとても勉強になる内容ですし、それ以外の方にも角換わりの奥深さをお伝え出来る記事となっております!

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 皆さんこんにちは。

本記事では、「角換わり腰掛け銀」の指し方をご紹介します。
詳しくは、2024年7月17日に発売の『角換わり腰掛け銀の探究』(徳田拳士)にも載っていますので、チェックしてみてくださいね。


※本稿は、徳田拳士著『角換わり腰掛け銀の探究』の内容をもとに編集部が再構成したものです。
 

先手が▲6九玉と引く形

今回は先後同型の角換わり戦において、▲6九玉と引く形を解説します。

ポイント①先手は△5四銀型で仕掛けたい、後手は△6三銀型で受けたい

▲6九玉と引く形を解説する前に、先手と後手の理想形についてお話します。
これは今回紹介する▲6九玉と引く形以外の変化でも出て来ます。

下図が先手の理想図です。

注目していただきたいのは、先手の玉の位置と後手の玉と銀の位置です。
先手は矢倉囲いに自玉が入城し、かつ後手陣が[△4二玉・△5四銀型]の構えになっています。
後手が△5四銀としていると桂頭が弱点になっており、先手からは2筋の歩交換をした後で▲7五歩~▲7四歩の桂頭攻めが狙えます。

反対に、下図が後手の理想図です。

先ほどと同様、先手の玉の位置と後手の玉と銀の位置に注目してください。
先手の配置は同一ですが、後手は[△4二玉・△6三銀型]になっています。
この配置だと後手は桂頭に隙がなく、▲4五桂から仕掛けられても十分に対抗できます。

このような事情があるので、先手と後手はお互いに下記のような思想を持っています。
・先手は△5四銀型で▲4五桂と仕掛けたい
・後手は△6三銀型で▲4五桂を受けたい

ポイント②▲6九玉で1手ずらして先手の理想図を作る

さて、本題に入ります。
下図が基本図です。


基本図から後手は、△6三銀(第1図)として理想形をつくります。

攻撃力は落ちますが、桂頭をカバーしていて守備的な形です。
ここからの後手の方針としては、基本的に損にならないパスをして形を崩さないのが良いとされています。

第1図以下、▲7九玉△5四銀▲8八玉(参考1図)と進むとどうなるでしょうか。

先手は8八に入城して囲いを完成させ、仕掛けの準備は万端です。

参考1図から後手は△6三銀とします。
△6三銀の局面は、先ほど解説した後手の理想図[△4二玉・△6三銀型]と全く同じ形になっています。
単に▲7九玉~▲8八玉とするのは、▲4五桂の仕掛けに備えられてしまい、先手の苦労が多そうです。

そこで出現するようになったのが、第1図で▲6九玉(第2図)とまっすぐ引く手です。

うっかり手がすべったのではないかと疑いたくなりますが、実は狙いがあります。

後手が素直に△5四銀で手待ちをすると、以下▲7九玉△6三銀▲8八玉(結果1図)と進みます。


将棋にはパスがないので、この後手の手番で銀を動かそうと思えば、△5四銀とするしかありません。
その局面で▲4五桂と仕掛ければ、先手は矢倉囲いに自玉が入城し、かつ後手陣が[△4二玉・△5四銀型]の構えという先手の理想が実現します。

参考までに▲4五桂と仕掛けた後の変化を1つ解説します。

後手は桂馬を捕獲するため、△2二銀と引きます。
以下、▲3五歩△同歩▲2四歩△4四歩▲7五歩△同歩▲2三歩成△同銀▲7四歩(変化1図)と進みます。


先手の▲2四歩に対しては△同歩と取るのが自然に思えますが、以下▲同飛△2三銀に▲5三桂成の強襲があります。
次いで△同金▲5四飛△同金▲6三角△5一飛▲6二銀△5二飛▲同角成△同玉▲6一飛(参考2図)で先手優勢。

駒損ですが玉形の差が大きいです。

2筋の歩は取れないので、後手は△4四歩から桂を取りにいきます。
対して先手も7筋から桂を取りにいきます。変化1図では後手の手段が多いですが、最も自然な受けの△2四歩を見ていきます。

変化1図以下、△2四歩▲7三歩成△同金▲6二角△6三金▲5三桂成△同金▲7三歩△7六歩▲同銀△7一歩(変化2図)と進行。

先手は後手に位を多く取られているので、代わりにポイントを稼ぐ必要があります。
▲6二角~▲7三歩がこの形での攻め方。
後手陣を開拓して体力勝ちを目指します。
このと金作りを防ぐのがなかなか難しいです。
後手は歩を突き捨ててから△7一歩と打つ、歩をバックさせる手筋で対応します。

変化2図以下、▲7二歩成△同歩▲7三歩△同歩▲同角成△3三玉▲6二馬△4二金▲7四歩(変化3図)と進みます。

変化2図では、後手は次に△5二玉で角を捕獲する手を狙っています。
よって先手は歩を成り捨ててから再度歩を打ち、馬を作ります。

後手は攻めが乏しいので、自玉の厚みを生かして入玉模様の将棋を目指します。
すぐに捕まえるのは大変なので、先手も▲7四歩からじわじわと上部を開拓していきます。
馬が強く、先手が勝ちやすい形勢といえるでしょう。


駆け足で解説しましたが、△5四銀型で▲4五桂と仕掛けた場合は、先手がやや指せるのではというのがプロ間での見解です。
上記の変化があるので、後手は玉の移動で待機してきます。
 

ポイント③▲6九玉に△5二玉は▲3五歩△同歩▲4五桂から仕掛ける

第2図の局面で、△5二玉(第3図)としたらどうなるでしょうか。


先手は▲7九玉としますが、後手も同じように△4一玉(第4図)と手数を調整してきます。


▲8八玉と入ってしまっては、△4二玉と戻られて△6三銀型をキープされてしまいます。
▲6九玉と引いた意味がないようですが、結論から言うと、▲7九玉型+△4一玉型の場合は仕掛けることができます。

第4図以下、▲3五歩△同歩▲4五桂△2二銀▲2四歩△同歩▲同飛△2三銀▲2九飛△2四歩▲5五角(第5図)と仕掛けていきます。

▲4五桂に△4四銀は、2筋の歩を交換して先手十分。

また、△2三銀に代えて△2三歩と受けるのは、以下▲2九飛△4四歩▲3三歩△同桂▲同桂成△同銀▲4五歩(参考3図)で先手の調子が良いです。

本譜は△2四歩に▲5五角が急所の手。

第5図以下、△2二角▲同角成△同金▲6五歩△同桂▲同銀△同歩▲5五桂△5四銀▲6三歩△5二金▲7二角(第6図)と進みます。


第5図で△4四角と受けるのが自然ですが、以下▲同角△同歩▲2二歩△同金▲5五角△3二玉▲4四角△5二銀▲5五銀(参考4図)で先手有利。

▲2二歩~再度の▲5五角が見えにくい好手順。後手は壁形を強いられるのが辛いです。

本譜の△2二角には角を交換して▲6五歩が攻めをつなげる好手。
△同歩には▲5三桂成~▲5五角の両取りが厳しい。よって△同桂ですが、▲同銀で桂を入手して今度は左辺から攻めます。
後手陣はバラバラなので受けにくいです。

第6図以下、△7一飛▲6二歩成△同金▲5四角成△同歩▲4三桂成△4二歩▲5三銀(結果2図)と進行します。


先手は自陣が安全なため、攻めがつながってしまえば有利になります。
△7一飛に代えて△8四飛は▲6一角成とじっと馬を作り、次の▲6二歩成を狙って先手良し。
よって角取りに飛車を逃げますが、▲6二歩成~▲5四角成が攻めをつなげる好手順。
打ったばかりの歩を成り捨てるのは見えにくい手順ですが、この場合は守備の要の5四銀を消すのが急所。
2枚の桂が躍動する展開になり、攻めが途切れる心配がなくなりました。
▲5三銀で食いついた結果図は先手優勢です。

ポイント④▲6九玉に△4一玉は▲2七飛で1手ずらす



▲6九玉に△5二玉で手数調整するのは、▲7九玉+△4一玉のタイミングで仕掛けていけました。
では、▲6九玉のタイミングで△4一玉(第7図)はどうでしょうか。


△4一玉に▲3五歩と仕掛けるのは、以下△同歩▲4五桂△2二銀▲2四歩△同歩▲同飛△2三銀▲2九飛△4二玉▲2四歩△3四銀▲2三角△2八歩▲同飛△2七歩(参考5図)が一例で先手失敗。

最後の△2七歩に▲同飛は△3六角で王手飛車です。▲7九玉型と比べて玉が不安定なことが祟っています。

そこで、第7図以下、▲7九玉△5二玉▲2七飛(第8図)△4二玉▲2八飛△5二玉▲2九飛△4二玉▲8八玉(結果3図)と、今度は飛車でずらすのが有力となります。


なお、第1図から▲7九玉△5四銀▲2七飛と、最初から飛車の動きで手数調整するのは△6五歩と仕掛けられてしまいます。
この辺の微妙な形の違いが大事になります。


角換わり腰掛け銀を体系的に学ぶならこの本がおすすめ

ここまでお読みいただきありがとうございました!
以上が角換わり腰掛け銀で▲6九玉と引く形の戦い方です。

詳しくは、2024年7月17日発売の『角換わり腰掛け銀の探究』(徳田拳士)に載っています。


本書ではほかにも、「△5二金→△6二金一手ずらし」や「徳田先生おススメ戦法」などの戦い方も解説しています。
ぜひ本書を読んで、角換わり腰掛け銀をマスターしてください! お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中
将棋情報局では、お得なキャンペーンや新着コンテンツの情報をお届けしています。