【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2024年7月編|将棋情報局

将棋情報局

【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2024年7月編

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中

皆さんこんにちは。「暗いと不平を言うよりも、あなたが進んで明かりをつけなさい」でおなじみの編集部島田です。

将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第23弾です。最近暑いですね。私事で恐縮ですが、このタイミングで家のクーラーが壊れました。シンプルに激痛です。
藤井先生から教わった暑さ対策「なるべく外に出ない」が使えなくなってしまって、人生に詰めろをかけられた状態です。なんとか受け切りたいと思います。

7月は名人就位式にお邪魔させていただきました。記事は一緒に行った田名後が書いてくれたので、私はいただけです(笑)
最近将棋に迷いが生じているようにも見えて心配していたのですが、トークショーでは元気なお姿が見られたので良かったです。
『将棋年鑑2024』で藤井猛九段も言っていましたが、八冠達成までには神がかり的な勝利も結構ありました。七冠になってこれからまた新しい戦いが始まるのかなと思っています。
さらに強くなるために模索している藤井先生の姿をこの連載で追いかけていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

と、いうわけで、7月の対局を振り返ってみましょう!
 

7月の対局まとめ
1日 棋聖戦五番勝負第3局 山崎隆之八段戦 勝ち
6、7日 王位戦七番勝負第1局 渡辺明九段戦 勝ち
17、18日 王位戦七番勝負第2局 渡辺明九段戦 負け
30、31日 王位戦七番勝負第3局 渡辺明九段戦 勝ち
7月は棋聖戦の最終局があり、王位戦がスタートしました。トータルでは3勝1敗で相変わらずよく勝たれていますが、内容的には拮抗している将棋が多く、いずれも見応え十分でした。

では、順に振り返っていきましょう。

勝で永世棋聖の称号獲得


1日 山崎隆之八段戦
ヒューリック杯第95期棋聖戦五番勝負(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)第3局

序章 永世称号獲得なるか
最年少での永世称号獲得が懸かる今シリーズ。藤井先生はここまで山崎隆之八段相手に2連勝と好調です。勝てばタイトル防衛、ならびに永世棋聖の称号獲得となる第3局は愛知県名古屋市の「亀岳林 万松寺」で行われました。藤井先生の地元ですね。

島田調べによると、織田信長のお父さんの織田信秀のお墓があるらしいです。亡くなったときに信長が抹香を投げつけたという有名なシーンがありますね。まぁ抹香って何なのかよく知らないんですけど。

あと、住職が将棋ファンで将棋の対局場になることを見据えて建て替え工事が行われたとのこと。住職、グッジョブ。最初にタイトル戦を誘致したのが第76期名人戦(佐藤天彦―羽生善治)で、このときに藤井聡太七段(当時)が見学に来てました。前夜祭でも「タイトル戦の熱気を間近で感じることができて勉強になった」と話をされてましたね。

https://www.asahi.com/special/timeline/76th-shogimeijinsen_5/
ここで当時の動画が公開されているんですが、駒を片付け終わって全員で一礼するとき、若干遅れてるのが初々しいです。


第1章 相掛かり
さて本局、先手番となった山崎先生は最も得意とする相掛かりに構えます。大事な一戦を頼れる相棒に託した、という感じでしょうか。相掛かりといっても山崎先生が指すとちょっと変わった形になります。早めに銀を前線に押し上げて攻撃的な布陣を取りました。
一方、藤井先生は2筋に銀を上がって守りの姿勢。ただ、守備力は高いもののカベ銀という悪い形でもあるので一長一短です。
藤井先生も「序盤で△2二銀と上がったんですけど、激しい展開になると良くない形なのでその辺りの判断が常に難しいなと思いながら指していました」と振り返っています。

中盤で山崎先生が7筋の歩を伸ばしたのがポイントの局面。これに対して堂々と飛車で取ったのが藤井先生の読みの入った手でした。一見角交換から馬を作られてしまうのでやりにくい手なのですが、その先までしっかり読むのが藤井流。
7筋の急所に歩を打つのがぴったりの一手で、飛車角両取りが決まって藤井先生がリードを奪いました。この辺り、山崎先生にも誤算があったようです。

第2章 らしい勝ち方
藤井先生が優勢ながら形勢は微差。藤井先生が銀取りに歩を打った手に対して山崎先生は金取りに桂を打ち、激しい攻め合いになりました。途中は藤井先生の玉が裸になり、かなり怖いように見えたのですが、ここからの藤井先生の玉さばきが素晴らしかったです。5筋にいた玉が4筋、3筋、そしてついには2筋にまで逃げ込んで全く捕まらなくなりました。玉の堅さより広さで勝負する藤井先生らしい手順でした。

藤井先生本人も「2四玉まで逃げ出す形になって自玉の安全が確保できる形になったのかなと思いました」と述べています。藤井先生がこう言うということは「自玉の安全が確保できた」ということですね。最後は山崎玉を詰ましてちょうど100手で藤井先生の勝利となりました。

第3章 将棋の楽しさは無限にあった
本局に勝った藤井先生はタイトル防衛、棋聖5連覇で見事「永世棋聖」の称号を獲得されました。おめでとうございます。

一方で山崎先生にとっては厳しい結果となってしまいました。しかし将棋ファンとしては毎局山崎先生らしい独特の指し回しがあり、見ていてとても楽しいシリーズでした。

山崎先生の局後のインタビュー「藤井棋聖と3局指して、もっと強くなっておいて挑戦したかったなと。そうですね。3局目指してて楽しかったんですけど、もっと強ければ将棋の楽しさは無限にあったのかなと感じました。改めてそういう気持ちにさせてもらったタイトル戦だったと思います」のコメントは泣けました。

「もっと強ければ将棋の楽しさは無限にあった」という言葉は、藤井先生の「強くなれば違う世界が見えるかもしれない」というのと近いものを感じます。

山崎先生がまたタイトル戦に戻ってきて、山崎ワールドを見せてくれることを期待しています。ありがとうございました。
 

日手の死闘、最終盤の逆転劇

完全版はこちらで読むことができます。

ゴールドメンバー入会はこちら
お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中
将棋情報局では、お得なキャンペーンや新着コンテンツの情報をお届けしています。