【試し読み版】私の戦い方vol.4 豊島将之九段「わかりそうでわからないものに惹かれる」|将棋情報局

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【試し読み版】私の戦い方vol.4 豊島将之九段「わかりそうでわからないものに惹かれる」

タイトル6期、棋戦優勝5回の実績を誇る、A級棋士・豊島将之九段。最前線で戦い続ける豊島九段は、将棋界を、そして自身を振り返って何を思うのでしょうか。
本記事では『私の戦い方 Vol.4 豊島将之九段「わかりそうでわからないものに惹かれる」』(将棋世界2024年6月号より)をゴールドメンバー限定で全文公開いたします。
トップ棋士でありながらも常に変化を模索する豊島九段の思考に迫ります。
※タイトル及び本文中の段位は将棋世界本誌掲載当時のもの。

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私の戦い方 vol.4 豊島将之九段「わかりそうでわからないものに惹かれる」

名人戦への挑戦を決めた豊島将之九段。藤井聡太八冠に対して、最も多く土をつけている棋士である豊島は、現在の将棋界をどのように見ているのか。自らにどのようなミッションを課して将棋に取り組んでいるのか。そしてまた、普及面でも存在感を増してきた豊島が考える、将棋の楽しさとは。



【インタビュー日時】2024年3月22日 【写真】荒井勝 【記】會場健大
 

現在の将棋界について

―この度はA級順位戦を勝ち抜いて名人挑戦を決められました。おめでとうございます。

「ありがとうございます」

―このコーナーで皆様に共通して聞いている質問がありまして、それを最初に伺いたいと思います。現在、将棋界において、藤井聡太竜王・名人が八冠を独占しておられるという状況になっていますが、どのようにご覧になっていますか。

「自分も結構、重要なところで負けてしまっているので、悔しさはあります。例えば最近であれば王座戦がそうでした。実力差があったとしても、それを結果に反映させていくというのはすごく難しいことだと思うので、非常に充実されていると思います。将棋自体がかなり難しいものなので、実力に差があっても、必ずしも強いほうが絶対に勝っていけるというものでもないですし、そういった中で全冠制覇されているというのは、すごく大変なことです」  

―今年に入ってからのタイトル戦について伺います。まず王将戦についてです。全局振り飛車となりましたが、このシリ―ズをどうご覧になりましたでしょうか。 

「徐々に藤井さんの側が有利になって、そのまま押しきるような将棋が多かったですね。ペ―スをつかんで、ちょっとずつよくしていくっていう展開だと、ほとんど逆転負けがない方なので。菅井さんは振り飛車特有の将棋で、逆転勝ちが多いタイプなんですけど、そういう菅井さんのパタ―ンが出なかったという感じなのかなと思いました。第1局は互角に近い局面で、藤井さんがどんどん時間を使っていた展開だったので、そこで何かもう1手2手、互角を保つような手を指せていたら、また違った展開になったのかもしれません」  

―棋王戦についてはいかがでしょうか。  

「伊藤さんがすごく研究が深い方ということで、序盤で藤井さんの側が変化をして角換わりを避けたりという将棋もあったりとか、ちょっといままでの藤井さんのタイトル戦とは違った形になったのかなと思います」  

―その角換わりを避けた将棋というのが第4局だと思うんですが、その直後の藤井棋王のインタビュ―では、まさに豊島先生の将棋も参考にしたとおっしゃっていました。  

「そうですね。私も何回か指しています。非公式戦のSUNTORYオ―ルスタ―で途中まで似たような展開になったんですけど、伊藤さんの研究がすごく深いのを感じました。持将棋の将棋も研究の深さを感じさせましたね」  

―その持将棋のことですが、角換わりでは先手番が有利なのではないかという観測もある中で、後手番から持将棋に誘導したことは大変話題になりました。

「伊藤さんは、別の形でも持将棋を目指すような展開を指されていますね。持将棋のル―ルが、コンピュ―タ―対局で採用される27点法というル―ルと、人間の棋士の対局で採用される24点法とで変わってくるということはあります。こうなったら持将棋になります、ということを結論として確立するのは相当大変だと思いますが、それでも画期的な将棋だったのかなと思います」    

―それに関連して、この『私の戦い方』の中で、『将棋の結論をどう思いますか』と中村太地八段に伺ったことがあり、『千日手だと思う』とおっしゃってました。先生はどのようにお考えでしょうか。   

「いまのところは先手が押していて、後手がどう戦うかというところはあります。千日手に誘導するのも難しいイメ―ジです。角換わりの先手番の定跡では、結論とまではいかないですけど、それに近いものが出つつあるという風に見られているところもあります。しかしこれまでも、結論めいたものが出そうになっても、またひっくり返る、ということを何回も繰り返しているので、もうちょっと可能性があるんじゃないかなという感じもしています。確かにソフト同士で指すと先手が勝つことが多いですが、角換わりの定跡でも、際どい形になることが多くて、詰む詰まないが関わると、ソフトも判断できないということもたまにあります」  

―一般棋戦のことについてもお伺いしたいと思います。ト―ナメント形式の一般棋戦では、銀河戦で丸山九段、今年に入って朝日杯で永瀬九段、NHK杯で佐々木八段がそれぞれ決勝で藤井八冠を破って優勝しています。  

「どの対局も、藤井さんが後手の将棋でした。丸山九段戦はわからないですが、永瀬さんと佐々木さんとの将棋は、先手側がかなり長い定跡を用意していました。それで時間にも差がついたりするなど、研究のところで追い込んで勝たれたというような将棋だと思います。やっぱりト―ナメント戦は早指しで持ち時間が短いので、対応するのが大変というところがあるのかなという風に思いました」  
 

A級順位戦を振り返って

―ここからは豊島先生ご自身について、じっくり伺っていきたいと思います。まずA級順位戦の振り返りからお願いしたいと思います。印象に残った対局はありましたでしょうか?  

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